21 / 75
第一章 森の中のマンドラゴラ
021.楽園だろうか?
しおりを挟む
収穫なしで家まで戻ってきた俺とメイであるが、メイに落ち込んでいる様子はない。
「お散歩、楽しかったですね」
そんなことすら言ってくる。
完全にピクニック気分だったようだ。
「そうだな」
俺もエセ魔術の素材集めよりは、女の子とピクニックだったと思う方が気分がよいので、そう答えておく。
マンドラゴラという転生後の俺と同じ種族を見つけられなかったのは少し残念だが、急いで自分の種族について調べようというつもりはない。
それに記憶が曖昧なせいか、異世界転生にありがちな元の世界に戻りたいという気持ちも沸いてこない。
不安があるとすれば、これからどう生活していこうということなのだが、メイの家に世話になっているので危機感はあまりない。
しばらくは、今日のようにメイの手伝いをしながら、暮らしていこうと思う。
ヒモのような生活ではあるが、この身体では自分で稼ぐのは難しいだろうから仕方がない。
まったりとそんなことを考えている間に、メイは魔女ローブと魔女帽子を脱ぐ。
「けっこう汗かいちゃったから、お風呂に入ってきますね」
「風呂があるのか?」
電気もガスも無いようだし薪で風呂の準備をしている様子も無かったのだが、メイはお風呂セットを持って準備万端だった。
「温泉があるんですよ」
「温泉!?」
元日本人としては、心惹かれる単語だ。
思わず反応してしまう。
「ケイ、もしかして入りたいんですか?」
そんな反応に気付いたのか、メイが声をかけてくる。
よほど入りたそうにしてしまっただろうか。
しかし、本当のことなので否定はできない。
「ああ。温泉は心身の疲れを取ってくれるばかりか、病気や怪我も治してくれる、言わば万能薬のようなものだからな。自宅に温泉があるなんて羨ましい」
病気や怪我を治すは言い過ぎかも知れないが、切り傷や腰痛に効くと謳っている温泉もあるくらいだから、あながち間違いではないだろう。
俺が興奮気味に返事をすると、自分の家の温泉を褒められたのが嬉しいのか、メイが笑顔で提案してくる。
「なら、一緒に入りますか?」
「いいのか!?」
願ってもない提案に、反射的に飛びつく。
まさか異世界で温泉に入ることができるとは思わなかった。
しかも家にあるということは、メイの家に居候していれば、毎日入ることができるということなのだ。
ここは楽園だろうか。
「はい。じゃあ、行きましょうか」
メイはボディソープでも掴む感じで俺を掴むと、温泉に向かって歩き始めた。
*****
そんなわけで、温泉までやってきた。
家の中の浴室にあるので広さはそれほどではないが、白い湯気に心が躍る。
しかし、他にも心が躍るものがある。
「そういえば、植物ってお湯に入っても大丈夫なんでしょうか?茹で野菜みたいになっちゃいませんか?」
メイの裸体だ。
湯気に負けないくらい白い裸体が目の前にある。
「温めのお湯なら大丈夫だと思う」
「じゃあ、桶に汲んで半分くらい水で薄めますね」
温泉という単語に浮かれていたが、一緒に入るということはこういうことだった。
お互い裸になるということだ。
俺の方はもともと何も着ていないのだが、メイの方は着ていた服を脱いでいる。
昨夜と違って下着も身に付けていない、正真正銘のすっぽんぽんだ。
「ここは楽園だろうか?」
メイが汲んでくれた温めの温泉に浸かりながら呟く。
「大袈裟ですねぇ」
メイは自分の身体にお湯をかけながら俺の呟きに応える。
恥ずかしがっている様子は無い。
特に気にした様子もなく、俺の目の前に白い裸身をさらしている。
うん、楽園だ。
肌で感じるお湯の温かさも、視界に入る光景も。
「湯加減はどうですか?」
「いい感じだ」
「熱かったら言って下さいね」
メイからすれば、野菜と一緒に温泉に入っているような感覚なのだろう。
けど、俺は違う。
俺には人間の意識が残っている。
だから、女の子が無防備に一緒に温泉に入ってくれるなんていうのは、役得以外の何物でもない。
