森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

文字の大きさ
上 下
45 / 75
第二章 七不思議の中のマンドラゴラ

045.えへんっ

しおりを挟む
「えへんっ」

 メイがドヤ顔をしている。
 どうやら褒めて欲しいようだ。
 確かに剣を持った相手を倒したことは認めよう。
 けど、なんだか納得いかない。

「スタンガンじゃん!」
「雷の魔術ですよぅ」

 俺の心からの叫びに、メイは何が不満なんだという顔をする。
 しかし、不満なのは、こっちだ。

「やっぱりここは、異世界じゃなくて、元いた世界だろう」

 メイが雷の魔術と称して繰り出したのは、電撃が迸る魔術じゃなくて、どうみてもスタンガンだ。
 科学技術で作られた代物だ。
 ちょっぴり期待してしまった気持ちを返して欲しい。
 とはいえ、剣を持った危険な相手を倒したことは確かだ。
 そこだけは素直に褒めてもいい。

「まあ、手段はともかく、よくやった」
「えへへ」

 俺が褒めてやると、メイは照れてはにかむ。
 『手段はともかく』と言ったのだが、そこは気にしていないようだ。

「今のうちに逃げたいけど、こいつら放っておいていいのかな?」

 拳で戦っていた人影は、剣で戦っていた相手が倒した。
 剣で戦っていた人影は、メイが倒した。
 ここには二人の不審人物が倒れていることになる。
 自分達の身の安全を第一に考えるなら放っておくのが一番だが、どちらかが先に目覚めて、もう片方を殺しでもしたら寝覚めが悪い。
 どうしたものかと、メイが倒した相手に目を向ける。
 そこで、あることに気付いた。

「・・・なあ、メイ」
「なんですか?」
「メイが倒した相手って・・・」
「あれ?」

 俺の言葉にメイもそちらを見る。
 そして、俺と同じことに気付いたようだ。

「校庭にあった像ですね」

 剣を持っているが、間違いない。
 そこに倒れていたのは、校庭に置かれていた像だった。
 人間が被り物をしているわけじゃなさそうだ。

「ロボット?」

 七不思議には『五、校庭の歩き出す像』という内容があった。
 図らずもその正体が判明した形だ。
 今までの、しょうもない正体じゃない。
 剣を持って襲い掛かってくるような危険な正体だ。
 しかし、これはどういった原理で動いているのだろう。
 俺の知識からすると、可能性があるのはロボットだ。
 だけど、繋ぎ目が見当たらない。
 表面を人工的な皮膚で覆っているなら繋ぎ目が見えなくてもおかしくはないが、そういうわけでもなさそうだ。
 表面は石のような材質でできている。
 先ほどまで、それが人間のように滑らかに動いていた。

「七不思議がまた一つ解決しましたね」

 メイが呑気な感想を言っているが、これはそんな呑気な物じゃないと思う。
 これがロボットかどうかは判断しきれないが、問題はそこじゃない。
 仮にこれがロボットだとして、その製作費が莫大な金額になることは、素人でも予想できる。
 そんなものが、こんなボロい学校に置かれていること自体が不自然だ。
 七不思議の探検だと軽く考えていたけど、もしかしてヤバいことに首を突っ込んでしまったのだろうか。

「解決と言っていいのか、これは?」

 とりあえず、像は動きを止めている。
 これがロボットだとしたら、使われているであろう電子部品にスタンガンの電撃は有効だろう。
 壊れたかどうかまでは分からないけど、しばらくは動かないと思う。
 だとすれば、解決したかどうかはともかく、身の安全は確保できた。
 残る問題は、争っていたもう一人の方だ。

「あっちの人はどうなってますかね」

 メイも同じことを考えたのだろう。
 像と戦っていた人影の方に歩いていく。
 こちらも倒れて動きを止めている。
 どうやら、像ではないようだ。
 人間らしい肌をしている。
 近づくにつれ、姿がはっきりと見えてくる。

「しかし、こいつもなんなんだろうな」

 動いて襲い掛かってくる像よりは現実的だ。
 だけど、現実的だからといって安全とは限らない。
 そもそも像に襲われるなんて、普通の日常生活ではあり得ない。
 何か理由でもあるのだろうか。
 像が無差別に人間を襲う存在という可能性もある。
 けど、そうでないなら、何かしらの理由があるはずだ。
 それにこいつは、負けたとはいえ、剣を持った像と戦っていた。
 それなりの戦闘力を持っているということだ。
 そこで、ふと気付く。
 倒れてはいるが、こいつをそのままにしておくのは危険じゃないだろうか。
 ロープか何かで縛っておいた方がいいような気がする。
 ロープは、メイがローブの下に持っていたはずだ。
 それで縛ればいいだろう。

「なあ、メイ・・・っ!メイ、下がれ!」

 俺がそれを提案しようとした瞬間、倒れていた人影が勢いよく起き上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく
ファンタジー
「【なろうぜ系】って分かる?」 「分かりません」 「ラノベ読んだ事無い?」 「ありません」 「ラノベって分かる?」 「ライトノベルの略です」 「漫画は?」 「読みません」 「ゲーム」 「しません」 「テレビ」 「見ません」 「ざけんなおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」  サブカル0知識の私が死んだ先で背負わされたのは、  異世界情報を詰め込んだ【異世界辞典】の編纂作業でした。 ========================  利己的な人間に歪まされた自分の居場所を守る為に、私は私の正しさを貫く事で歪みを利己的な人間ごと排斥しようとした。  結果、利己的な人間により私の人生は幕を下ろした。  …違う。本当に利己的であったのは、紛まぎれも無く、私だ。間違えてしまったのだ。私は。その事実だけは間違えてはならない。 「……私は確かに、正しさという物を間違えました」 「そうだよなァ!? 綺麗事はやめようよ、ねェ! キミは正義の味方でも何でもないでしょォ!?」  我が意を得たり、と言わんばかりに醜くく歪んだ笑顔を見せる創造主。  そんな主に作られた、弄れるかわいそうな命。  違う…、違う!! その命達を憐れむ権利など私には無い! 「───だから?」 「……へっ?」 「だから、それがどうかしたんですか。私は今度こそ私の正しさを貫き通します。あなたが生み出したこの星の命へ、そしてあなたへ」      彼等のその手にそれぞれ強制的に渡されたとある本。それは目の前に浮かぶ地球によく似た星そのものであり、これから歩む人生でもある。二人の未熟なカミサマに与えられた使命、それはその本を完成させる事。  誰の思惑なのか、何故選ばれたのか、それすらも分からず。  一人は自らの正しさを証明する為に。  一人は自らの人生を否定し自由に生きる為に。  ───これは、意図せず『カミサマ』の役目を負わされてしまった不完全な者達が、自ら傷付きながらも気付き立ち上がり、繰り返しては進んでいく天地創造の軌跡である。

遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。

かみゅG
ファンタジー
 ゴブリン。  オーガ。  オーク。  エルフ。  ドワーフ。  ファンタジーの住人達。  もし、彼らを創り出すことができるとしたら、どの種族がよいだろうか。  強さを求める者。  美しさを求める者。  様々だろう。  しかし、世界の役に立つという観点で考えた場合、答えは明確だ。  オークである。 「だから、創ってみた」 「なにしてくれちゃってんの、このアホーーーッ!!!」  教授と助手による、特に異世界に転移も転生もしない冒険が、今!始まる!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

処理中です...