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第一章 森の中のマンドラゴラ
009.わぷっ!
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「なかなかいい家じゃないか」
メイに連れて来られた場所は、一言で言えば森の中のログハウスといった感じだった。
それほど大きいわけではないが、別荘みたいな感じで憧れる。
ここに来るまでにかかった時間は、俺が引っこ抜かれた場所から一時間ほどだ。
といっても、メイの足で歩いた場合の話だ。
彼女の手のひらサイズしかない俺が一人でここまで来ようと思ったら、数倍、いや、数十倍の時間がかかったことだろう。
改めて、今の自分の身体の不便さを感じる。
しかし、それとともに異世界へ来たのだと言うことを実感もする。
「中はどうなっているんだ?魔術の道具とか置いてあるのか?」
メイがへっぽこ魔女なのは間違いないが、それでも魔女が住む家というのは興味がある。
メイの肩に乗ってそのまま家に入ろうとしていると、むんずと掴まれる。
掴んできたのはメイだ。
「その前に」
「お、おい」
メイは入口の扉の手前でくるりと横を向くと、俺を掴んだまま歩いていく。
そこにあったのは、雨水を溜めているらしい水瓶だ。
メイは水瓶から桶に水を汲むと、
「わぷっ!」
そのままゴボウでも洗うかのように、俺をじゃぶじゃぶし始める。
「こ、こら!わぷっ!なにを!わぷっ!するっ!」
「家に入る前に綺麗にしないといけないでしょう。ケイは土塗れなんですから」
「わぷっ!もうちょっと!わぷっ!丁寧に!わぷっ!」
メイは俺の全身をゴシゴシする。
隅から隅までゴシゴシだ。
少女に全身を、しかも、棒状のものをゴシゴシされるなんて、シチュエーションによっては興奮ものだが、ちっともムラムラしない。
でも、ドキドキはする。
ドキドキの理由は、力づくで水に沈められて、命の危険を感じるからだ。
これじゃ、上手く喋ることもできない。
「え?なんですか?聞こえませんよ?」
「だから!わぷっ!丁寧に!」
「聞こえないから、洗い終わってから聞きますね」
メイはそう言うけど、絶対わざとだ。
普通は、聞こえないなら、いったん手を止めて話を聞こうとするだろう。
「わぷっ!おまえ!わぷっ!さっきのこと!わぷっ!根に持っているだろう!わぷっ!」
「やだなぁ。ちんけとか、あんなもんとか、ハズレとか言われたことなんて、気にしていませんよ」
「しっかり!わぷっ!聞こえているじゃ!わぷっ!ないか!」
相当、根に持っているようだ。
けど、仕方がないじゃないか。
異世界転生して最初に見せられた魔術が、マッチで火をつけるって、どんな罰ゲームだ。
しかし、結局、反論する機会は与えられず、俺は綺麗になるまでゴシゴシと洗われ続けるのだった。
*****
「これで許してあげます」
洗われて拭かれて、ようやく家に入れてもらえたところで、メイがそう言ってきた。
許すというのは、綺麗になったから家に入るのを許すということなのか、魔術をちんけと言ったことを許すということなのか、どちらだろう。
絶対、後者な気がする。
「やれやれ、ひどいめにあった」
「ふーんだ。自業自得ですよ」
メイはまだちょっと拗ねているようだけど、だいぶ機嫌は直ったようだ。
俺をテーブルの上に、ぽんっと置く。
そこで俺はようやく家の中を眺める。
「おぉ!なんか、それっぽい道具があるな!」
学校の理科室に置いてあるような道具がちらほらと見える。
量を測ったり重さを測ったりする器具から、材料を磨り潰したり火にかけたりする器具まで、様々なものが揃っている。
理科の成績はそれほどよくなかったけど、実験は好きだった。
こういう道具を見ると、ウキウキしてしまう。
「この道具で魔術の薬品とかを作るのか?」
「そうですよ」
俺が質問すると、メイは何やら道具をがちゃがちゃいじりながら答えてくる。
何かを探しているようだ。
「なあ、何か作ってみせてくれよ。さっきのマッチ以外で」
「もちろん、そのつもりですよ。えーっと、どこにやったかな」
メイはしばらく探していたようだったが、やがて目的のものを見つけたようだ。
手に何かをもって、こちらに近づいてくる。
「目的の材料も手に入りましたからね。さっそく、作ろうと思います」
メイが手に持っていたのは、大根おろしを作るアレだった。
ぶるっ!
なんだろう。
寒気がした。
「メイ、ちょっと聞きたいんだが」
「なんですか?」
身の危険を感じて問いかけるのだが、メイは止まらず、にゅっとこちらに手を伸ばしてきた。
ささっ!
俺はすばやくメイを手を避ける。
「ソレは何をする道具なんだ?」
にゅっ
ささっ!
「材料をすりおろす道具ですよ」
「そうか」
にゅっ
ささっ!
「何をすりおろすんだ?」
にゅっ
ささっ!
「今日収穫したマンドラゴラをすりおろそうかと」
だだっ!
