わたしの中のノイズ～ある少女の欠落～

第三章 非日常生活

同居人（陸）

「教えてくれて、■■■■■」

　わたしは、おかあさんにお礼を言って、自分の部屋に戻る。

「お■■ちゃん、拗ねちゃったのかな？」

　話の後半はほとんど聞き取ることができなかった。
　でもそれは、ノイズが入る単語が多かったというだけじゃない。
　明らかに、ノイズが入る単語が増えていった。

　わたしがお願いして聞かせてもらった話なのだから、わたしが聞くことを拒絶することはない。
　わたしではない誰かが聞くことを拒絶しているのだ。
　そして、その誰かは、わたしの中にいる。

「お■■ちゃん……」

　このノイズが、お■■ちゃんがいる証なのだとしたら、それを否定することは、お■■ちゃんを否定することになってしまうのだろうか。
　わたしは、お■■ちゃんの存在を否定するつもりはない。
　でも、お■■ちゃんは、わたしの存在を受け入れてくれるだろうか。

　…………

　受け入れてくれていないのだと思う。
　それがノイズとなって表れている。
　わたしとお■■ちゃんで受ける印象が違う単語にズレが生じているのだ。

「どうしたら、いいのかな」

　原因はわかった。
　でも、解決方法がわからない。

「みんなに相談してみようかな」

　オカルト研究部の部長さんと副部長さん。
　そして、イトウさん。
　わたしのノイズについて、協力してくれると言ってくれた人達。
　わたしの脳裏には、その人達の顔が浮かんでいた。

　…………

　いつもと同じ朝。
　いつもと同じように学校へ向かう。
　でも、今日はいつもと少し違った。

「■■■■■、■■■■」
「イトウさん、■■■■」

　挨拶をしてきたイトウさんに、挨拶を返す。

「■■■、■■■■■」
「…………」
「■■■■■？」
「（にこっ）」

　返事をしないわたしに、イトウさんが尋ねてくる。
　わたしはそれに笑顔で答える。

「■■■？」
「（にこっ）」

　わたしは再び笑顔で答える。

「■■■■■■、■■■■■■■■■■」

　イトウさんのお喋りを聞きながら、学校へ向かう。

「■■■■■■■■■■■■■■■■」
「…………」

　お■■ちゃん、そろそろ機嫌を直してくれないだろうか。