森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

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第一章 森の中のマンドラゴラ

019.うーん?

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「抜いても叫び声を上げないってことは、『普通の』マンドラゴラのようですね」

 マンドラゴラが動かないことを不思議がらないメイに疑問を感じていると、メイが何気ない口調でそんなことを言う。
 しかし、俺はその言葉に引っかかった。

「普通の?」

 俺もマンドラゴラらしいのだが、俺は普通ではないということだろうか。
 疑問が顔に出ていたのだろう。
 メイが説明をしてくれる。

「普通っていうのは、魔術の素材にならないっていう意味です」
「?」

 説明してくれたのだが、意味が分からない。
 説明の続きを聞く。

「私が欲しいのは、『魔術の素材になる』マンドラゴラなんですよ」
「だから、マンドラゴラっていうのが魔術の素材なんだろ?」

 俺はそう認識していたのだが違うのだろうか。
 メイがその疑問に答えてくれる。

「違いますよ。マンドラゴラだから魔術の素材なんじゃなくて、特殊な条件で育ったマンドラゴラが魔術の素材になるんです」
「そうなのか?」
「そうなんです」

 どうも俺の認識は間違っていたらしい。
 メイが出来の悪い生徒に教えるように説明を補足する。
 若干イラッとするが、魔術の知識についてはメイの方が詳しいのは確かなので、大人しく聞くことにする。

「そもそも魔術の素材っていうのは、一般の図鑑に載っていないような植物や鉱物を使うわけじゃないんです」
「ただのマッチを魔術だと言い張っていたしな」
「あれだって魔術ですよぅ。今は一般化しているから魔術って認識している人は少ないですけど、火打石で火をつけていた頃は凄い術だったんですから」
「そんな大昔のことを言われてもな」

 けど、高度に発達した科学は魔法と変わらないって言葉を何かで読んだことがあるし、言っていることは分からなくもない。
 高度に発達した科学が魔法なのだとすれば、科学が発達していない時代には、現代の科学は魔法に見えたということなのだろう。
 でもだからといって、現代において現代の科学を魔法と言い張るのは違うと思うけど。

「と!に!か!く!」

 メイは強引に話を進めるように説明を続ける。

「魔術に使う素材は、種類としては珍しくない植物や鉱物なんです。ただし、魔術に使うためには特殊な条件で育ったり生成したりしたものじゃないといけないんです」
「うーん?」

 言っていることは分からなくもないけど、具体的なイメージが湧かないな。

「ほら、お野菜だって昼前に採ったものより、早朝に採ったものの方が、美味しいでしょう?」
「そうなのか?」

 メイが具体例を挙げてくれるが、俺はそもそもそのことを知らない。
 農家の朝が早いイメージはあるけど、それが理由なのだろうか。

「植物の樹液が、長い年月をかけて琥珀っていう宝石になるって言えば分かりますか?」
「そっちなら分かる」

 というか、なんで最初にそっちで説明しないんだろう。
 そっちの方が、美味しい野菜の収穫方法よりは、神秘的なイメージがあるのに。
 やっぱり、メイは魔女っぽくないな。
 でもまあ、条件があるっていうのは分かった。

「マンドラゴラの条件っていうのは何だ?」

 問題はそれだ。
 これは自分自身がどういう存在なのかということにも関わる。
 自分はどうやって生まれた存在なんだろう。
 人間から転生したのだとしても、それは魂とかそういうものの話だと思う。
 身体がどういうものかを知っておくのは重要なことだ。
 そう思って割と軽い感じで質問したのだけど、

「マンドラゴラは死刑場の下に生えているものが魔術の素材として使えますね」

 けっこう重い答えが返ってきた。

「・・・死刑場?」
「死刑された人間の体液を吸って育ったものがいいみたいです」
「いいみたいって・・・」

 陽当たりがよいところで育った野菜が美味しく育つんです、というのと同じノリで言ってくる。
 けど、そんな軽いノリで話すような内容じゃない。

「じゃあ俺は死体を栄養にして育ったってことか?」
「そうなりますね」

 ちょっと勘弁して欲しい。
 動物の死骸が植物の肥料になるって話は知っているけど、だからといって人間の死体を肥料にするのは抵抗がある。
 そこまで考えて、ふと気付く。

「ここって死刑場があったのか?」

 メイの説明だと、魔術の素材となるマンドラゴラは死刑場の下に生えるということだった。
 そして、俺が引っこ抜かれたのは、この近くだという。
 しかし、現在この場所に死刑場は見当たらない。
 ということは、過去にここが死刑場だったということなのだろうか。
 そんな疑問から出た推測だったのだけど、メイはその推測を否定する。

「そんなものありませんよ。そんなものがあった場所になんて近づきません。だって、幽霊が出そうで怖いじゃないですか」

 そんな魔女っぽくないそんな答えが返ってきた。
 でも別にそれが悪いことだと言うつもりはない。
 幽霊はともかく、俺もそんな気味が悪いところには好き好んで近づこうとは思わない。
 しかし、だとするとメイは何でこんな場所に魔術の素材を探しにきているのだろう。
 そして、なぜ俺はここで生まれたのだろう。
 その答えをメイが口にする。

「ここは死刑場じゃありません。過去に連続猟奇殺人があった事件現場です」

 死刑場よりも気味が悪いと思うのは俺だけだろうか。
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