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第一章 森の中のマンドラゴラ
012.ひぃん!
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「交換条件?」
メイが首を傾げる。
どうやら、話を聞くつもりはあるようだ。
ならば、交渉の余地はある。
「課題があるんだろう。手伝おうじゃないか」
「じゃあ、すりおろさせて下さい」
「魔術の方じゃなくて、勉強の方だ」
先ほどのメイと祖母の会話にそんな話題が出てきていた。
異世界といえば、教育レベルが低いと相場は決まっている。
チートとは言えないまでも、勉強でなら優位に立てるはずだ。
それに、メイは勉強の成績があまりよく無いらしい。
それを手伝うことにより協力関係を築けば、人のことをすりおろそうとする可能性も減るだろう。
そう考えての提案だった。
「ケイまで、私をいじめるんですかぁ」
しかし、メイは拗ねたように口を尖らせる。
いかん。
機嫌を損ねたら、すりおろされる可能性が高まる。
なんとか、フォローを試みる。
「いじめるわけではないが、赤点はまずいだろう。赤点を取ったら補習とかがあるんじゃないか?」
転生前に通っていた学校ではそうだった。
テストは実力を確認するためのものだから赤点を取ったからといって必ず補習があるとも限らないが、なんらかのペナルティーはあるはずだ。
そこを突くことにする。
「補習なんかいいんですよぅ。さぼっちゃっても、成績が落ちるだけですから」
「いや、ダメだろう」
メイの口調からすると、すでに試したことがあるようだ。
この様子だと、さぼりの常習犯の可能性もある。
確かに成績が落ちるだけというと、ペナルティーとしては弱く感じるかも知れない。
しかし、成績は進級や卒業の判断基準でもあるのだ。
もちろん、教師も非情ではないから、なんとか卒業はさせようとするだろう。
けど、それはつまり、強制的に補習を受けさせるとか、そういうことを意味する。
「そんなことを繰り返していると、椅子に縛り付けられて補習を受けさせられるんじゃないのか?」
「うっ。おばあちゃんなら、やりかねない」
俺の言葉にメイも危機感を覚えたらしい。
そういえば、メイの祖母は課題が終わるまで監視すると言っていた。
教育に熱心なのだろう。
いや、熱心という言い方は語弊があるな。
赤点を取って補習も逃亡するような孫に、人並に勉強を受けさせたいのだろう。
「だから、ほら。俺が手伝ってやるから、宿題をやったらどうだ」
「うぅ~~~」
やらなきゃいけないことは分かっているけど、やりたくない。
そんな心情が手に取るように分かる。
ここで無理にやらせようとしても、反発して頑なになるだけだろう。
ここはアメとムチを使い分ける場面だ。
「なんなら、宿題が終わった後に、魔術の素材集めも手伝ってやるぞ」
俺は自分がすりおろされたくないだけであって、他のマンドラゴラがすりおろされることには嫌悪感はない。
今の身体からすると同じ種族ということになるのだろうけど、俺の意識はあくまでも人間だ。
身代わりを用意することに抵抗はない。
「むぅ・・・分かりましたよぅ。宿題やりますぅ」
メイは渋々ながら、宿題をやることに同意する。
これで当面の安全は確保できそうだ。
「よし!じゃあ、一緒に頑張ろう!」
ここで機嫌を損ねられたら面倒だ。
一緒に頑張る、という言葉で一体感を出そうとしつつ、俺はメイの宿題に協力することにした。
*****
そんな感じで、メイの宿題を見ることになったのだが、
「足し算と引き算から勉強し直せ!!!」
「ひぃん!」
ひどいものだった。
幸い、数字の概念は異世界でも同じだった。
だから、異世界といえども、計算方法は俺が学校で習った知識が役に立つ。
それはいいのだが、ひどいのはメイの頭の方だ。
「問題文の解釈がどうとかいう以前に、足し算が違っているじゃねぇか!!!」
最初は問題文の解釈を間違えているのだと思った。
けど、どういう計算をしているのか聞いていってみると、それ以前の問題だったのだ。
「二桁の数字も足し算できねぇって、どういうことだよ!!!」
「だ、だって指が足りないですよぅ」
「そんなんじゃ、店でジュースも買えないだろ!!!」
「お店でお買い物するときは、店員さんが計算してくれますよぅ」
「財布にいくらか残っているかすら分からねぇだろうって言ってんだよ!!!」
「ひんっ!」
これはダメだ。
こんなんじゃ、徹夜しても宿題なんて終わりっこない。
それどころか、このままだとメイが学校を退学になる可能性がある。
「・・・徹底的にやるぞ」
「ふえっ?」
「徹底的にやるっていってるんだよっ!!!」
