わたしの中のノイズ~ある少女の欠落~

かみゅG

文字の大きさ
上 下
59 / 77
第三章 非日常生活

合宿(参)

しおりを挟む
 パソコンの画面に映っていたのは、旅行サイトなどではなく地図だった。
 いや、地図というより、上空から地上を撮影した写真だった。
 G〇〇gle Earthと呼ばれるものだと思う。

「? 宿や観光スポットを紹介するサイトじゃなさそうですけど……」

 イトウさんが地図を見ながらコメントする。
 普通は合宿の行き先を探すとしたら、そういったものだろう。
 だけど、この部は普通じゃなかった。

「そういったところは、部長が満足しないからね」
「無論だ」

 イトウさんのコメントに、副部長さんが返事をし、さらに部長さんが頷く。

「目的地までのルートが示されているような場所を探検しても面白くないからな」

 秘境を探検するなら、そうだと思う。
 でも、それは合宿という範疇に収まるのだろうか。
 具体的にいうと、ゴールデンウィークの期間中に探検し終わるのか心配だ。
 そんな不安が顔に出ていたのか、副部長さんが補足をする。

「といっても、オカルトっぽい噂を探して、それらしい場所を地図で目星をつけたんだけどね。近くに宿をとって、日帰りで行ける距離かな」

 なるほど。
 たまにテレビで紹介されている秘境の温泉なんかも、山奥などを歩いてはいるけど、せいぜい数時間で行ける距離だ。
 そういった場所なのだろう。

「むぅ。少し物足りないが、今回は新入部員の体験も兼ねているから、初心者用のところで妥協しよう」

 副部長さんの補足に部長さんは少し不満そうだ。
 いったい、どんな秘境を期待していたのだろう。
 何十日も彷徨うような場所は、さすがについていける自信がない。
 というか、そんな場所に行ったら、学校を休学することになりそうだ。

「なんだか、富士の樹海みたいな場所ですけど、大丈夫ですか?」

 地図を見ていたイトウさんが質問する。
 確かに、地図は山奥のような場所で、そこにぽつんと少しだけ開けた場所が映っているだけだ。
 迷い込んだら出てこれないような雰囲気がある。
 イトウさんが不安になるのも分かる。

「心配無用だ。富士の樹海だって、現地の人間は平気で足を踏み入れるしな」
「それって、現地の人じゃないと迷うってことですよね。全然、安心できないんですけど」

 部長さんが自信満々に言った言葉は、イトウさんの不安を払拭することはできなかったようだ。
 フォローするように副部長さんが言葉を続ける。

「目的地の座標は分かっているし、当日はGPSを持っていくよ」
「それなら大丈夫……かな」

 副部長さんの説明にイトウさんは一応納得したようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

【1】胃の中の君彦【完結】

ホズミロザスケ
ライト文芸
喜志芸術大学・文芸学科一回生の神楽小路君彦は、教室に忘れた筆箱を渡されたのをきっかけに、同じ学科の同級生、佐野真綾に出会う。 ある日、人と関わることを嫌う神楽小路に、佐野は一緒に課題制作をしようと持ちかける。最初は断るも、しつこく誘ってくる佐野に折れた神楽小路は彼女と一緒に食堂のメニュー調査を始める。 佐野や同級生との交流を通じ、閉鎖的だった神楽小路の日常は少しずつ変わっていく。 「いずれ、キミに繋がる物語」シリーズ一作目。 ※完結済。全三十六話。(トラブルがあり、完結後に編集し直しましたため、他サイトより話数は少なくなってますが、内容量は同じです) ※当作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも同時掲載しております。(過去に「エブリスタ」「貸し本棚」にも掲載)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~

Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。 おいしいご飯がたくさん出てきます。 いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。 助けられたり、恋をしたり。 愛とやさしさののあふれるお話です。 なろうにも投降中

ぼくたちのたぬきち物語

アポロ
ライト文芸
一章にエピソード①〜⑩をまとめました。大人のための童話風ライト文芸として書きましたが、小学生でも読めます。 どの章から読みはじめても大丈夫です。 挿絵はアポロの友人・絵描きのひろ生さん提供。 アポロとたぬきちの見守り隊長、いつもありがとう。 初稿はnoteにて2021年夏〜22年冬、「こたぬきたぬきち、町へゆく」のタイトルで連載していました。 この思い入れのある作品を、全編加筆修正してアルファポリスに投稿します。 🍀一章│①〜⑩のあらすじ🍀 たぬきちは、化け狸の子です。 生まれてはじめて変化の術に成功し、ちょっとおしゃれなかわいい少年にうまく化けました。やったね。 たぬきちは、人生ではじめて山から町へ行くのです。(はい、人生です) 現在行方不明の父さんたぬき・ぽんたから教えてもらった記憶を頼りに、憧れの町の「映画館」を目指します。 さて無事にたどり着けるかどうか。 旅にハプニングはつきものです。 少年たぬきちの小さな冒険を、ぜひ見守ってあげてください。 届けたいのは、ささやかな感動です。 心を込め込め書きました。 あなたにも、届け。

シムヌテイ骨董店

藤和
ライト文芸
とある骨董店と、そこに訪れる人々の話。 日常物の短編連作です。長編の箸休めにどうぞ。

処理中です...