そのはずなのだが、
「・・・興奮しないんだよな」
物足りない印象を受けていた。
「?何か言いましたか?」
「いや、なにも」
決してメイがへっぽこで魅力が無いからというわけじゃない。
スタイルは良いし、おっぱいも大きくて美しいし、顔も可愛い。
中身はともかく、容姿が魅力的なのは間違いない。
それに中身にしたって、性能がへっぽこなだけで、性格は良いと思う。
そんな女の子と一緒に温泉に入っていて興奮しない。
その原因はおそらく俺の方にあるのだと思う。
「お散歩、楽しかったですね」
そんなことすら言ってくる。
完全にピクニック気分だったようだ。
「そうだな」
俺もエセ魔術の素材集めよりは、女の子とピクニックだったと思う方が気分がよいので、そう答えておく。
マンドラゴラという転生後の俺と同じ種族を見つけられなかったのは少し残念だが、急いで自分の種族について調べようというつもりはない。
それに記憶が曖昧なせいか、異世界転生にありがちな元の世界に戻りたいという気持ちも沸いてこない。
不安があるとすれば、これからどう生活していこうということなのだが、メイの家に世話になっているので危機感はあまりない。
しばらくは、今日のようにメイの手伝いをしながら、暮らしていこうと思う。
ヒモのような生活ではあるが、この身体では自分で稼ぐのは難しいだろうから仕方がない。
まったりとそんなことを考えている間に、メイは魔女ローブと魔女帽子を脱ぐ。
「けっこう汗かいちゃったから、お風呂に入ってきますね」
「風呂があるのか?」
電気もガスも無いようだし薪で風呂の準備をしている様子も無かったのだが、メイはお風呂セットを持って準備万端だった。
「温泉があるんですよ」
「温泉!?」
元日本人としては、心惹かれる単語だ。
思わず反応してしまう。
「ケイ、もしかして入りたいんですか?」
そんな反応に気付いたのか、メイが声をかけてくる。
よほど入りたそうにしてしまっただろうか。
しかし、本当のことなので否定はできない。
「ああ。温泉は心身の疲れを取ってくれるばかりか、病気や怪我も治してくれる、言わば万能薬のようなものだからな。自宅に温泉があるなんて羨ましい」
病気や怪我を治すは言い過ぎかも知れないが、切り傷や腰痛に効くと謳っている温泉もあるくらいだから、あながち間違いではないだろう。
俺が興奮気味に返事をすると、自分の家の温泉を褒められたのが嬉しいのか、メイが笑顔で提案してくる。
「なら、一緒に入りますか?」
「いいのか!?」
願ってもない提案に、反射的に飛びつく。
まさか異世界で温泉に入ることができるとは思わなかった。
しかも家にあるということは、メイの家に居候していれば、毎日入ることができるということなのだ。
ここは楽園だろうか。
「はい。じゃあ、行きましょうか」
メイはボディソープでも掴む感じで俺を掴むと、温泉に向かって歩き始めた。
*****
そんなわけで、温泉までやってきた。
家の中の浴室にあるので広さはそれほどではないが、白い湯気に心が躍る。
しかし、他にも心が躍るものがある。
「そういえば、植物ってお湯に入っても大丈夫なんでしょうか?茹で野菜みたいになっちゃいませんか?」
メイの裸体だ。
湯気に負けないくらい白い裸体が目の前にある。
「温めのお湯なら大丈夫だと思う」
「じゃあ、桶に汲んで半分くらい水で薄めますね」
温泉という単語に浮かれていたが、一緒に入るということはこういうことだった。
お互い裸になるということだ。
俺の方はもともと何も着ていないのだが、メイの方は着ていた服を脱いでいる。
昨夜と違って下着も身に付けていない、正真正銘のすっぽんぽんだ。
「ここは楽園だろうか?」
メイが汲んでくれた温めの温泉に浸かりながら呟く。
「大袈裟ですねぇ」
メイは自分の身体にお湯をかけながら俺の呟きに応える。
恥ずかしがっている様子は無い。
特に気にした様子もなく、俺の目の前に白い裸身をさらしている。
うん、楽園だ。
