47 / 75
第二章 七不思議の中のマンドラゴラ
047.えぇ~?
しおりを挟む
「ドキドキの大冒険でしたね」
「そんな気楽なものじゃなかっただろう。ひどい目にあったぞ」
「えぇ~?ケイが冒険したいって言ったんじゃないですか?」
「言ったけどさあ」
あれは冒険の楽しさというより、お化け屋敷の怖さだった気がする。
なんにせよ、無事に帰ってくることができてよかった。
「でも、惜しかったですね。七不思議のうち、五個までは正体がわかったんですから。また、行きましょうね」
「嫌だ」
「えぇ~?残り二個じゃないですかぁ」
『えぇ』と言いたいのは、こっちだ。
殺人鬼に襲われたというのに、どういう神経をしているんだ。
しかし、俺は行きたくなければ行かなければいいのだが、メイにとっては学校だ。
明日になれば行かないといけない。
殺人鬼がいるようなところにメイを行かせるのは心配だな。
「なあ、メイ。明日、学校休んだらどうだ?」
「どうしたんですか?いつもは勉強をしっかりしろとか言うのに」
「だって、今日のやつがいるかも知れないんだぞ。危ないだろ」
さすがの俺も、殺人鬼がいることが分かっていて、メイをそこに行かせたりはしない。
しかし、そんな心配をよそに、メイは気楽な表情だ。
「大丈夫ですよ。七不思議は夜にしか起きませんから」
そんなことを自信満々に言ってくる。
けど、全然大丈夫には思えない。
「七不思議が夜にしか起きないって保障はないだろう」
「そういうものですから」
この世界には、そういう法則みたいなものでもあるのだろうか。
学校をしている最中、この世界が元いた世界ではないかという疑問を持ったのだが、やはりここは異世界で、そういう謎法則があるということなのか。
そんなことを思うけど、俺には判断できない。
メイがへっぽこじゃなかったら信じたかも知れないけど、普段の行動を見ていると、とても信じることはできない。
そうそう、へっぽこと言えば、結局、今回もまともな魔術は見れなかったな。
雷の魔術とか言ってメイが使ったのは、スタンガンだった。
結果として、相手を倒すことができたけど、スタンガンは魔術ではないだろう。
でも、スタンガンを持っているなら、自分の安全の確保くらいならできるのかも知れない。
そういう意味で、ひとまずメイを信じてみるか。
「なんにせよ、今日は疲れたな。風呂に入ってとっとと寝るか」
「そうですね。そういえば、ケイ。傷は大丈夫ですか?お風呂に入ったら、傷口から出血・・・樹液が出たりしませんか?」
「あー・・・まあ、大丈夫だろ。根っこが傷ついたときでも、植物には水をやった方がいい気がするし」
メイが心配しているのは、俺が殺人鬼の爪によって斬られた傷のことだ。
かなり深い。
だけど、俺の身体は植物の根っこだ。
だから、そのうち伸びてきて元通りになると思う。
でも、元通りにならないものもある。
「悪かったな。俺のために用意してくれたぬいぐるみが破れて」
風呂に入るためにぬいぐるみを脱ぐと、改めて無残に破れていることが分かる。
ぬいぐるみはリアルな作りで、上等なものであることが一目で分かるものだったので、申し訳ない気持ちになる。
「後で繕っておきますから大丈夫ですよ。それよりケイが無事でよかったです。そうだ!今回みたいないことがあるといけないので、もっと丈夫なぬいぐるみを作りましょうか?カメとかハリネズミとか」
メイはぬいぐるみが破れたことは気にしていないようだ。
それどころか新しいものを作ってくれようとする。
ありがたいけど、カメの甲羅やハリネズミの針では、剣とか爪とかは防げないと思う。
それに作るのは前のぬいぐるみより大変そうだ。
「まあ、それは明日以降にゆっくり考えよう」
だから、そう提案する。
メイも今から作るつもりは無いらしく、異論は唱えなかった。
「そうですね」
そう返事をすると、メイはすぽんすぽんと服を脱ぎ、一瞬で真っ裸になる。
風呂に入るのだから服を脱ぐのはいいのだが、もう少し慎みは持てないのだろうか。
前に指導してやってから身体は丁寧に洗うようになったのだが、メイには年頃の娘としての自覚が足りないようだ。
「じゃあ、行きましょう」
メイはむんずと俺を掴むと一緒に風呂場に入る。
一緒に暮らすようになってから、風呂には毎日一緒に入っている。
俺は風呂桶に汲まれたお湯に浸かりながら、身体を洗うメイを観察する。
メイは目を離すと身体に適当に洗うので、毎日のチェックは欠かせないのだ。
「うむ」
ちゃんと、すみずみまで洗っているようだ。
特におっぱいの谷間は丁寧に洗って欲しい。
座り心地にも影響するからな。
あせもでもできたら、絹のような滑らかな肌触りが損なわれてしまう。
「そういえば・・・」
俺が満足しながらメイが身体を洗う様子を眺めていると、メイが話しかけてくる。
「殺人鬼に襲われたとき何か投げていましたけど、アレなんだったんですか?
