森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

文字の大きさ
上 下
6 / 75
第一章 森の中のマンドラゴラ

006.ぎゃあ!

しおりを挟む
 メイが考えに没頭している。
 それを待つ間、ぼーっとしているのも暇だな。
 俺も考え事をすることにする。

 俺の名前はケイ。
 記憶が曖昧でフルネームは思い出せないけど、うっすらとそう呼ばれていた記憶がある。
 社会人として働いていたという記憶は無いので、おそらく学生だったのだろう。
 中学二年生の少年少女がアレな感じになる病からは回復していた気がするので、高校生くらいだと思う。
 クラスメートの顔は思い出せないけど、それなりに友人はいた気がする。
 授業を受けて、部活動をして、友人と馬鹿話をして。
 そんな学生生活を送っていたのだろう。

 だけど、それも全てリセットだ。
 異世界転生したからには、人間関係も日常生活も、何もかもがリセットされる。
 学校を転校するとか、そんなこととは比にならないくらいリセットされて、何もかもが変わる。
 それを寂しいと思う反面、楽しみにしている自分もいる。
 新しい出会い、新しい世界。
 それらが待っているとすれば、期待するなという方が無理だろう。
 しかし、不満が無いわけではない。

「植物は無いよなあ」

 そうなのだ。
 今の自分は植物。
 人間はおろか、動物ですらない。
 これでは異世界生活を満喫するのは難しい。
 希望があるとすれば、チート能力だ。
 自分には、異世界転生につきもののチート能力は無いのだろうか。

「マンドラゴラって、魔法植物だよな」

 だとすれば、チート能力として可能性があるのは、魔力が高いとかだろうか。
 魔力なんて、これまでの人生で感じたことはない。
 けど、一応、身体の中を流れる魔力を感じようとしてみる。

「・・・うん、無理」

 もともと魔力なんて知らないのに、それがチート級になったかどうかなんて、分かるはずがない。
 しかし、まだ諦めるのは早い。
 もしかしたら感じることができないだけで、自分の身体に膨大な魔力が眠っている可能性はあるのだ。
 どうすれば、それが分かるだろうか。
 やはり、魔法を使ってみるとかだろうか。

「ふむ・・・」

 何となく集中とかしてみる。
 魔法の使い方なんて知らないけど、こういうのはイメージが大切だと思う。
 あとは、呪文だろうか。

「こほん・・・ファイヤー(ぽそっ)」

 手を前に突き出して、呪文っぽいものを唱える。
 イメージしたのは炎の魔法だ。
 しかし、何も起こらない。

「・・・まあ、そうだよな」

 予想はしていた。
 使ったこともない魔法なんてシロモノが、呪文を唱えたくらいで使えるわけがない。
 これはあくまで検証だ。
 本当に使えないかを検証して、実際に使えなかったという結果が確認できた。
 そういう検証結果だ。
 だから、俺は別に恥ずかしいことをしたわけじゃない。
 そう自分を納得させているというのに、

「あの、ケイ?何をしているんですか?」
「!?」

 怪訝そうな顔をしながら、メイがこちらに声をかけてきた。
 俺はびくりと身体を震わせる。

「・・・もしかして・・・見てた?」
「はい?何をでしょう?」

 もしかしたら何も見ていなくて、たまたま今のタイミングで声をかけて来ただけの可能性もある。
 そういう希望を抱くが、次の言葉でそれが打ち砕かれる。

「ケイが真面目な顔で『ファイヤー』とか言っているから、気を遣って声をかけなかったんですけど、何か邪魔しちゃいましたか?何も起きないから、もういいかなって思って声をかけたんですけど」
「・・・・・」
「ケイ?」

 俺は思いっきり息を吸い込む。
 この身体に肺があるのか分からないけど、とにかく思いっきりだ。
 そして、限界になったところで、一気に吐き出す。

「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「きゃあっ!」

 メイが俺の叫び声に悲鳴を上げるが、それを気遣う余裕なんかない。

「うあああああああああ!!!」

 ごろごろ

「ああああああああああ!!!」

 ごろごろごろごろ

「あああああぅぅぅぅぅ!!!」

 ごろごろごろごろごろごろ

「ケ、ケイ?どうしたんですか、突然悶えだして?」

 中学二年生の少年少女がアレな感じになる病にかかっているときならともかく、その病から回復した状態で今の行動を人に見られるのは、ダメージが大き過ぎる。
 まともな精神では耐えられない。
 また一つ検証することができた。
 どうやら俺には、精神面でのチート能力は無さそうだ。
 でも、それが検証できたからといって、全く嬉しくない。
 地面を転がりながら、俺はそんなことを考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく
ファンタジー
「【なろうぜ系】って分かる?」 「分かりません」 「ラノベ読んだ事無い?」 「ありません」 「ラノベって分かる?」 「ライトノベルの略です」 「漫画は?」 「読みません」 「ゲーム」 「しません」 「テレビ」 「見ません」 「ざけんなおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」  サブカル0知識の私が死んだ先で背負わされたのは、  異世界情報を詰め込んだ【異世界辞典】の編纂作業でした。 ========================  利己的な人間に歪まされた自分の居場所を守る為に、私は私の正しさを貫く事で歪みを利己的な人間ごと排斥しようとした。  結果、利己的な人間により私の人生は幕を下ろした。  …違う。本当に利己的であったのは、紛まぎれも無く、私だ。間違えてしまったのだ。私は。その事実だけは間違えてはならない。 「……私は確かに、正しさという物を間違えました」 「そうだよなァ!? 綺麗事はやめようよ、ねェ! キミは正義の味方でも何でもないでしょォ!?」  我が意を得たり、と言わんばかりに醜くく歪んだ笑顔を見せる創造主。  そんな主に作られた、弄れるかわいそうな命。  違う…、違う!! その命達を憐れむ権利など私には無い! 「───だから?」 「……へっ?」 「だから、それがどうかしたんですか。私は今度こそ私の正しさを貫き通します。あなたが生み出したこの星の命へ、そしてあなたへ」      彼等のその手にそれぞれ強制的に渡されたとある本。それは目の前に浮かぶ地球によく似た星そのものであり、これから歩む人生でもある。二人の未熟なカミサマに与えられた使命、それはその本を完成させる事。  誰の思惑なのか、何故選ばれたのか、それすらも分からず。  一人は自らの正しさを証明する為に。  一人は自らの人生を否定し自由に生きる為に。  ───これは、意図せず『カミサマ』の役目を負わされてしまった不完全な者達が、自ら傷付きながらも気付き立ち上がり、繰り返しては進んでいく天地創造の軌跡である。

遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。

かみゅG
ファンタジー
 ゴブリン。  オーガ。  オーク。  エルフ。  ドワーフ。  ファンタジーの住人達。  もし、彼らを創り出すことができるとしたら、どの種族がよいだろうか。  強さを求める者。  美しさを求める者。  様々だろう。  しかし、世界の役に立つという観点で考えた場合、答えは明確だ。  オークである。 「だから、創ってみた」 「なにしてくれちゃってんの、このアホーーーッ!!!」  教授と助手による、特に異世界に転移も転生もしない冒険が、今!始まる!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

処理中です...