肌で感じるお湯の温かさも、視界に入る光景も。
「湯加減はどうですか?」
「いい感じだ」
「熱かったら言って下さいね」
メイからすれば、野菜と一緒に温泉に入っているような感覚なのだろう。
けど、俺は違う。
俺には人間の意識が残っている。
だから、女の子が無防備に一緒に温泉に入ってくれるなんていうのは、役得以外の何物でもない。
そのはずなのだが、
「・・・興奮しないんだよな」
物足りない印象を受けていた。
「?何か言いましたか?」
「いや、なにも」
決してメイがへっぽこで魅力が無いからというわけじゃない。
スタイルは良いし、おっぱいも大きくて美しいし、顔も可愛い。
中身はともかく、容姿が魅力的なのは間違いない。
それに中身にしたって、性能がへっぽこなだけで、性格は良いと思う。
そんな女の子と一緒に温泉に入っていて興奮しない。
その原因はおそらく俺の方にあるのだと思う。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~
degirock/でじろっく
ファンタジー
「【なろうぜ系】って分かる?」
「分かりません」
「ラノベ読んだ事無い?」
「ありません」
「ラノベって分かる?」
「ライトノベルの略です」
「漫画は?」
「読みません」
「ゲーム」
「しません」
「テレビ」
「見ません」
「ざけんなおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
サブカル0知識の私が死んだ先で背負わされたのは、
異世界情報を詰め込んだ【異世界辞典】の編纂作業でした。
========================
利己的な人間に歪まされた自分の居場所を守る為に、私は私の正しさを貫く事で歪みを利己的な人間ごと排斥しようとした。
結果、利己的な人間により私の人生は幕を下ろした。
…違う。本当に利己的であったのは、紛まぎれも無く、私だ。間違えてしまったのだ。私は。その事実だけは間違えてはならない。
「……私は確かに、正しさという物を間違えました」
「そうだよなァ!? 綺麗事はやめようよ、ねェ! キミは正義の味方でも何でもないでしょォ!?」
我が意を得たり、と言わんばかりに醜くく歪んだ笑顔を見せる創造主。
そんな主に作られた、弄れるかわいそうな命。
違う…、違う!! その命達を憐れむ権利など私には無い!
「───だから?」
「……へっ?」
「だから、それがどうかしたんですか。私は今度こそ私の正しさを貫き通します。あなたが生み出したこの星の命へ、そしてあなたへ」
彼等のその手にそれぞれ強制的に渡されたとある本。それは目の前に浮かぶ地球によく似た星そのものであり、これから歩む人生でもある。二人の未熟なカミサマに与えられた使命、それはその本を完成させる事。
誰の思惑なのか、何故選ばれたのか、それすらも分からず。
一人は自らの正しさを証明する為に。
一人は自らの人生を否定し自由に生きる為に。
───これは、意図せず『カミサマ』の役目を負わされてしまった不完全な者達が、自ら傷付きながらも気付き立ち上がり、繰り返しては進んでいく天地創造の軌跡である。
遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。
かみゅG
ファンタジー
ゴブリン。
オーガ。
オーク。
エルフ。
ドワーフ。
ファンタジーの住人達。
もし、彼らを創り出すことができるとしたら、どの種族がよいだろうか。
強さを求める者。
美しさを求める者。
様々だろう。
しかし、世界の役に立つという観点で考えた場合、答えは明確だ。
オークである。
「だから、創ってみた」
「なにしてくれちゃってんの、このアホーーーッ!!!」
教授と助手による、特に異世界に転移も転生もしない冒険が、今!始まる!


ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる