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23話 「金を回収しに来たんじゃ!たわけ!!!」

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――エダニアダンジョン――

薄暗い洞窟だ…………
不気味さも相まってか、中は少し肌寒い。
暗く、光が差し込まないからだろうか……

ショウタは全身フルアーマーの完全防備だ。

二人は今、このダンジョンの中にいる。
キィー……キィー………………
不気味な鳴き声が聞こえてくる。

「なんか……想像以上に薄気味悪いですね…………進んでいくに連れて、どんどん暗くなるし…………怖い…………」
ショウタはクルスの服の端を掴み、ビクビクしながらゆっくりと進んでいる。

「離れろ!!!さっきからブツブツブツブツ気持ち悪いんじゃ!!!」
クルスがショウタを蹴り飛ばす。

「ウゲ………………酷い!!」
蹴り飛ばされたショウタは、起き上がりオネエ口調で話した。

「………………」
無視して進むクルス。

ふとショウタは思った。
あれ?ダンジョンに入ってから魔物に遭遇していないな……まぁ……たまたまか……

スタ…………
急に足を止めるクルス。

「ちょっと休憩するか!」
クルスが急に休憩を提案してきた。

驚くショウタ。
「えっ?早く行きましょうよ!!早いとこ回収して、こんな薄気味悪くてジメジメした場所なんて早く出ましょうよ…………」
ショウタはキョロキョロ、オドオドしながら周りを見渡す。

「社長命令だ!バカ!!!もう少し待つんじゃ!!それよりカス!!シンノスケ達は今どの辺じゃ?」
クルスは、そう言うと岩の上にドガっと座った。

「えっと……ちょっと待って下さい…………あっ……地下4階……です」
ショウタは

「4階か…………それじゃ30分休憩だ。私は少し寝る」
クルスはそう言うと指をパチンっと鳴らした。

すると次の瞬間…………
ボンッ!!!

突如、目の前に大きなテントが現れた。
驚くショウタを尻目にスタスタとテントの中に入っていくクルス。

テントの前で呆然と立ち尽くすショウタ。
「ほぇー…………」

「オイッ!!何してる!!お前も中に来い!!」

言われるがままテントに入ってみると、中は想像以上に広かった。家具やらベッドやら必要最低限の物が揃っている。
クルス曰く、これは魔道具らしい。
どうなっているか聞いてみたが、いまいちよく分からなかった。なんでも、テントの中には指定した者しか入る事が出来ず、外界からは隔絶した空間らしい。
クルスは、すごいアイテムだと言う事を熱弁した後、眠りについた。
この状況でよく眠れるなとも思ったが、逆らうと何をされるか分からない為、ひたすら起きるのを待った…………

――30分後――
「ふわぁ……良く寝た……」
眠そうにするクルス。

「早く行きますよ!!シンノスケ達は、まだダンジョンにいます!!今ちょうど最下層にいるみたいです!!急がないと逃げられちゃいますよ!!」
ショウタは焦っていた。
何故ならショウタ達がいるのは、地下3階だ。
シンノスケ達がいる最下層は地下5階にある。
クエストを達成して抜け道などで外に出られたら、ここまで来た意味が無くなる。
その為、少しでも早く出発したかったのだ。

「はいはい……眠…………」
ショウタの、そんな様子などお構い無しにダルそうに返事をするクルス。

すると……おもむろに指をパチンっと鳴らした。
パチン!!

「着いたぞ…………一番下だ」

……目の前の景色が変わった。
二人は一瞬にして移動したのだ。
驚くショウタ………………。
どうやら最下層にワープしたらしい。

「は?………………」
唖然とするショウタ。開いた口が塞がらないとは、まさにこの事を言うのだろう。

「説明は後だ……ほら!いたぞ~アイツら~」
クルスは、前方を指差して言った。

指を差している方を見てみると、シンノスケ達がいる!やっとだ!ここまで本当にめんどくさかった。

訳わかんない上司と行動を共にするのが、本当に疲れた。
さっ………早く回収してゆっくり休みたいー

そんな事を思いながら、シンノスケ達のいる場所へクルスと一緒に歩いていった。

すると………………

あれ?

