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児童虐待のススメ

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 今日のお客様は男性と女性の二人組です。
 席の横にベビーカーを置いていますから夫婦なのでしょう。
 ベビーカーには可愛い赤ちゃんも乗っています。
 男性はコーヒー、女性は烏龍茶を飲んでいます。
 今日はこの二人の会話に耳を傾けてみましょう。

「この子を英会話教室に通わせようと思うの」
「まだ早いんじゃないかな?」
「何を言っているの。小さい頃から英語に慣れさせた方がいいのよ」

 女性はお子さんにしっかりした教育を受けさせたいようです。
 それに対して男性は、反対はしていませんが、消極的なようです。

「この子にフィギュアスケートを習わせようと思うの」
「転んだら危ないよ。もう少し大きくなってからの方がいいんじゃないかな?」
「何を言っているの。小さい頃から練習しないと一流にはなれないのよ」

 女性はお子さんを文武両道に育てたいようです。
 それに対して男性は、やはり賛成はしませんが、消極的なようです。

「この子にピアノを習わせようと思うの」
「指が鍵盤に届かないよ。それにピアノは値段が高いし、置くのに場所も取るよ。
 音楽教室で歌を習わせるくらいでいいんじゃないかな?」
「何を言っているの。そんなのじゃ、本物の感性は身に着かないわ」

 女性は教育に熱心なようです。
 お子さんに、勉強と運動の他にも、芸術の感性を身に付けさせたいようです。
 それに対して男性は、消極的に反対して、代替案を提案しています。
 けれど、女性は頑なにお子さんに教育を受けさせようとしています。

「この子には伸び伸び育って欲しいんだけどな。友達もたくさん作って欲しいしね」
「友達なんか大人になってからでも作れるわ。
 でも、教育は小さい頃から受けていないと、すぐに他の子と差がついてしまうわ。
 しっかりした教育を受けさせないというのは虐待よ」
「僕はそんなつもりはないよ。でも、本人が習いたいって言ったわけじゃないよね」
「そんなつもりはなくても虐待なのよ。
 子供は自分で判断できないんだから、親が教育を受けさせてあげないといけないわ。
 子供だって大人になったら、きっと親に感謝するわ」
「僕も教育は大切だと思っているよ」
「そう。なら、よかったわ」

 男性はコーヒーを飲みます。
 女性は烏龍茶を飲みます。

「ところで、」

 飲み物を飲んで一息ついたところで、今度は男性から女性に話しかけます。

「子供に寝る暇を与えず、友達を作ることも許さない親って、どう思う?」
「そんなの虐待だわ。そんなことをする人に親の資格はないわ」
「そうだね」

 男性はコーヒーにミルクと砂糖を足して、スプーンでかき混ぜます。
 女性は烏龍茶を飲みます。

「なに?あなたの知り合いにそんなことをする人がいるの?」

 女性が男性に質問します。
 それに対して、男性が女性に答えます。

「うん、まあね」

 女性は男性の答えを聞いて怒った表情になります。

「子供に虐待をするような人と付き合うのは止めた方がいいわよ」
「いや、虐待ってほどではないよ」
「子供を健全に育てないなんて虐待よ」
「そうだね」

 男性はミルクと砂糖を足したコーヒーを飲みます。
 女性は烏龍茶を飲みます。

「ちょっとお化粧を直してくるわ」
「どうぞ」

 女性が席を立ちます。
 先ほどから飲み物を飲み続けていたので、トイレに行きたくなったのでしょうか。

「・・・はぁ」

 女性の姿が見えなくなってから、男性が溜息をつきます。
 そして、ベビーカーに乗せている赤ちゃんの頭を撫でます。

「頑張って育ってくれよ。大人になったら、きっといいことがあるからな」

 男性が慈愛に満ちた顔で赤ちゃんの頭を撫でます。

「いいことがある・・・らしいからな」

 男性が哀愁の漂う顔で赤ちゃんの頭を撫でます。
 しばらくすると、女性が戻ってきました。

「ねえ、わたし考えたのだけど、」

 戻ってくるなり、女性が男性に話しかけます。
 よいことを思い付いたと言いたげな、とてもよい笑顔です。

「あなた、この子に友達をたくさん作って欲しいって言っていたわよね」
「ああ、言ったね」
「この近くに、コミュニケーション能力を開発する教室があったのを思い出したの。
 これから行ってみない?」

 それを聞いて、男性は首を横に振ります。

「今日は暑いし、あまり長時間、この子を外で連れ回さない方がいいんじゃないかな」
「でも、能力開発はできるだけ早く始めた方がいいって聞くわ。行きましょうよ」

 どうやらこのご夫婦は、お子さんの教育方針に違いがあるようです。
 二人ともお子さんを大切に思っているようなのに不思議です。
 でも、こんなに愛されているのですから、お子さんには幸せに育って欲しいものです。

「お会計お願いします」
「ありがとうございました」

 今日はとても興味深い話を聞くことができました。
 明日はどんな話を聞くことができるでしょうか。
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