「ふえええぇぇぇ!」
乗りかかった船だ。
メイに意地でも宿題をさせることにする。
メイが首を傾げる。
どうやら、話を聞くつもりはあるようだ。
ならば、交渉の余地はある。
「課題があるんだろう。手伝おうじゃないか」
「じゃあ、すりおろさせて下さい」
「魔術の方じゃなくて、勉強の方だ」
先ほどのメイと祖母の会話にそんな話題が出てきていた。
異世界といえば、教育レベルが低いと相場は決まっている。
チートとは言えないまでも、勉強でなら優位に立てるはずだ。
それに、メイは勉強の成績があまりよく無いらしい。
それを手伝うことにより協力関係を築けば、人のことをすりおろそうとする可能性も減るだろう。
そう考えての提案だった。
「ケイまで、私をいじめるんですかぁ」
しかし、メイは拗ねたように口を尖らせる。
いかん。
機嫌を損ねたら、すりおろされる可能性が高まる。
なんとか、フォローを試みる。
「いじめるわけではないが、赤点はまずいだろう。赤点を取ったら補習とかがあるんじゃないか?」
転生前に通っていた学校ではそうだった。
テストは実力を確認するためのものだから赤点を取ったからといって必ず補習があるとも限らないが、なんらかのペナルティーはあるはずだ。
そこを突くことにする。
「補習なんかいいんですよぅ。さぼっちゃっても、成績が落ちるだけですから」
「いや、ダメだろう」
メイの口調からすると、すでに試したことがあるようだ。
この様子だと、さぼりの常習犯の可能性もある。
確かに成績が落ちるだけというと、ペナルティーとしては弱く感じるかも知れない。
しかし、成績は進級や卒業の判断基準でもあるのだ。
もちろん、教師も非情ではないから、なんとか卒業はさせようとするだろう。
けど、それはつまり、強制的に補習を受けさせるとか、そういうことを意味する。
「そんなことを繰り返していると、椅子に縛り付けられて補習を受けさせられるんじゃないのか?」
「うっ。おばあちゃんなら、やりかねない」
俺の言葉にメイも危機感を覚えたらしい。
そういえば、メイの祖母は課題が終わるまで監視すると言っていた。
教育に熱心なのだろう。
いや、熱心という言い方は語弊があるな。
赤点を取って補習も逃亡するような孫に、人並に勉強を受けさせたいのだろう。
「だから、ほら。俺が手伝ってやるから、宿題をやったらどうだ」
「うぅ~~~」
やらなきゃいけないことは分かっているけど、やりたくない。
そんな心情が手に取るように分かる。
ここで無理にやらせようとしても、反発して頑なになるだけだろう。
ここはアメとムチを使い分ける場面だ。
「なんなら、宿題が終わった後に、魔術の素材集めも手伝ってやるぞ」
俺は自分がすりおろされたくないだけであって、他のマンドラゴラがすりおろされることには嫌悪感はない。
今の身体からすると同じ種族ということになるのだろうけど、俺の意識はあくまでも人間だ。
身代わりを用意することに抵抗はない。
「むぅ・・・分かりましたよぅ。宿題やりますぅ」
メイは渋々ながら、宿題をやることに同意する。
これで当面の安全は確保できそうだ。
「よし!じゃあ、一緒に頑張ろう!」
ここで機嫌を損ねられたら面倒だ。
一緒に頑張る、という言葉で一体感を出そうとしつつ、俺はメイの宿題に協力することにした。
*****
そんな感じで、メイの宿題を見ることになったのだが、
「足し算と引き算から勉強し直せ!!!」
「ひぃん!」
ひどいものだった。
幸い、数字の概念は異世界でも同じだった。
だから、異世界といえども、計算方法は俺が学校で習った知識が役に立つ。
それはいいのだが、ひどいのはメイの頭の方だ。
「問題文の解釈がどうとかいう以前に、足し算が違っているじゃねぇか!!!」
最初は問題文の解釈を間違えているのだと思った。
けど、どういう計算をしているのか聞いていってみると、それ以前の問題だったのだ。
「二桁の数字も足し算できねぇって、どういうことだよ!!!」
「だ、だって指が足りないですよぅ」
「そんなんじゃ、店でジュースも買えないだろ!!!」
「お店でお買い物するときは、店員さんが計算してくれますよぅ」
「財布にいくらか残っているかすら分からねぇだろうって言ってんだよ!!!」
「ひんっ!」
これはダメだ。
こんなんじゃ、徹夜しても宿題なんて終わりっこない。
それどころか、このままだとメイが学校を退学になる可能性がある。
「・・・徹底的にやるぞ」
「ふえっ?」
「徹底的にやるっていってるんだよっ!!!」
「ふえええぇぇぇ!」
乗りかかった船だ。
メイに意地でも宿題をさせることにする。
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