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13話 ちょ!ちょ!ちょ!ちょい待ちーーーー!!それはマズイでしょ?
しおりを挟む――辺境の村――
アンナは昨日貸した金貨200枚は、もう無いとのこと。
理由を聞くと、お金が無い理由を語ってくれた。
「…………実は………………ある人に騙されてしまったんです……」
そう弱々しく語るアンナ。
「誰に騙されたんじゃ?」
クルスが優しく尋ねる。
「はい……グレテンシュタイン伯爵です……」
……アンナは経緯を説明した。
※10話、11話参照
「それで?いつもの待ち合わせ場所に金貨210枚を置いたが、それから音沙汰が無いと?………………ハッ……バカじゃな、おぬし…………猿でも分かるわ、そんな詐欺!」
クルスは呆れている。
「ちょっと!クルスさん!言い過ぎですよ」
ショウタがクルスを諌める。
「は?カスは黙ってろ、このカス!!ペッ!!」
クルスはショウタの足元に向かってツバを吐いた。
「あーはいはい。カスじゃありませんよ。ショウタですよー。そろそろ覚えて下さいー」
ショウタはクルスの暴言に慣れてきたのか適当に返す。
「………………わたしがバカだったんです……うぐ……えぐ……」
アンナは、涙を流し、酷く落ち込んでいる。
「あの……一ついいですか?犯人が分かってるなら、グレテンシュタインさんの所に行って返して貰えばいいじゃないですか?」
話しを聞いていたショウタが提案した。
「そりゃそうじゃ!!」
クルスは納得した様子で手をポンッと叩く。
「…………はい……私もそう思って、騙されたと分かってからすぐにグレテンシュタインさんの屋敷に行きましたが、衛兵の人に『下民風情が何の用だ!ここはお前が来るところじゃない!!帰れ!!』と言われ、中に入れてくれませんでした。必死に経緯を説明して取り次いで貰おうとしましたが、取りつく島もありませんでした…………しばらく外で待っていましたが、衛兵の人に追い払われて、諦めて帰ってきました……わたし……もう、どうすれば良いか…………う……うぐ……えぐ…………ッえぐ」
アンナは泣きじゃくっている。
「そうだったんですか……うーん…………それはどうしようも無いですね……それにしても、その衛兵ちょっと酷いですね……何もそこまで言わなくても」
ショウタは、アンナに同情した。
自分も転生してから惨めな思いを沢山してきたから、気持ちは分かる。騙された方が悪いとはいえ、悔しかっただろうなと思った。
すると……
「ん?どうして泣いておる?そんなの簡単じゃろ。衛兵ぶっ殺して、屋敷粉々に破壊して、グレテンシュタインってやつを引きずり出して、街の真ん中に磔にして、わたしに逆らったらこうなるぞ!覚えておけ!ってやれば済む話しじゃろ?何を悩む事がある。こんなの常識じゃろ。猿でも分かるわ。アホらし……さっ!そのアホテンシュタインの家に行くぞ!」
クルスは、飴を舐めながら淡々と歩き出した。
「ちょ!ちょ!ちょ!ちょい待ちーー!それはマズいでしょ?何言ってんですか?ダメダメ!もう無茶苦茶のオンパレードですよ!!あなたの常識は世界の非常識なんですよ!それに!グレテンシュタインさんは伯爵なんですよ!!貴族ですよ!貴族!!確か貴族階級の人って、ただのお金持ちじゃないんですよね?国に対して偉大な貢献をした者に与えられた階級で、政府側の人達ですよ!!そんな事したらクルスさんだってタダじゃすみませんよ!!」
ショウタは、クルスがやろうとしている事を必死に止めようとする。
「は?ごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃうるさいのぅ!!!ん?今ごちゃごちゃ何回言った?」
クルスがショウタに尋ねる。
「エッ?ごちゃごちゃ…………うーん……3回です!!って違ーーーう!!!!何ふざけてるんですか?もうちょっと真面目に考えましょうよ」
ショウタは盛大にノリツッコミをする。
「…………ノリツッコミとかやるんじゃなお主……ふっ……」
クルスは、バカにした目でこちらを見て鼻で笑った。
「アンタが振ってきたんでしょーが!!!って何これ?何このやり取り……もう!!ちゃんと考えましょうよ!!金貨200枚ですよ!!回収出来なかったら大損ですよ!コレ!!」
ショウタは、ふざけているクルスに怒っている。
「はいはい……うるさいのぅ……ったく。冗談も通じないんじゃから…………大丈夫じゃ!!ワシの名前を出せば貴族でも中に入れてくれる筈じゃ!!」
クルスは胸を突き出し自信満々に言う。
「えっ?本当ですか?」
アンナが目を輝かせて反応した。
本当かよ?めちゃくちゃ怪しい。さっきまで衛兵ぶっ殺してとか言ってた人を貴族が家に入れる訳ないじゃ無いか!!ありえない!
「本当じゃ!本当じゃ!ワシを誰だと思ってるんじゃ!天下のプリティファイナンス社長!ペクニーアエ=コンメリクム=クルス様じゃぞ!!大舟に乗ったつもりでついてくるが良い!ワッハッハ!」
クルスはバカみたいにデカい声で笑っている。
「はい!!ありがとうございます!!」
アンナは手を合わせキラキラした目でクルスを見ていた。
「…………うーん……大舟?泥舟も泥舟だろ……不安しか無いわ……」
ショウタは小さな声でボソッと呟いた。
「ん?なんか言ったか?」
クルスが反応してショウタに聞く。
「い……いえ……何でもありません!」
何で聞こえてんだよ!
どんだけ地獄耳なんだよ!!
……ショウタは不安でいっぱいだったが、クルスの泥舟、いや大舟に乗ったつもりという言葉を信じ、グレテンシュタイン伯爵の屋敷へと向かったのであった。
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