23 / 75
第一章 森の中のマンドラゴラ
023.お嫁にいけない
しおりを挟む
「くすんっ。もう、お嫁にいけないですよぅ」
「お嫁にいけるように磨いてやったんだよ」
文句を言われるのは心外だ。
そもそもメイが自分の身体をちゃんと洗わないのが悪い。
「あんなところまで触るなんて、セクハラですよぅ」
「心配するな。おまえのすっぽんぽんを見ても興奮しない」
「むぅ」
メイはぷりぷり怒っているが、彼女の裸に興奮しないのは本当のことだ。
この身体は下半身にアレが付いていないせいか、女の子の身体に興奮しないようなのだ。
そんなわけで、俺はあくまでも美術品を磨くような気持ちで、メイを洗ったに過ぎない。
「俺に表れたくなかったら、自分でちゃんと洗うんだな」
「そうしますぅ」
拗ねたようなメイの言葉を聞きながら、俺は温泉を満喫した。
*****
風呂が終わったら、次は食事だ。
食事の支度をしている間に機嫌は直ったらしく、メイが嬉しそうにテーブルの上に料理を並べる。
「じゃんっ!夕食は海藻サラダにしてみました!」
言葉通り、皿の上には海藻が盛られていた。
メイの皿にはドレッシングがかかっているが、俺の皿にはかかっていない。
意地悪というわけではなく、俺の身体のことを考えてくれたのだろう。
植物に塩分はよくないらしい。
「野菜を育てるときに海藻を撒くことがあるのを思い出したんですよ。これなら、ケイも食べられるんじゃないですか?」
俺は海藻を一切れ口に入れて、もぐもぐする。
「うん。大丈夫そうだ」
「よかった。食物繊維も摂らないと身体に悪いですからね」
植物が食物繊維を摂って意味があるのだろうか。
そう思わなくも無いけど、細かいことは気にしないことにする。
「昆布で出汁を取ったお吸い物もありますよ」
この身体になって食べられるものに制限がある中で、メニューのバリエーションが増えるのは喜ばしいことなのは間違いない。
メイの心遣いに感謝しながら、夕食を食べた。
*****
食後。
本当は勉強の続きをさせようと思っていたのだけど、メイがうとうととし始めたので今日は止めておくことにする。
なんだか娘に甘い父親のようなことを考えてしまっているけど、まあいいだろう。
課題は終わらせたし、勉強は一夜漬けでやるようなものではないから、急ぐ必要はない。
そんなことを考えていて、ふと思う。
そういえば、課題があるということは、それを提出する先があるということだ。
そこへちょうどメイがその話題を振ってくる。
「そうそう、ケイ。私、明日は学校に行きますから」
「そうか」
やっぱり、メイは学生で学校に通っているのか。
見た目の年齢からすれば、おかしくはない。
異世界の学校が俺のいた世界の学校と同じかは分からないけど、メイは中学生か高校生くらいだろう。
「ケイはお留守番していて下さいね」
「わかった」
こんな小さな身体では自力で遠くまで行くのは無理だし、言われるまでもなく、この家で大人しくしているしかない。
しかし、一人で時間を潰すとなると、暇になることは容易に想像できる。
それに、せっかくの異世界でぼーっと過ごすのは時間がもったいない。
なにか、時間を有効活用できるものが欲しいな。
「そうだ、メイ。メイがいない間、あの本を読んでもいいか?」
「本?」
「マンドラゴラのことが載っていた本だよ」
「魔術書ですね。いいですよ」
やはり、あれは魔術書だったのか。
ちょっと興味があったのだ。
メイがへっぽこなせいで、いまだに魔術を見ることができていないけど、異世界に来たのだから、できれば魔術を使ってみたい。
魔術は素材を使って行うらしいから、もしかしたら俺にも使える魔術があるかも知れない。
「でも、あの本は大切なものですから、大事に扱って下さいね」
「了解」
メイの許可も得たし、明日はあの本で時間を潰すことにしよう。
そんなふうに明日の予定を立てたところで、メイが大きな欠伸をする。
「眠そうだな。学校に遅刻するといけないし、もう寝た方がいいんじゃないか?」
「ふぁ・・・そうします」
メイは寝室に向かおうとして、ぴたっと足を止める。
そして、くるりと俺の方を振り返る。
「そういえば、ケイのお布団を用意しないといけないですね。腐葉土と牛糞堆肥とどちらがいいですか?」
