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「そういえばもう進路は決めたの?」
先輩が私に尋ねてきました。
私はすでに三年生です。
当然進路は決まっています。
むしろ入学当初から決まっています。
「お兄ちゃんと同じ大学へ行きます」
彼が受験する大学は両親から情報を得ています。
本命から滑り止めまで把握済みです。
そして私はそれらの大学に全てA判定が出ています。
彼がどこへ行こうと付いていくことができます。
「……ふーん……」
私の答えを聞いて先輩は微妙な反応を返してきました。
特に驚きはしません。
特に喜びもしません。
喜怒哀楽のどの表情もありません。
でもそれも当然のことです。
先輩は大学へ通っていません。
自分で会社を立ち上げて経営しています。
社長さんです。
だから私と先輩が同じ大学に通うことはありません。
最初からありえません。
後輩が同じ大学を選んで喜ぶことも違う大学を選んで悲しむこともありません。
ただ私が進路として大学を選んだという事実だけがあります。
そもそも先輩はなぜ私の進路を聞いてきたのでしょうか。
ただの興味本位でしょうか。
あるいは私の進路を心配してくれたのでしょうか。
どちらにしろその程度のことだと思います。
だから先輩の反応は微妙でしたが無難でもあります。
そして雑談と考えれば無難な話題でもあります。
でもそれほど広がる話題ではありません。
だからその話題はそれで終了しました。
「受験頑張ってね」
「ありがとうございます」
最後に先輩は私を激励してくれました。
それから先輩はいつものように過ごしていつものように帰っていきました。
そして卒業するまで私は似たような毎日を繰り返しました。
イベントといえば大学の入学試験を受けたことくらいでしょうか。
その日私は少しだけ期待していました。
偶然彼に会えることを期待していました。
でも会うことはできませんでした。
不思議なことではありません。
受験生は大勢います。
だから知り合いがいても気付かないことはありえます。
私と彼は赤い糸で結ばれているのでもしかしたらと思ったのですがダメでした。
でもいいのです。
大学に入学したらいくらでも会うことができます。
それまで楽しみはとっておくことにします。
それに受験生はナイーブなのです。
私と会ったことで彼が喜びのあまり集中力を欠いてはいけません。
だから我慢しました。
我慢できました。
大学に入学したら会うことができるのは確実なので我慢することができました。
受験が終わった後から私はカウントダウンを始めました。
もちろん彼と再会するまでのカウントダウンです。
受験が終わった後から私の頭の中にはカウントの数字しかありませんでした。
常に秒数をカウントダウンしなければならないので当然です。
記憶に残っているのは卒業式の日に赤百合の会のメンバーが私との別れを惜しんでくれたことくらいです。
赤百合の会のメンバーは卒業式の日に花束をくれました。
赤百合の会のメンバーは卒業式の日に別れを惜しんで泣いてくれました。
赤百合の会のメンバーは在学中に私の役に立ってくれました。
赤百合の会のメンバーに対して私は感謝の気持ちを持っています。
彼女達が血を飲ませてくれたから私は彼と結婚することができます。
血を飲むことで私の血が置き換わったので私は彼と結婚することができます。
血が置き換わって血の繋がりが無くなったので私は彼と結婚することができます。
だから私は彼女達に感謝しています。
赤百合の会のメンバーは卒業後に先輩の会社にお世話になる人が多いそうです。
お客としてお世話になる人もいれば就職してお世話になる人もいます。
卒業後も彼女達との縁は切れそうにありません。
喜ばしいことです。
血が足りなくなったら彼女達に分けてもらうことができます。
彼女達が困っていたら私も助けてあげようと思います。
私と彼女達はギブアンドテイクの関係です。
ウィンウィンの関係です。
そんな感じで高校時代の友人達に感謝しながら私は卒業しました。
高校の敷地から出るのは三年ぶりです。
高校は山の上に建っています。
山を下りて実家へ帰るまでの道のりは長いです。
ですが苦にはなりません。
なにしろ実家には彼がいます。
実家に帰れば彼との生活が待っています。
それを考えれば苦になるはずがありません。
「卒業おめでとう」
それに徒歩で歩いたり公共交通機関を乗り継いだりする必要はありませんでした。
卒業式の日に先輩が車で迎えにきてくれたからです。
高級そうな車でした。
