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第一章 森の中のマンドラゴラ
008.ひあっ!
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ご機嫌を取りつつ、なんとかメイを説得して、彼女の家に向かうことになった。
彼女はポケットの中に布袋を入れており、それに収穫物を入れて持ち帰るつもりだったらしい。
ここで言う収穫物とは、マンドラゴラである俺のことだ。
しかし、俺としては袋に入れて持ち運ばれるのはゴメンなので、肩に乗せてもらうことになった。
その道すがら、メイに話しかける。
「メイが魔女なのは分かったんだが・・・」
実はメイが魔女というのはまだ疑っているのだが、とりあえずそう言っておく。
機嫌を損ねられると面倒なので、メイの言うことを肯定しつつ会話をする。
「魔術っていうのを見せてもらうことはできるか?」
メイには、魔法と魔術は違う、という俺からすればどうでもいいこだわりがあるらしい。
機嫌を損ねないように言葉に気を付けながら質問すると、メイは他人に説明するのが嬉しいのか素直に答えてきた。
「いいですよ。どんな魔術が見たいですか?」
「どんなって言われても、どんなことができるのか自体を知らないんだが」
「そうですねぇ」
メイは少し考えた後、提案してくる。
「火を出す魔術を使ってみましょうか?ケイも使おうとしていたみたいですし」
正直、それには触れて欲しくないのだが、異論はない。
魔術と言われて最初に思い浮かんだのは、それだ。
だから、メイの提案に乗ることにする。
「それでいい。頼む」
「じゃあ、いきますよ」
メイはポケットをごそごそと探す。
そう言えば、魔術を使うには素材が必要だとか言っていたな。
やがて、メイは目的のものを見つけたのか、ポケットの中から小さな箱を取り出す。
あの中に、魔術の素材が入っているのだろうか。
メイはさらに、その箱の中から小さな棒を取り出す。
何をするかと注目していると、メイはその棒を箱の側面に擦り付けた。
シュッ、という小さな音とともに棒に火がともる。
「どうですか?」
「・・・・・」
どうですかと言われても。
「・・・・・確かに火が付いたな」
「えへんっ!」
メイは自慢気に胸を張る。
満足気なところ悪いが、俺は決して称賛したわけではない。
ただ事実として、火が付いたと言っただけだ。
それは事実なので、否定するつもりはない。
否定するつもりはないのだが、断じて称賛したわけでもない。
というか、
「それが魔術?」
マッチだった。
なんの捻りもない、マッチだった。
「そうですよ」
念のため確認したのだが、魔術を使う前段階というわけではなく、今のが魔術らしい。
メイは、はっきりと、今の出来事を魔術だと言った。
「数種類の物質を対価に、火という現象を呼び出したんです」
まあ、そう言えなくもない。
対価というか、化学反応だけど。
「・・・それが魔術?」
思わず、もう一度同じことを聞いてしまう。
バカみたいなおうむ返しだけど、言わずにはいられなかった。
「何か不満でも?」
メイに冗談を言っている様子は無い。
ということは、本当に今のが魔術だと言い張っているようだ。
「何かって言うか・・・」
「?」
メイが俺の声を聞き取ろうと耳を寄せてくる。
俺は限界まで大きく息を吸い込み、
「全部不満だっ!!!」
「ひあっ!」
力の限り叫んだ。
「耳元で大きな声を上げないで下さいよぅ」
「叫びたくもなるわっ!!!」
メイが恨みがましい視線を向けてくるが。俺はかまわず再び叫ぶ。
「何が不満なんですかぁ。見せてくれっていうから見せたのにぃ」
メイが耳を押さえながら文句を言ってくる。
しかし、文句を言いたいのはこっちだ。
「せっかく異世界に転生したと思ったのに、ちんけな魔術しかない世界なんて」
「ち、ちんけ!?」
「というか、魔術じゃないだろう、あんなもん」
「あ、あんなもん!?」
「とんだハズレだ、まったく」
「し、失礼な!」
失礼と言われても言わずにはいられない。
いくらなんでもマッチはないだろうマッチは。
そんなものを魔術と言うなら、俺にだって使える。
というか、誰にでも使えるだろう。