おそらく俺が植物だから、そういう発想をしたのだろう。
植物を植えるのならば適切なのかも知れないけど、人間としての意識がある俺はあんまり嬉しくない。
「風呂で綺麗になったのに、腐った葉っぱや牛のう〇こに塗れるのはちょっと」
「でも、植物なんですから、土に入った方が寝心地がいいんじゃないですか?」
「そもそも、あんまり眠くないんだよ」
「そうなんですかぁ」
そんな会話をしている間にも、メイはどんどん眠そうな表情になっていく。
というか、ふらふらして今にも倒れそうだ。
「俺は適当に寝るから、早く寝たらどうだ。明日、学校なんだろ」
「でも・・・」
「なら今日のところはメイの布団で一緒に寝させてもらうから」
「そうですかぁ。じゃあ、すみませんけど、先に寝させてもらますねぇ」
それだけを言うと、メイはそのままベッドに倒れ込み、寝息を立て始める。
「驚くほど寝つきがいいな」
メイの寝顔を眺めながら、俺もベッドに潜り込んだ。
「お嫁にいけるように磨いてやったんだよ」
文句を言われるのは心外だ。
そもそもメイが自分の身体をちゃんと洗わないのが悪い。
「あんなところまで触るなんて、セクハラですよぅ」
「心配するな。おまえのすっぽんぽんを見ても興奮しない」
「むぅ」
メイはぷりぷり怒っているが、彼女の裸に興奮しないのは本当のことだ。
この身体は下半身にアレが付いていないせいか、女の子の身体に興奮しないようなのだ。
そんなわけで、俺はあくまでも美術品を磨くような気持ちで、メイを洗ったに過ぎない。
「俺に表れたくなかったら、自分でちゃんと洗うんだな」
「そうしますぅ」
拗ねたようなメイの言葉を聞きながら、俺は温泉を満喫した。
*****
風呂が終わったら、次は食事だ。
食事の支度をしている間に機嫌は直ったらしく、メイが嬉しそうにテーブルの上に料理を並べる。
「じゃんっ!夕食は海藻サラダにしてみました!」
言葉通り、皿の上には海藻が盛られていた。
メイの皿にはドレッシングがかかっているが、俺の皿にはかかっていない。
意地悪というわけではなく、俺の身体のことを考えてくれたのだろう。
植物に塩分はよくないらしい。
「野菜を育てるときに海藻を撒くことがあるのを思い出したんですよ。これなら、ケイも食べられるんじゃないですか?」
俺は海藻を一切れ口に入れて、もぐもぐする。
「うん。大丈夫そうだ」
「よかった。食物繊維も摂らないと身体に悪いですからね」
植物が食物繊維を摂って意味があるのだろうか。
そう思わなくも無いけど、細かいことは気にしないことにする。
「昆布で出汁を取ったお吸い物もありますよ」
この身体になって食べられるものに制限がある中で、メニューのバリエーションが増えるのは喜ばしいことなのは間違いない。
メイの心遣いに感謝しながら、夕食を食べた。
*****
食後。
本当は勉強の続きをさせようと思っていたのだけど、メイがうとうととし始めたので今日は止めておくことにする。
なんだか娘に甘い父親のようなことを考えてしまっているけど、まあいいだろう。
課題は終わらせたし、勉強は一夜漬けでやるようなものではないから、急ぐ必要はない。
そんなことを考えていて、ふと思う。
そういえば、課題があるということは、それを提出する先があるということだ。
そこへちょうどメイがその話題を振ってくる。
「そうそう、ケイ。私、明日は学校に行きますから」
「そうか」
やっぱり、メイは学生で学校に通っているのか。
見た目の年齢からすれば、おかしくはない。
異世界の学校が俺のいた世界の学校と同じかは分からないけど、メイは中学生か高校生くらいだろう。
「ケイはお留守番していて下さいね」
「わかった」
こんな小さな身体では自力で遠くまで行くのは無理だし、言われるまでもなく、この家で大人しくしているしかない。
しかし、一人で時間を潰すとなると、暇になることは容易に想像できる。
それに、せっかくの異世界でぼーっと過ごすのは時間がもったいない。
なにか、時間を有効活用できるものが欲しいな。
「そうだ、メイ。メイがいない間、あの本を読んでもいいか?」
「本?」
「マンドラゴラのことが載っていた本だよ」
「魔術書ですね。いいですよ」
やはり、あれは魔術書だったのか。
ちょっと興味があったのだ。