「ああ、アレか」
逃げるために俺が投げたものを言っているのだろう。
あれで相手が咳き込んだから、逃げる隙ができたと言える。
ぬいぐるみを着込むときに、隙間を埋めるために持っていたものだけど、あれは助かった。
「アレはな・・・」
バキッ!
俺が答えようとしたとき、突然何かを壊すような音が響き渡った。
「そんな気楽なものじゃなかっただろう。ひどい目にあったぞ」
「えぇ~?ケイが冒険したいって言ったんじゃないですか?」
「言ったけどさあ」
あれは冒険の楽しさというより、お化け屋敷の怖さだった気がする。
なんにせよ、無事に帰ってくることができてよかった。
「でも、惜しかったですね。七不思議のうち、五個までは正体がわかったんですから。また、行きましょうね」
「嫌だ」
「えぇ~?残り二個じゃないですかぁ」
『えぇ』と言いたいのは、こっちだ。
殺人鬼に襲われたというのに、どういう神経をしているんだ。
しかし、俺は行きたくなければ行かなければいいのだが、メイにとっては学校だ。
明日になれば行かないといけない。
殺人鬼がいるようなところにメイを行かせるのは心配だな。
「なあ、メイ。明日、学校休んだらどうだ?」
「どうしたんですか?いつもは勉強をしっかりしろとか言うのに」
「だって、今日のやつがいるかも知れないんだぞ。危ないだろ」
さすがの俺も、殺人鬼がいることが分かっていて、メイをそこに行かせたりはしない。
しかし、そんな心配をよそに、メイは気楽な表情だ。
「大丈夫ですよ。七不思議は夜にしか起きませんから」
そんなことを自信満々に言ってくる。
けど、全然大丈夫には思えない。
「七不思議が夜にしか起きないって保障はないだろう」
「そういうものですから」
この世界には、そういう法則みたいなものでもあるのだろうか。
学校をしている最中、この世界が元いた世界ではないかという疑問を持ったのだが、やはりここは異世界で、そういう謎法則があるということなのか。
そんなことを思うけど、俺には判断できない。
メイがへっぽこじゃなかったら信じたかも知れないけど、普段の行動を見ていると、とても信じることはできない。
そうそう、へっぽこと言えば、結局、今回もまともな魔術は見れなかったな。
雷の魔術とか言ってメイが使ったのは、スタンガンだった。
結果として、相手を倒すことができたけど、スタンガンは魔術ではないだろう。
でも、スタンガンを持っているなら、自分の安全の確保くらいならできるのかも知れない。
そういう意味で、ひとまずメイを信じてみるか。
「なんにせよ、今日は疲れたな。風呂に入ってとっとと寝るか」
「そうですね。そういえば、ケイ。傷は大丈夫ですか?お風呂に入ったら、傷口から出血・・・樹液が出たりしませんか?」
「あー・・・まあ、大丈夫だろ。根っこが傷ついたときでも、植物には水をやった方がいい気がするし」
メイが心配しているのは、俺が殺人鬼の爪によって斬られた傷のことだ。
かなり深い。
だけど、俺の身体は植物の根っこだ。
だから、そのうち伸びてきて元通りになると思う。
でも、元通りにならないものもある。
「悪かったな。俺のために用意してくれたぬいぐるみが破れて」
風呂に入るためにぬいぐるみを脱ぐと、改めて無残に破れていることが分かる。
ぬいぐるみはリアルな作りで、上等なものであることが一目で分かるものだったので、申し訳ない気持ちになる。
「後で繕っておきますから大丈夫ですよ。それよりケイが無事でよかったです。そうだ!今回みたいないことがあるといけないので、もっと丈夫なぬいぐるみを作りましょうか?カメとかハリネズミとか」
メイはぬいぐるみが破れたことは気にしていないようだ。
それどころか新しいものを作ってくれようとする。
ありがたいけど、カメの甲羅やハリネズミの針では、剣とか爪とかは防げないと思う。
それに作るのは前のぬいぐるみより大変そうだ。
「まあ、それは明日以降にゆっくり考えよう」
だから、そう提案する。
メイも今から作るつもりは無いらしく、異論は唱えなかった。
「そうですね」
そう返事をすると、メイはすぽんすぽんと服を脱ぎ、一瞬で真っ裸になる。
風呂に入るのだから服を脱ぐのはいいのだが、もう少し慎みは持てないのだろうか。
