わたしの中のノイズ~ある少女の欠落~

かみゅG

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第二章 日常生活

部活動(陸)

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 気絶したイトウさんは、とりあえず副部長さんに背負ってもらうことになった。
 ベッドで寝かせてあげたいけど、こんな夜に保健の先生がいるわけがない。
 だから、保健室は行き先から外す。
 そうなると、おのずと行き先は絞られてくる。
 具体的には、ソファのあるオカルト研究部の部室だ。
 ようするに、前回と一緒ということになる。

「重くないですか?」

 副部長さんに声をかける。
 前回は部室の前で気絶したけど、今回は音楽室の前だ。
 そして、音楽室からオカルト研究部の部室までは距離がある。
 つまり、副部長さんには、しんどい思いをしてもらうことになるのだ。
 わたしの問いかけに返事をしようと副部長さんが口を開きかけるけど、それより先に部長さんが声を出す。

「平気だよ。なにせ、役得があるからな」
「役得?」

 わたしが首を傾げると、部長さんがニマッとした顔になる。

「気絶している女子高生と合法的に密着する機会など、そうそうあるものではないからな。副部長、背中の感触はどうだ?」
「答えづらい質問をしないでください」

 部長さんに言われて気付く。
 現在、イトウさんの前面は、副部長さんの背面にくっついている。
 わかりやすい表現で言うと、おっぱいが背中にくっついている。

「…………」

 なんとなく、横に回って接している面を観察する。
 むにっとした感じで、イトウさんの胸が形を変えているのが、服の上からでもわかる。

「…………」

 なんとなく、視線を自分の胸元に下ろす。
 足元がよく見える。
 視界が遮られてつまづくことは無さそうだ。

「……重いですよね。代わります」

 つまづくことは無さそうなので、副部長さんにそう提案する。

「誤解だよ!?」

 すると、副部長さんは、なぜか焦った顔になって提案を拒絶してきた。
 おかしいな。
 拒絶する理由なんて無いはずなのに。

「誤解するようなことが何かありましたか? わたしは副部長さんが重そうだと思っただけで、何も誤解するようなことはないと思います。だから、代わります」

 わたしはもう一度提案する。
 けれど、副部長さんは提案を受け入れてくれない。

「部長がアホなことを言うから誤解されたじゃないですか! フォローしてくださいよ! ■■■■子に気絶した人間を背負わせるわけにいかないでしょう!」
「むっ! 私はアホなことを言った覚えはないが?」
「わたしも誤解をしているつもりはありませんけど?」
「ああ、もう!」

 結局、オカルト研究部の部室に着くまで、副部長さんはイトウさんを背負ったままだった。
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