メイがへっぽこなせいで、いまだに魔術を見ることができていないけど、異世界に来たのだから、できれば魔術を使ってみたい。
魔術は素材を使って行うらしいから、もしかしたら俺にも使える魔術があるかも知れない。
「でも、あの本は大切なものですから、大事に扱って下さいね」
「了解」
メイの許可も得たし、明日はあの本で時間を潰すことにしよう。
そんなふうに明日の予定を立てたところで、メイが大きな欠伸をする。
「眠そうだな。学校に遅刻するといけないし、もう寝た方がいいんじゃないか?」
「ふぁ・・・そうします」
メイは寝室に向かおうとして、ぴたっと足を止める。
そして、くるりと俺の方を振り返る。
「そういえば、ケイのお布団を用意しないといけないですね。腐葉土と牛糞堆肥とどちらがいいですか?」
おそらく俺が植物だから、そういう発想をしたのだろう。
植物を植えるのならば適切なのかも知れないけど、人間としての意識がある俺はあんまり嬉しくない。
「風呂で綺麗になったのに、腐った葉っぱや牛のう〇こに塗れるのはちょっと」
「でも、植物なんですから、土に入った方が寝心地がいいんじゃないですか?」
「そもそも、あんまり眠くないんだよ」
「そうなんですかぁ」
そんな会話をしている間にも、メイはどんどん眠そうな表情になっていく。
というか、ふらふらして今にも倒れそうだ。
「俺は適当に寝るから、早く寝たらどうだ。明日、学校なんだろ」
「でも・・・」
「なら今日のところはメイの布団で一緒に寝させてもらうから」
「そうですかぁ。じゃあ、すみませんけど、先に寝させてもらますねぇ」
それだけを言うと、メイはそのままベッドに倒れ込み、寝息を立て始める。
「驚くほど寝つきがいいな」
メイの寝顔を眺めながら、俺もベッドに潜り込んだ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。
かみゅG
ファンタジー
ゴブリン。
オーガ。
オーク。
エルフ。
ドワーフ。
ファンタジーの住人達。
もし、彼らを創り出すことができるとしたら、どの種族がよいだろうか。
強さを求める者。
美しさを求める者。
様々だろう。
しかし、世界の役に立つという観点で考えた場合、答えは明確だ。
オークである。
「だから、創ってみた」
「なにしてくれちゃってんの、このアホーーーッ!!!」
教授と助手による、特に異世界に転移も転生もしない冒険が、今!始まる!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
エンジニア(精製士)の憂鬱
蒼衣翼
キャラ文芸
「俺の夢は人を感動させることの出来るおもちゃを作ること」そう豪語する木村隆志(きむらたかし)26才。
彼は現在中堅家電メーカーに務めるサラリーマンだ。
しかして、その血統は、人類救世のために生まれた一族である。
想いが怪異を産み出す世界で、男は使命を捨てて、夢を選んだ。……選んだはずだった。
だが、一人の女性を救ったことから彼の運命は大きく変わり始める。
愛する女性、逃れられない運命、捨てられない夢を全て抱えて苦悩しながらも前に進む、とある勇者(ヒーロー)の物語。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
私、魔王の会社に入社しました-何者でもなかった僕が自らの城を手に入れる日まで-
ASOBIVA
経済・企業
これは、街の小さな工場で働いていたちっぽけな僕が、魔王様と出会って運命を変える物語。
とんでもなく面白くて、そしてシビアな魔物達のビジネスに魅了され、僕は新入社員として魔王様の会社に飛び込んだ。
魔物達からビジネスの薫陶を受け、ときに吐きそうな思いをしながら
学びを重ねていった僕はやがて、一つの大きな決断を迫られることになる。
魔王様は、笑いながら僕に問う。
「さあ、どうする?」
人生を決める選択。そして僕はーーーーー
魔王様の会社で新入社員時代につけていた日報をもとに書き起こした
「僕」の物語をどうぞ最後までお楽しみ下さい!
※本作品は既に完結済みです。2021年7月に集中連載いたします※
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる