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第一章 森の中のマンドラゴラ
004.なるほど?
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少女が目を覚ましたことに気付いた俺は、彼女に声をかけることにする。
「お、目が覚めたか」
「ひっ!」
しかし、俺が話しかけると、少女が耳を塞ぐ。
失礼な。
それじゃあ、まるで俺の話を聞きたくないみたいじゃないか。
だが、大声を出して、さっきのように気絶されても困る。
俺は不機嫌な雰囲気を醸し出しつつも、少女が落ち着くのを待つ。
すると、俺に大声を出すつもりがないのを察したのか、少女はそっと耳から手を離す。
「ちょっと、話を聞きたいんだが・・・」
「ひっ!」
耳から手を離したのを確認してから声をかけたというのに、俺が声をかけると少女は再び耳を塞ぐ。
失礼な反応に、むっとしてしまうが、それでも俺は根気よく少女が落ち着くのを待つ。
いきなり本題に入ろうとしたのがまずかったのかも知れない。
まずは少女を気遣う態度を見せることにしよう。
耳から手が離れたタイミングで声をかける。
「驚かせて悪かったな。体調は・・・」
「ひっ!」
少女は再び耳を塞ぐ。
まるで、俺が声をかけることに怯えているようだ。
いいかげん、イライラしてきた。
しかし、また気絶されても面倒だ。
我慢する。
少女もこのままではいけないということは分かっているのだろう。
耳からそっと手を離そうとして、
「えっと・・・」
「ひっ!」
再び耳を塞いだ。
ぶちっと切れそうになるが、こうも過剰反応されると逆に気になった。
少女は俺の声を耳に入れるのを怖れているようだ。
理由を考えてみる。
少女は俺を見て、なんと言っただろうか。
マンドラゴラ。
そう言わなかっただろうか。
その単語には心当たりがある。
確か魔法モノのフィクションに出てくる植物だったと思う。
魔法薬の材料になるのが定番だ。
・・・植物?
俺には自分が人間だという認識がある。
けど、目に見える手足や胴体は、どう見ても自分が人間でないことを示している。
認めたくは無いが、植物と言われて納得してしまう見た目だ。
では、仮に自分が何らかの理由で植物になったとしよう。
なぜ少女は俺を怖れるのだろうか。
マンドラゴラというものについて、もう少し詳しく思い出してみる。
確か根っこを引っこ抜くと叫び声を上げ、それを聞くと気が狂うか命を落とすのだったろうか。
だから、収穫の際は紐で結んで犬に引っ張らせるのだったと思う。
しかし、周囲を見ても犬はいない。
ということは、少女が俺を引っこ抜いたということだ。
「ふむ」
「ひっ!」
少女が俺の声を聞くのを怖れている理由が分かった。
いや、正直、納得はしていないのだが、状況証拠がそれが事実だと告げている。
つまり、俺はマンドラゴラで、俺の叫び声を聞くと気が狂うか命を落とすから、少女は俺の声を聞こうとしないのだ。
「うーん」
「ひっ!」
これではコミュニケーションが取れないな。
しかし、方法が無いわけではない。
少女は頑なに俺の声を聞こうとしないが、逃げだそうとはしないのだ。
おそらく、俺は収穫物で、少女は収穫物を持ち帰ろうとしているのだろう。
収穫物扱いされることに身の危険を感じないでもないが、今のところ話が通じるのはこの少女だけだ。
人里に着くまで、なんとかこの少女について行きたい。
さて、どうするか。
「筆談かな」
「ひっ!」
声によるコミュニケーションが取れないなら、それ以外の手段でコミュニケーションを取るしかない。
すぐに思いつくのは文字による意思疎通だ。
ものは試しと、俺は地面に文字を書く。
『大声は出さない。話をしてくれないだろうか?』
「・・・・・?」
少女は耳は塞いでいるが、目は塞いでいない。
そうっと近づいて、俺が地面に書いた文字を読む。
「まさか、マンドラゴラが文字を?」
少女の顔が驚きに変わる。
植物が文字を書けば驚きもするか。
けど、伝えたいことは、これで終わりじゃない。
俺は続けて地面に文字を書いていく。
『聞くと気が狂ったり命を落としたりするという言い伝えは、抜いた瞬間の叫び声だろう。俺はすでに抜かれた状態だから、俺の声を聞いてもそんなことにはならない』
「なるほど?」