前に指導してやってから身体は丁寧に洗うようになったのだが、メイには年頃の娘としての自覚が足りないようだ。
「じゃあ、行きましょう」
メイはむんずと俺を掴むと一緒に風呂場に入る。
一緒に暮らすようになってから、風呂には毎日一緒に入っている。
俺は風呂桶に汲まれたお湯に浸かりながら、身体を洗うメイを観察する。
メイは目を離すと身体に適当に洗うので、毎日のチェックは欠かせないのだ。
「うむ」
ちゃんと、すみずみまで洗っているようだ。
特におっぱいの谷間は丁寧に洗って欲しい。
座り心地にも影響するからな。
あせもでもできたら、絹のような滑らかな肌触りが損なわれてしまう。
「そういえば・・・」
俺が満足しながらメイが身体を洗う様子を眺めていると、メイが話しかけてくる。
「殺人鬼に襲われたとき何か投げていましたけど、アレなんだったんですか?
「ああ、アレか」
逃げるために俺が投げたものを言っているのだろう。
あれで相手が咳き込んだから、逃げる隙ができたと言える。
ぬいぐるみを着込むときに、隙間を埋めるために持っていたものだけど、あれは助かった。
「アレはな・・・」
バキッ!
俺が答えようとしたとき、突然何かを壊すような音が響き渡った。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~
degirock/でじろっく
ファンタジー
「【なろうぜ系】って分かる?」
「分かりません」
「ラノベ読んだ事無い?」
「ありません」
「ラノベって分かる?」
「ライトノベルの略です」
「漫画は?」
「読みません」
「ゲーム」
「しません」
「テレビ」
「見ません」
「ざけんなおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
サブカル0知識の私が死んだ先で背負わされたのは、
異世界情報を詰め込んだ【異世界辞典】の編纂作業でした。
========================
利己的な人間に歪まされた自分の居場所を守る為に、私は私の正しさを貫く事で歪みを利己的な人間ごと排斥しようとした。
結果、利己的な人間により私の人生は幕を下ろした。
…違う。本当に利己的であったのは、紛まぎれも無く、私だ。間違えてしまったのだ。私は。その事実だけは間違えてはならない。
「……私は確かに、正しさという物を間違えました」
「そうだよなァ!? 綺麗事はやめようよ、ねェ! キミは正義の味方でも何でもないでしょォ!?」
我が意を得たり、と言わんばかりに醜くく歪んだ笑顔を見せる創造主。
そんな主に作られた、弄れるかわいそうな命。
違う…、違う!! その命達を憐れむ権利など私には無い!
「───だから?」
「……へっ?」
「だから、それがどうかしたんですか。私は今度こそ私の正しさを貫き通します。あなたが生み出したこの星の命へ、そしてあなたへ」
彼等のその手にそれぞれ強制的に渡されたとある本。それは目の前に浮かぶ地球によく似た星そのものであり、これから歩む人生でもある。二人の未熟なカミサマに与えられた使命、それはその本を完成させる事。
誰の思惑なのか、何故選ばれたのか、それすらも分からず。
一人は自らの正しさを証明する為に。
一人は自らの人生を否定し自由に生きる為に。
───これは、意図せず『カミサマ』の役目を負わされてしまった不完全な者達が、自ら傷付きながらも気付き立ち上がり、繰り返しては進んでいく天地創造の軌跡である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。
かみゅG
ファンタジー
ゴブリン。
オーガ。
オーク。
エルフ。
ドワーフ。
ファンタジーの住人達。
もし、彼らを創り出すことができるとしたら、どの種族がよいだろうか。
強さを求める者。
美しさを求める者。
様々だろう。
しかし、世界の役に立つという観点で考えた場合、答えは明確だ。
オークである。
「だから、創ってみた」
「なにしてくれちゃってんの、このアホーーーッ!!!」
教授と助手による、特に異世界に転移も転生もしない冒険が、今!始まる!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる