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29話 ワシに考えがある‥‥‥

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※前回のあらすじ※
オヤカタの居場所が分かったショウタ。オヤカタは、現在地より西に100キロ離れた「カステルム」という城の牢屋にいるらしい。牢屋の外には、重装備のゴブリンが見える。その話を聞いたアルジイは、カステルムで起きた奇妙な事件を思い出した。一年程前にカステルム近郊の森で起きた狩人失踪事件だ。狩人を探しに出た冒険者達は狩人を見つけられず戻ってきた。冒険者は心神喪失の状態で震えながら「ゴブリンにやられた……」とだけ発したと言う。その後第二陣の捜索隊が、行方不明だった狩人を見つけて戻ってきたのだ。
クルスは、その話を聞いても緊張感が無い様子だ。頭の中は、「リンドブルムを解体し素材を売り捌く事」この一点にしか興味が無いようだ。
その様子を見ていたアルジイは心配になり、二人に着いて行く事にした。

そして、三人はオヤカタを探しに「カステルム」へと向かったのであった。

――カステルム――近郊の森

城壁に囲まれた街が見える。城塞都市だ。
城壁の上にはゴブリンが沢山見える……
色んな色をしたゴブリンがいるようだ。

双眼鏡でその様子を見るショウタ。
双眼鏡はアルジイに貸してもらった。
「…………うわぁ……ゴブリンだらけですよ……なんでこんなにいるんですか?」

「ワシにも見せろ!!」
クルスは、双眼鏡を奪った。

「あ!……ちょっと!……」

「……………………ほんとじゃな……気持ち悪いぐらいの群れじゃな……」
クルスは双眼鏡を見ながら言った。

三人は今、カステルム近郊の森の中にいる。
身を隠すには、ちょうど良い場所だ。

カステルムにそろそろ着きそうとなった時「少し街の様子を見てからにしよう」とアルジイが言い、急遽森の中からカステルムの城壁を見ていたのだ。

すると……ゴブリンが沢山いた。という訳だ。

「…………この様子じゃ、街はゴブリン共に占拠されているだろう……さて、どうやって入るかな……」
アルジイは、いつものように顎髭を触って考えている。

「フンッ!!そんなもん!正面突破に決まっておろう!!!ワシの極大魔法で城壁をぶっ壊し、街に入ったらゴブリン共を蹂躙してやるわ!!なーんて素晴らしいアイデアじゃ!!ワッハッハーー!!!」
クルスはバカみたいに大声で笑っている。

「ちょっと!!クルスさん!!!声がデカいですよ!ゴブリン達に気付かれたらどうするんですか!!しゃがんで!しゃがんで!!!」
ショウタはクルスに座るようジェスチャーで伝える。

「フンッ!!ゴブリンなんぞザコにビビりおって!!このチキン野郎!!全く……情け無い!」
クルスはショウタを罵る。

「はいはい…………いいから座って下さい。どちらにせよ、クルスさんの作戦だとオヤカタさんを無傷で助けるのは難しくなりますよ?間違えてオヤカタさんがいる牢屋を壊しちゃったらどうするんですか?」
クルスをチラッと見るショウタ。

「そうじゃぞクルスよ!そんな無謀な作戦じゃ街の被害が増えるだけじゃ……しかもこの様子じゃゴブリンが街を占拠して罪の無い人々が捕らわれているかもしれないんじゃからな!!」
アルジイがクルスを諌める。

「…………う……うぐぐ……」
アルジイに言われ返す言葉が無いクルス。アルジイが言ったような可能性は考えて無かったようだ。

「うーむ…………それにしても……どうなっとるんじゃ全く……予想以上に面倒な状況じゃ……カステルムのギルドは、何をやってるんじゃ!!」
アルジイは小言を漏らす。

「じゃあどうするんじゃ!!アルジイよ!!何か良い案でもあるのか?!」
クルスは御立腹だ。

アルジイは顎髭を触りながら考えている………………

「………………そうじゃな…………ショウタくん。オヤカタの居場所を正確に調べられるか?」
アルジイはショウタに尋ねた。

「あっ…………はい…………少々お待ちを…………」
ショウタは念じ始めた。




「……………………はい。分かりました。街の東にある牢屋ですね。強そうな重装備のゴブリンが二体います。それ以外に周りにゴブリンは見えません。」
ショウタはオヤカタの現在地を伝えた。

「………………分かった。あそこじゃな……以前カステルムのお宝を盗むのに失敗して入れられた事がある。…………ワシに考えがある」
アルジイは、そう言うとニヤリと笑った。
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