なんだ!!あのでっかいの!!

シンノスケ達が、巨大な魔物に追い詰められているではないか……

「やっぱりな…………」
クルスは、この光景を見てニヤッと笑う。
なんか気持ち悪い。


シンノスケ達は今にも巨大な魔物に殺されそうだ。
魔物は今まさに大きな腕をシンノスケ達に振り下ろそうとしていた。

シャー!!!!

「キャーーーーー!!!シンノスケーーーッ!!」
シンノスケの仲間が叫んだ。
シンノスケは腰を抜かし動けないでいる。
死を覚悟して目を閉じる…………

「ッ…………………………」

ガキンッ!!

あれ…………死んでない?
ゆっくり目を開けるシンノスケ……

すると、目の前に少女が片手でモンスターの攻撃を止めている。

モンスターは苦悶の表情を浮かべる。
腕が全く動かないのだ。
目の前には、小さな少女がいるだけ。しかも片腕で止めれている。


「え??…………え?クルスさん?なんで?……」
シンノスケがクルスに気付く。
何故クルスがこんな所にいるのか分からず驚いている。
そりゃそうだ……

「金を回収しに来たんじゃ!たわけ!!!」
クルスは魔物の動きを止めながらシンノスケに怒っている。

いやいや!!
呑気にそんなこと言ってる場合じゃない!!!

シャーーーーーッ!!!
モンスターは、クルスを食べてしまおうと飲み込もうとする!!

「うるさい!!!叫ぶな!!」

ギャンッ!!!!

怪物の動きが止まり、ゆっくり倒れた!!
クルスがモンスターの腹に正拳突きを喰らわした様だ。

ドスンッーーーーーー!!!!

クルスは平然としている。手をぱっぱっと払う。

唖然とする一同。
「え?……………………」


「あんなに手も足も出なかったコカトリスを一撃で…………ウソ……」
シンノスケの仲間の女ファイターが呟く。
クルスがモンスターを一撃で倒した事に驚きを隠せないでいる。

すると……

「バカモン!!!コイツのどこがコカトリスなんじゃ!」
クルスがキレる。

「え?…………コカトリスじゃないの?」
女ファイターが尋ねる。

「コイツは『リンドブルム』という所謂ドラゴンじゃ……どこがどうなってコカトリスと勘違いされたのかは分からんが全然レベルが違う。コカトリスはBランクだが、リンドブルムはA +ランクじゃ。…………見たところお前らは、Cランクぐらいじゃろう?歯が立たないのは当たり前じゃ。文句はギルドに言うんだな……」
クルスは淡々と説明する。

「A +ランクだと?!………………勝てるわけないじゃないか?…………」
事実を知り驚くシンノスケ。

「……そりゃそうじゃ!お前らギルドのオッサンの話し適当に聞いてたじゃろ?」
クルスはシンノスケに尋ねる。

「ギルドのオッサン?………………あっ!あのダンジョンに行こうとする俺達を止めようとしてた人ですか?」
シンノスケは思い出したようだ。

「そうじゃ。年長者の助言は聞くべきじゃったな!あのオッサンは『巨大な蛇に羽根が生えている』と言っておった。コカトリスは巨大でも無いし、蛇の尻尾を持つニワトリってだけじゃ。確実にコカトリスでは無い事だけは分かった。まぁ、リンドブルムだとは思わなかったけどな。ワッハッハ」
クルスはゲラゲラ笑っている。

「……………………」
シンノスケは呆然としている。


「まぁ……どうでもいいけど、とっとと金を返せ!!」
クルスはペロペロキャンディーを食べながら金を要求する。

「……………………」
シンノスケは無言だ。

「おーーーい!!!」
反応が無いシンノスケに対し手を振っているクルス。

「あっ…………すみません………………今……ちょっと……お金が………………」
弱々しく言うシンノスケ。

「…………えっ?シンノスケ?早く払いなよ!」
シンノスケの仲間の女ファイターがシンノスケに尋ねる。

「い……いや…………じ……実は…………」
申し訳無さそうに経緯を説明するシンノスケ。
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