俺は全速力で逃げ出した。
メイに連れて来られた場所は、一言で言えば森の中のログハウスといった感じだった。
それほど大きいわけではないが、別荘みたいな感じで憧れる。
ここに来るまでにかかった時間は、俺が引っこ抜かれた場所から一時間ほどだ。
といっても、メイの足で歩いた場合の話だ。
彼女の手のひらサイズしかない俺が一人でここまで来ようと思ったら、数倍、いや、数十倍の時間がかかったことだろう。
改めて、今の自分の身体の不便さを感じる。
しかし、それとともに異世界へ来たのだと言うことを実感もする。
「中はどうなっているんだ?魔術の道具とか置いてあるのか?」
メイがへっぽこ魔女なのは間違いないが、それでも魔女が住む家というのは興味がある。
メイの肩に乗ってそのまま家に入ろうとしていると、むんずと掴まれる。
掴んできたのはメイだ。
「その前に」
「お、おい」
メイは入口の扉の手前でくるりと横を向くと、俺を掴んだまま歩いていく。
そこにあったのは、雨水を溜めているらしい水瓶だ。
メイは水瓶から桶に水を汲むと、
「わぷっ!」
そのままゴボウでも洗うかのように、俺をじゃぶじゃぶし始める。
「こ、こら!わぷっ!なにを!わぷっ!するっ!」
「家に入る前に綺麗にしないといけないでしょう。ケイは土塗れなんですから」
「わぷっ!もうちょっと!わぷっ!丁寧に!わぷっ!」
メイは俺の全身をゴシゴシする。
隅から隅までゴシゴシだ。
少女に全身を、しかも、棒状のものをゴシゴシされるなんて、シチュエーションによっては興奮ものだが、ちっともムラムラしない。
でも、ドキドキはする。
ドキドキの理由は、力づくで水に沈められて、命の危険を感じるからだ。
これじゃ、上手く喋ることもできない。
「え?なんですか?聞こえませんよ?」
「だから!わぷっ!丁寧に!」
「聞こえないから、洗い終わってから聞きますね」
メイはそう言うけど、絶対わざとだ。
普通は、聞こえないなら、いったん手を止めて話を聞こうとするだろう。
「わぷっ!おまえ!わぷっ!さっきのこと!わぷっ!根に持っているだろう!わぷっ!」
「やだなぁ。ちんけとか、あんなもんとか、ハズレとか言われたことなんて、気にしていませんよ」
「しっかり!わぷっ!聞こえているじゃ!わぷっ!ないか!」
相当、根に持っているようだ。
けど、仕方がないじゃないか。
異世界転生して最初に見せられた魔術が、マッチで火をつけるって、どんな罰ゲームだ。
しかし、結局、反論する機会は与えられず、俺は綺麗になるまでゴシゴシと洗われ続けるのだった。
*****
「これで許してあげます」
洗われて拭かれて、ようやく家に入れてもらえたところで、メイがそう言ってきた。
許すというのは、綺麗になったから家に入るのを許すということなのか、魔術をちんけと言ったことを許すということなのか、どちらだろう。
絶対、後者な気がする。
「やれやれ、ひどいめにあった」
「ふーんだ。自業自得ですよ」
メイはまだちょっと拗ねているようだけど、だいぶ機嫌は直ったようだ。
俺をテーブルの上に、ぽんっと置く。
そこで俺はようやく家の中を眺める。
「おぉ!なんか、それっぽい道具があるな!」
学校の理科室に置いてあるような道具がちらほらと見える。
量を測ったり重さを測ったりする器具から、材料を磨り潰したり火にかけたりする器具まで、様々なものが揃っている。
理科の成績はそれほどよくなかったけど、実験は好きだった。
こういう道具を見ると、ウキウキしてしまう。
「この道具で魔術の薬品とかを作るのか?」
「そうですよ」
俺が質問すると、メイは何やら道具をがちゃがちゃいじりながら答えてくる。
何かを探しているようだ。
「なあ、何か作ってみせてくれよ。さっきのマッチ以外で」
「もちろん、そのつもりですよ。えーっと、どこにやったかな」
メイはしばらく探していたようだったが、やがて目的のものを見つけたようだ。
手に何かをもって、こちらに近づいてくる。
「目的の材料も手に入りましたからね。さっそく、作ろうと思います」
メイが手に持っていたのは、大根おろしを作るアレだった。
ぶるっ!
なんだろう。
寒気がした。
「メイ、ちょっと聞きたいんだが」
「なんですか?」
身の危険を感じて問いかけるのだが、メイは止まらず、にゅっとこちらに手を伸ばしてきた。
ささっ!
俺はすばやくメイを手を避ける。
「ソレは何をする道具なんだ?」
にゅっ
ささっ!
「材料をすりおろす道具ですよ」
「そうか」
にゅっ
ささっ!
「何をすりおろすんだ?」
にゅっ
ささっ!
「今日収穫したマンドラゴラをすりおろそうかと」
だだっ!
俺は全速力で逃げ出した。
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