森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

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第一章 森の中のマンドラゴラ

029.大好きなんです

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 メイのおでこに乗せたタオルに手を置いて考える。

「・・・もう、そろそろかな」

 この身体だと人間の体温がよく分からない。
 自分の体温と比較して高いか低いかが分からないからだ。
 でも、タオルの渇き具合から、そろそろ交換する頃だということは分かる。

「よいしょ」

 メイのおでこからタオルを取り、よじよじとベッドから降りる。
 てくてくと家の外まで出ると、水瓶から汲んだ水にタオルを浸す。
 じゃぶじゃぶとタオルに冷たい水を含ませてから、ぎゅっと絞る。
 てくてくと家の中に入り、よじよじとベッドを登る。

「よいしょ」

 そして再び、メイのおでこにタオルを乗せる。
 メイが寝てから、これを繰り返している。

「なかなか熱が下がらないな」

 朝にメイが寝てから、今は昼頃だ。
 まだ数時間しか経っていないので熱が下がらないのは当たり前なのだが、頬が火照り呼吸が荒いメイを見ていると早く下がって欲しいと思ってしまう。

「そろそろ昼だよな。おかゆでも作れたらいいんだけど・・・」

 この小さい身体で料理は難しい。
 汗をかいているだろうから水分も取った方がいいと思うのだが、同様の理由で水の入ったコップを持ってくるのは無理そうだ。

「果物を剥くくらいならできるかな」

 そう思いつき、台所へ歩いていく。
 人の家の台所を勝手にいじるのはよくないと思うが、住人が寝込んでいるのだから仕方ない。

「お、リンゴがあるな」

 病気のときに食べる定番と言えば、ウサギの形に切ったリンゴだ。
 せっかくなので、その形に切ってやろうと思い、果物ナイフを探す。
 果物ナイフはすぐに見つかったのだが、

「おっと」

 持てなくはないが、身体がふらつく。
 俺が持つと剣を持っているような感じになるくらいのサイズ感だ。
 ぶんぶん振り回してめった斬りにするならともかく、丁寧に切り分けたりは無理そうだ。

「これじゃ、切るのは無理か。仕方ない。丸かじりしてもらおう」

 俺からすればかなりの重量だが、リンゴ1つくらいなら持てなくはない。
 リンゴを抱えながら、メイの眠るベッドまで戻る。
 戻るとメイが身体を起こし、きょろきょろと周囲を見回していた。

「起きたか」
「あ、ケイ。そこにいたんですね」

 俺が姿を見せると、メイはほっとしたような表情になる。
 どうやら、俺を探していたらしい。

「体調はどうだ?」
「頭がほわほわします」

 ひと眠りして落ち着いたのだろう。
 帰ってきた直後はハイになっていたのか言うことを聞かないほど元気だったのだが、今は怠そうだ。
 瞳は潤んで頬は染まり、なんだか色っぽい。
 体調が悪いことを知らなければ、惚れられていると勘違いしそうだ。

「何か食べられるか?とりあえず、リンゴを持ってきたけど」
「あんまり食欲ないです」
「ちょっとでも食べた方がいいぞ」

 ぽんっと、リンゴを投げ渡す。

「ありがとうございます」
「ホントは切ってやろうと思ったんだが、果物ナイフが重くてな」
「それもですけど、タオルを乗せてくれたの、ケイですよね」

 メイはリンゴを受け取ると、シャクッと皮ごと一口齧る。

「熱が出ているみたいだったからな」
「大変だったでしょう」
「まあな」

 大変じゃなかったとは言わない。
 けど、俺が勝手にやったことだし、誰かに文句を言うようなことじゃない。

「もう熱は下がったみたいですから大丈夫ですよ」

 メイはそう言ってくるけど、まだ頬は赤い。
 俺が大変だからという理由で遠慮をしているのだろう。

「嘘つけ。病人は余計なことを気にするな」
「ケイ、おばあちゃんみたいです」
「年寄りみたいだと言われて、喜んでいいのか微妙なところだな」

 まあ、感謝してくれているようだから、素直に喜んでおこう。
 お礼が言われたくてやったことではないけど、感謝してくれるなら、それなりに嬉しい。

「おばあちゃんは、口うるさいけど優しいから、大好きなんです」
「メイは、おばあちゃん子だな」
「・・・はい」

 ちょっとずつ齧って、時間をかけてリンゴを食べたメイは、うとうとし始める。

「食べたら、また寝ろ。寝ないと熱が下がらないぞ」
「そうします。お休みなさい」

 今度は朝のように我儘を言うことはなかった。
 メイは素直に横になると、すぐに寝息を立て始めた。
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