森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

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第一章 森の中のマンドラゴラ

014.もぐもぐ

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 メイの寝息を聴きながら考える。
 どうも眠たくない。
 下着姿の少女と同じベッドに入り胸に挟まれているという夢のようなシチュエーションではあるが、ドキドキして眠れないわけではない。
 睡眠欲が湧いてこないのだ。

「やっぱり、この身体のせいかな」

 植物も夜になったら光合成を休むと思うのだが、俺は根っこだから違うのだろうか。
 あるいは冬になったら冬眠するのかも知れないが、今はそれほど寒い季節ではない。
 メイが下着姿で眠れるくらいだ。
 極上の羽毛布団のような感触に包まれているという状況に不満はないのだが、眠ることができないとなると暇だ。

「せっかく異世界に転生したんだから、もっとこう、血湧き肉躍るようなイベントはないのか」

 今の身体には血も肉も無いだろうけど、そういうことじゃない。
 ようするに、冒険とかバトルとか、そういうのは無いのかということだ。
 なんで異世界に転生した初日に、勉強の面倒を見ているんだ。
 それならそれで、ラブラブとかイチャイチャとか、そういう恋愛関係のイベントでもいいのだけど、身体が植物でそれは無いだろう。
 メイからすれば、俺は素材。
 好感度が上がったとしてもペット止まりだと思う。

「メイが起きたら、どんな魔術があるのか聞いてみるか」

 メイが見せてくれたのはマッチで火を起こすというエセ魔術だったけど、希望を捨てるのはまだ早い。
 どうも、メイはへっぽこっぽいので、メイだからあんな魔術しか使えなかった可能性がある。
 全ての魔術がそうだとは限らない。
 それに根拠もある。
 俺という魔法植物の実物が存在しているのだ。
 もっと凄い魔術が存在してもおかしくはない。

「しかし、暇だな。今度、本でも貸してもらうか」

 そんなことを考えながら、俺は眠れない夜を過ごした。

 *****

「ふぁあっ!」

 朝日の差し込む寝室で、メイが目を覚ます。
 大きく欠伸をしているけど、これは眠たいからじゃない。
 酸素を行き渡らせて、身体を目覚めさせるためだろう。

「あれ、朝?寝たのはお昼のはずなのに・・・まさか、時間が戻った!?」
「そんなわけあるか。次の日の朝だよ。まさか、18時間以上も寝るとは思わなかった」

 俺がツッコミを入れると、メイはきょろきょろと周囲を見回した後、自分の胸元に視線を落とす。

「・・・ケイ、なんで人のおっぱいの間にいるんですか?」
「やむにやまれぬ事情があってな」
「・・・そうですか」

 納得したのかスルーしただけなのか、メイは胸の谷間から俺を取り出すと、手のひらに乗せてそのまま寝室から出る。
 途中で昨日脱いだ服を拾うが、着る気配はない。

「服くらい来たらどうだ。年頃の娘がはしたない」
「ご飯を食べてからでいいです」

 ぐぎゅるるる~

 言葉とともに、メイのお腹が鳴る。
 色気の無い音だけど、それだけ腹が減っていることは分かった。
 考えてみたら、メイは丸一日以上、食事を摂っていないことになる。
 俺が勉強をさせていたのも一因だから、食べるのを後にして服を着ろというのも悪い気がする。
 それに俺からすれば眼福だから、本人が恥ずかしがっていないなら特に止める必要はないか。

「♪」

 メイは俺をテーブルの上に置くと、台所の方に向かう。
 時間をかけて料理をするのは面倒なのか、パンに野菜やチーズを挟んで、手早くサンドイッチを作っているようだ。

「ケイも食べますか?」
「ああ、頼む」

 どうやら俺の分も作ってくれるようだ。
 メイは鼻歌を歌いながら、食事の支度をしている。
 こうして下着姿で料理をしてくれている女の子を見ると、なんだか新婚みたいだな。
 白いエプロンでもあれば完璧なのだけど、そこまで贅沢は言えない。
 それに、俺が新婚みたいに感じていても、たぶんメイにとってはそうじゃない。
 メイは俺を男として見ていないから、平気で下着姿を見せているのだろう。
 役得ではあるのだが、複雑な心境だ。

「お待たせしましたぁ」

 数分後、メイが自分の分と俺の分のサンドイッチを持ってテーブルにやってくる。
 俺の分は身体に合わせて小さく切ってくれたようだ。
 こういう心配りができるところは美徳だと思う。
 これで人のことをすりおろそうとしなければ、言うことないのだが。

「いただきます」
「いただきます」

 よほど腹が減っているのか、メイは大きな口でかぶり付く。
 女の子にあるまじき食べ方だけど、もぐもぐと口を動かして幸せそうな表情だ。
 せっかくなので、俺もご馳走になるとしよう。
 転生前の記憶は曖昧だが、女の子の手料理というものを食べた記憶はない。
 もしかしたら、初めてなんじゃないだろうか。
 だとしたら、貴重な体験だ。
 俺は最初の一口を口に含み、

「もぐもぐもぐ・・・」
「お味はどうですか?」
「もぐもぐもぐ・・・」
「ケイ?」
「ごくん」

 しっかり味わってから首を傾げる。

「・・・・・味がしない」
「ふぇ?」

 俺の言葉を聞いて、メイが不思議そうな顔をした。
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