クレームを言う俺と、そのクレームに対してクレームを言うメイ。
ぎゃいぎゃいと言い合っている間に、メイの家に到着した。
彼女はポケットの中に布袋を入れており、それに収穫物を入れて持ち帰るつもりだったらしい。
ここで言う収穫物とは、マンドラゴラである俺のことだ。
しかし、俺としては袋に入れて持ち運ばれるのはゴメンなので、肩に乗せてもらうことになった。
その道すがら、メイに話しかける。
「メイが魔女なのは分かったんだが・・・」
実はメイが魔女というのはまだ疑っているのだが、とりあえずそう言っておく。
機嫌を損ねられると面倒なので、メイの言うことを肯定しつつ会話をする。
「魔術っていうのを見せてもらうことはできるか?」
メイには、魔法と魔術は違う、という俺からすればどうでもいいこだわりがあるらしい。
機嫌を損ねないように言葉に気を付けながら質問すると、メイは他人に説明するのが嬉しいのか素直に答えてきた。
「いいですよ。どんな魔術が見たいですか?」
「どんなって言われても、どんなことができるのか自体を知らないんだが」
「そうですねぇ」
メイは少し考えた後、提案してくる。
「火を出す魔術を使ってみましょうか?ケイも使おうとしていたみたいですし」
正直、それには触れて欲しくないのだが、異論はない。
魔術と言われて最初に思い浮かんだのは、それだ。
だから、メイの提案に乗ることにする。
「それでいい。頼む」
「じゃあ、いきますよ」
メイはポケットをごそごそと探す。
そう言えば、魔術を使うには素材が必要だとか言っていたな。
やがて、メイは目的のものを見つけたのか、ポケットの中から小さな箱を取り出す。
あの中に、魔術の素材が入っているのだろうか。
メイはさらに、その箱の中から小さな棒を取り出す。
何をするかと注目していると、メイはその棒を箱の側面に擦り付けた。
シュッ、という小さな音とともに棒に火がともる。
「どうですか?」
「・・・・・」
どうですかと言われても。
「・・・・・確かに火が付いたな」
「えへんっ!」
メイは自慢気に胸を張る。
満足気なところ悪いが、俺は決して称賛したわけではない。
ただ事実として、火が付いたと言っただけだ。
それは事実なので、否定するつもりはない。
否定するつもりはないのだが、断じて称賛したわけでもない。
というか、
「それが魔術?」
マッチだった。
なんの捻りもない、マッチだった。
「そうですよ」
念のため確認したのだが、魔術を使う前段階というわけではなく、今のが魔術らしい。
メイは、はっきりと、今の出来事を魔術だと言った。
「数種類の物質を対価に、火という現象を呼び出したんです」
まあ、そう言えなくもない。
対価というか、化学反応だけど。
「・・・それが魔術?」
思わず、もう一度同じことを聞いてしまう。
バカみたいなおうむ返しだけど、言わずにはいられなかった。
「何か不満でも?」
メイに冗談を言っている様子は無い。
ということは、本当に今のが魔術だと言い張っているようだ。
「何かって言うか・・・」
「?」
メイが俺の声を聞き取ろうと耳を寄せてくる。
俺は限界まで大きく息を吸い込み、
「全部不満だっ!!!」
「ひあっ!」
力の限り叫んだ。
「耳元で大きな声を上げないで下さいよぅ」
「叫びたくもなるわっ!!!」
メイが恨みがましい視線を向けてくるが。俺はかまわず再び叫ぶ。
「何が不満なんですかぁ。見せてくれっていうから見せたのにぃ」
メイが耳を押さえながら文句を言ってくる。
しかし、文句を言いたいのはこっちだ。
「せっかく異世界に転生したと思ったのに、ちんけな魔術しかない世界なんて」
「ち、ちんけ!?」
「というか、魔術じゃないだろう、あんなもん」
「あ、あんなもん!?」
「とんだハズレだ、まったく」
「し、失礼な!」
失礼と言われても言わずにはいられない。
いくらなんでもマッチはないだろうマッチは。
そんなものを魔術と言うなら、俺にだって使える。
というか、誰にでも使えるだろう。
クレームを言う俺と、そのクレームに対してクレームを言うメイ。
ぎゃいぎゃいと言い合っている間に、メイの家に到着した。
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