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第一章 森の中のマンドラゴラ
007.ぐすんっ!
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ごろごろ・・・・・ぴたっ
「ケイ?」
羞恥に耐えきれず悶え転がっていた俺だが、ふいに気付いた。
よく考えたら、俺よりも恥ずかしい格好をした人間が目の前にいるのだ。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのではないだろうか。
「・・・なぁ」
「は、はい?」
転がってうつ伏せになった姿勢のまま、俺はメイに尋ねる。
俺の奇行にドン引きしているような声だったが、メイが返事をしてくる。
そんなメイに、俺はさらに尋ねる。
「メイって魔女っぽい格好をしているけど、魔法を使えるのか?」
この世界に魔法というものが存在するのであれば、先ほどの俺の行動はただ魔法に失敗しただけに見えるのではないだろうか。
だとすれば、決して恥ずかしい行動ではない。
中学二年生の少年少女がアレな感じになる病には見えないはずだ。
そんな期待を込めた問いだった。
それに対するメイの答えは、
「魔法ですか?使えませんよ」
そんな無慈悲な言葉だった。
「・・・それは、修行中だからとか、そういう理由で?」
「いえ、魔法なんて現実にはありませんよ。魔法が使えるなんて考えるのは、想像力が豊か過ぎて、ちょっとアレな感じになっちゃった子供くらいじゃないですかね」
「・・・・・」
「ケイ?」
なるほど。
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「きゃあっ!」
ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ
どうやら、異世界には魔法は無いようだ。
そして、異世界にもあの病はあるらしい。
また一つ検証することができたが、俺にはそれを喜ぶ余裕は無かった。
*****
最初の二倍ほどの時間を転げ回ったところで、なんとか平常心を取り戻すことができた。
とんだ恥の上塗りをしてしまったわけだけど、それならそれで納得できないことがある。
「魔法が使えないなら、なんでメイはそんな格好をしているんだ?魔女じゃないんだろ?」
そもそも異世界においてメイの衣装が魔女の衣装なのかは分からないけど、とりあえず聞いてみた。
それに対するメイの答えはシンプルだった。
「魔女ですよ」
あっさりと魔女だと名乗ってきたのだ。
でも、シンプルすぎて納得できない。
「魔法が使えないのに魔女?」
なんだが訳が分からなくなってきた。
もう少し詳しく聞いてみることにする。
「魔女が使うのは魔法じゃなくて魔術です」
「・・・・・どう違うんだ?」
「魔法は、自然法則を無視して非科学的な現象を起こす、胡散臭いものですよね」
「・・・・・そんなイメージがあるな」
「魔術は、根拠のある手順に従って現象を起こすものです。分野が異なるだけで、学術や技術と同じですね」
「・・・・・なるほど」
説明を聞いて、魔法と魔術という違うがあるのは分かった。
分かったのだが、
「そんな細かい設定知るかっ!!!」
「ひいっ!」
納得はできなかった。
クレームものだ。
「魔法だろうが、魔術だろうが、どっちでもいいだろうがっ!!!」
「どっちでもよくはないですよぅ。明確な違いがあるんですからぁ」
「複雑すぎる設定は、万人受けしないんだよっ!!!」
「な、なんのことですかぁ」
ようするに、呼び方が違うだけで、魔法っぽいものはあるということだ。
それならそうと最初から言ってくれれば、恥ずかしい想いをしなくてよかったのに。
俺のごろごろを返せ。
*****
一通り文句を言った後、俺はメイを必死に慰めていた。
「ぐすんぐすん」
「すまん、言い過ぎた」
森の中に、メイのすすり泣く声と、俺の謝る声が響く。
「ぐすんっ!」
メイが恨みがましくこちらを見てくるが、さすがに今のは俺が悪かったので、反論できない。
完全な八つ当たりだった。
必死にメイのご機嫌を取る。
「それでメイは、その魔術っていうのに必要な素材を集めにきたんだな」
「そうですよぅ」
ふてくされながらも、メイはこちらの質問に答えてくれる。
でも、その頬はぷくっと膨れている。
「せっかく、マンドラゴラなんて希少な素材を見つけたと思ったのに、とんだハズレですよぅ」
「だから、悪かったって」
自分が希少素材扱いされることに思うところが無いわけではないけど、機嫌を取ることを優先する。
そして、そんなことをしながらも、少しずつ聞き出した情報を整理する。
メイの話をまとめると、この世界には魔術というのがあって、魔術を使うためには素材が必要らしい。
それが意味するのは、メイの他にも魔術師や魔女がいて、そいつらも素材を集めているということだ。
そして、俺が転生したマンドラゴラは希少素材。
つまり、俺はそいつらに狙われる可能性が高い。
素材の使い方は詳しく聞けていないけど、磨り潰したり煮込んだりしてもおかしくない。