特に根拠の無い理屈だったのだが、半信半疑ながらも少女は納得したようだった。
少女はそっと耳から手を離した。
「お、目が覚めたか」
「ひっ!」
しかし、俺が話しかけると、少女が耳を塞ぐ。
失礼な。
それじゃあ、まるで俺の話を聞きたくないみたいじゃないか。
だが、大声を出して、さっきのように気絶されても困る。
俺は不機嫌な雰囲気を醸し出しつつも、少女が落ち着くのを待つ。
すると、俺に大声を出すつもりがないのを察したのか、少女はそっと耳から手を離す。
「ちょっと、話を聞きたいんだが・・・」
「ひっ!」
耳から手を離したのを確認してから声をかけたというのに、俺が声をかけると少女は再び耳を塞ぐ。
失礼な反応に、むっとしてしまうが、それでも俺は根気よく少女が落ち着くのを待つ。
いきなり本題に入ろうとしたのがまずかったのかも知れない。
まずは少女を気遣う態度を見せることにしよう。
耳から手が離れたタイミングで声をかける。
「驚かせて悪かったな。体調は・・・」
「ひっ!」
少女は再び耳を塞ぐ。
まるで、俺が声をかけることに怯えているようだ。
いいかげん、イライラしてきた。
しかし、また気絶されても面倒だ。
我慢する。
少女もこのままではいけないということは分かっているのだろう。
耳からそっと手を離そうとして、
「えっと・・・」
「ひっ!」
再び耳を塞いだ。
ぶちっと切れそうになるが、こうも過剰反応されると逆に気になった。
少女は俺の声を耳に入れるのを怖れているようだ。
理由を考えてみる。
少女は俺を見て、なんと言っただろうか。
マンドラゴラ。
そう言わなかっただろうか。
その単語には心当たりがある。
確か魔法モノのフィクションに出てくる植物だったと思う。
魔法薬の材料になるのが定番だ。
・・・植物?
俺には自分が人間だという認識がある。
けど、目に見える手足や胴体は、どう見ても自分が人間でないことを示している。
認めたくは無いが、植物と言われて納得してしまう見た目だ。
では、仮に自分が何らかの理由で植物になったとしよう。
なぜ少女は俺を怖れるのだろうか。
マンドラゴラというものについて、もう少し詳しく思い出してみる。
確か根っこを引っこ抜くと叫び声を上げ、それを聞くと気が狂うか命を落とすのだったろうか。
だから、収穫の際は紐で結んで犬に引っ張らせるのだったと思う。
しかし、周囲を見ても犬はいない。
ということは、少女が俺を引っこ抜いたということだ。
「ふむ」
「ひっ!」
少女が俺の声を聞くのを怖れている理由が分かった。
いや、正直、納得はしていないのだが、状況証拠がそれが事実だと告げている。
つまり、俺はマンドラゴラで、俺の叫び声を聞くと気が狂うか命を落とすから、少女は俺の声を聞こうとしないのだ。
「うーん」
「ひっ!」
これではコミュニケーションが取れないな。
しかし、方法が無いわけではない。
少女は頑なに俺の声を聞こうとしないが、逃げだそうとはしないのだ。
おそらく、俺は収穫物で、少女は収穫物を持ち帰ろうとしているのだろう。
収穫物扱いされることに身の危険を感じないでもないが、今のところ話が通じるのはこの少女だけだ。
人里に着くまで、なんとかこの少女について行きたい。
さて、どうするか。
「筆談かな」
「ひっ!」
声によるコミュニケーションが取れないなら、それ以外の手段でコミュニケーションを取るしかない。
すぐに思いつくのは文字による意思疎通だ。
ものは試しと、俺は地面に文字を書く。
『大声は出さない。話をしてくれないだろうか?』
「・・・・・?」
少女は耳は塞いでいるが、目は塞いでいない。
そうっと近づいて、俺が地面に書いた文字を読む。
「まさか、マンドラゴラが文字を?」
少女の顔が驚きに変わる。
植物が文字を書けば驚きもするか。
けど、伝えたいことは、これで終わりじゃない。
俺は続けて地面に文字を書いていく。
『聞くと気が狂ったり命を落としたりするという言い伝えは、抜いた瞬間の叫び声だろう。俺はすでに抜かれた状態だから、俺の声を聞いてもそんなことにはならない』
「なるほど?」
特に根拠の無い理屈だったのだが、半信半疑ながらも少女は納得したようだった。
少女はそっと耳から手を離した。
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