送ってくれるという先輩の言葉に甘えて私はその車に乗り込みました。
先輩が私に尋ねてきました。
私はすでに三年生です。
当然進路は決まっています。
むしろ入学当初から決まっています。
「お兄ちゃんと同じ大学へ行きます」
彼が受験する大学は両親から情報を得ています。
本命から滑り止めまで把握済みです。
そして私はそれらの大学に全てA判定が出ています。
彼がどこへ行こうと付いていくことができます。
「……ふーん……」
私の答えを聞いて先輩は微妙な反応を返してきました。
特に驚きはしません。
特に喜びもしません。
喜怒哀楽のどの表情もありません。
でもそれも当然のことです。
先輩は大学へ通っていません。
自分で会社を立ち上げて経営しています。
社長さんです。
だから私と先輩が同じ大学に通うことはありません。
最初からありえません。
後輩が同じ大学を選んで喜ぶことも違う大学を選んで悲しむこともありません。
ただ私が進路として大学を選んだという事実だけがあります。
そもそも先輩はなぜ私の進路を聞いてきたのでしょうか。
ただの興味本位でしょうか。
あるいは私の進路を心配してくれたのでしょうか。
どちらにしろその程度のことだと思います。
だから先輩の反応は微妙でしたが無難でもあります。
そして雑談と考えれば無難な話題でもあります。
でもそれほど広がる話題ではありません。
だからその話題はそれで終了しました。
「受験頑張ってね」
「ありがとうございます」
最後に先輩は私を激励してくれました。
それから先輩はいつものように過ごしていつものように帰っていきました。
そして卒業するまで私は似たような毎日を繰り返しました。
イベントといえば大学の入学試験を受けたことくらいでしょうか。
その日私は少しだけ期待していました。
偶然彼に会えることを期待していました。
でも会うことはできませんでした。
不思議なことではありません。
受験生は大勢います。
だから知り合いがいても気付かないことはありえます。
私と彼は赤い糸で結ばれているのでもしかしたらと思ったのですがダメでした。
でもいいのです。
大学に入学したらいくらでも会うことができます。
それまで楽しみはとっておくことにします。
それに受験生はナイーブなのです。
私と会ったことで彼が喜びのあまり集中力を欠いてはいけません。
だから我慢しました。
我慢できました。
大学に入学したら会うことができるのは確実なので我慢することができました。
受験が終わった後から私はカウントダウンを始めました。
もちろん彼と再会するまでのカウントダウンです。
受験が終わった後から私の頭の中にはカウントの数字しかありませんでした。
常に秒数をカウントダウンしなければならないので当然です。
記憶に残っているのは卒業式の日に赤百合の会のメンバーが私との別れを惜しんでくれたことくらいです。
赤百合の会のメンバーは卒業式の日に花束をくれました。
赤百合の会のメンバーは卒業式の日に別れを惜しんで泣いてくれました。
赤百合の会のメンバーは在学中に私の役に立ってくれました。
赤百合の会のメンバーに対して私は感謝の気持ちを持っています。
彼女達が血を飲ませてくれたから私は彼と結婚することができます。
血を飲むことで私の血が置き換わったので私は彼と結婚することができます。
血が置き換わって血の繋がりが無くなったので私は彼と結婚することができます。
だから私は彼女達に感謝しています。
赤百合の会のメンバーは卒業後に先輩の会社にお世話になる人が多いそうです。
お客としてお世話になる人もいれば就職してお世話になる人もいます。
卒業後も彼女達との縁は切れそうにありません。
喜ばしいことです。
血が足りなくなったら彼女達に分けてもらうことができます。
彼女達が困っていたら私も助けてあげようと思います。
私と彼女達はギブアンドテイクの関係です。
ウィンウィンの関係です。
そんな感じで高校時代の友人達に感謝しながら私は卒業しました。
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ですが苦にはなりません。
なにしろ実家には彼がいます。
実家に帰れば彼との生活が待っています。
それを考えれば苦になるはずがありません。
「卒業おめでとう」
それに徒歩で歩いたり公共交通機関を乗り継いだりする必要はありませんでした。
卒業式の日に先輩が車で迎えにきてくれたからです。
高級そうな車でした。
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