そんなのは、ゴメンだ。
メイは気が弱そうだし、上手く煽てて身の安全を確保したいところだ。
「ケイ?」
羞恥に耐えきれず悶え転がっていた俺だが、ふいに気付いた。
よく考えたら、俺よりも恥ずかしい格好をした人間が目の前にいるのだ。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのではないだろうか。
「・・・なぁ」
「は、はい?」
転がってうつ伏せになった姿勢のまま、俺はメイに尋ねる。
俺の奇行にドン引きしているような声だったが、メイが返事をしてくる。
そんなメイに、俺はさらに尋ねる。
「メイって魔女っぽい格好をしているけど、魔法を使えるのか?」
この世界に魔法というものが存在するのであれば、先ほどの俺の行動はただ魔法に失敗しただけに見えるのではないだろうか。
だとすれば、決して恥ずかしい行動ではない。
中学二年生の少年少女がアレな感じになる病には見えないはずだ。
そんな期待を込めた問いだった。
それに対するメイの答えは、
「魔法ですか?使えませんよ」
そんな無慈悲な言葉だった。
「・・・それは、修行中だからとか、そういう理由で?」
「いえ、魔法なんて現実にはありませんよ。魔法が使えるなんて考えるのは、想像力が豊か過ぎて、ちょっとアレな感じになっちゃった子供くらいじゃないですかね」
「・・・・・」
「ケイ?」
なるほど。
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「きゃあっ!」
ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ
どうやら、異世界には魔法は無いようだ。
そして、異世界にもあの病はあるらしい。
また一つ検証することができたが、俺にはそれを喜ぶ余裕は無かった。
*****
最初の二倍ほどの時間を転げ回ったところで、なんとか平常心を取り戻すことができた。
とんだ恥の上塗りをしてしまったわけだけど、それならそれで納得できないことがある。
「魔法が使えないなら、なんでメイはそんな格好をしているんだ?魔女じゃないんだろ?」
そもそも異世界においてメイの衣装が魔女の衣装なのかは分からないけど、とりあえず聞いてみた。
それに対するメイの答えはシンプルだった。
「魔女ですよ」
あっさりと魔女だと名乗ってきたのだ。
でも、シンプルすぎて納得できない。
「魔法が使えないのに魔女?」
なんだが訳が分からなくなってきた。
もう少し詳しく聞いてみることにする。
「魔女が使うのは魔法じゃなくて魔術です」
「・・・・・どう違うんだ?」
「魔法は、自然法則を無視して非科学的な現象を起こす、胡散臭いものですよね」
「・・・・・そんなイメージがあるな」
「魔術は、根拠のある手順に従って現象を起こすものです。分野が異なるだけで、学術や技術と同じですね」
「・・・・・なるほど」
説明を聞いて、魔法と魔術という違うがあるのは分かった。
分かったのだが、
「そんな細かい設定知るかっ!!!」
「ひいっ!」
納得はできなかった。
クレームものだ。
「魔法だろうが、魔術だろうが、どっちでもいいだろうがっ!!!」
「どっちでもよくはないですよぅ。明確な違いがあるんですからぁ」
「複雑すぎる設定は、万人受けしないんだよっ!!!」
「な、なんのことですかぁ」
ようするに、呼び方が違うだけで、魔法っぽいものはあるということだ。
それならそうと最初から言ってくれれば、恥ずかしい想いをしなくてよかったのに。
俺のごろごろを返せ。
*****
一通り文句を言った後、俺はメイを必死に慰めていた。
「ぐすんぐすん」
「すまん、言い過ぎた」
森の中に、メイのすすり泣く声と、俺の謝る声が響く。
「ぐすんっ!」
メイが恨みがましくこちらを見てくるが、さすがに今のは俺が悪かったので、反論できない。
完全な八つ当たりだった。
必死にメイのご機嫌を取る。
「それでメイは、その魔術っていうのに必要な素材を集めにきたんだな」
「そうですよぅ」
ふてくされながらも、メイはこちらの質問に答えてくれる。
でも、その頬はぷくっと膨れている。
「せっかく、マンドラゴラなんて希少な素材を見つけたと思ったのに、とんだハズレですよぅ」
「だから、悪かったって」
自分が希少素材扱いされることに思うところが無いわけではないけど、機嫌を取ることを優先する。
そして、そんなことをしながらも、少しずつ聞き出した情報を整理する。
メイの話をまとめると、この世界には魔術というのがあって、魔術を使うためには素材が必要らしい。
それが意味するのは、メイの他にも魔術師や魔女がいて、そいつらも素材を集めているということだ。
そして、俺が転生したマンドラゴラは希少素材。
つまり、俺はそいつらに狙われる可能性が高い。
素材の使い方は詳しく聞けていないけど、磨り潰したり煮込んだりしてもおかしくない。
そんなのは、ゴメンだ。
メイは気が弱そうだし、上手く煽てて身の安全を確保したいところだ。
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