最弱スキルと最強幼女の金融屋さん。異世界の方がトラブル続きで疲れます‥‥

冬来ノース

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6話 面接とか、面接とか、面接とか。

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―シスターセーラが帰ってから数分後―

「やぁ、待たせたの。…………えっと……名前なんだっけ?」
クルスはショウタに向かって話した。

「はい……トガシ ショウタです」

「ん?日本人か?転生者じゃな?」
クルスはショウタの名前に反応した。

「え?…………あっ……はい」
ん?日本人がどうしたんだ?

「ワシはプリティな10歳、名前はペクニーアエ・コンメリクム・クルスじゃ。クルスでいいぞ」
さっき聞いたよ。ナンチャラ……メリクムは覚えられないが、クルスっていう名前は覚えた。

「あっ……はい」

「今まで何の仕事してたんじゃ?」

「冒険者です…………」

「ランクは?」

「………………Gです……」

「へぇ~~……で?何でウチで働きたいんじゃ?わざわざウチで働くメリットもなかろう」


そんなの決まってる。
ここに来た理由なんてお金が欲しいからだ。
ただそれだけ。それにたまたまだ。たまたま貼り紙を見ただけ。ただそれだけ。深い意味は無い。金が貰えれば何でも良い。


「……そうですね。貧乏過ぎるんで、お金が欲しいからです。たまたま貼り紙を見て来ました。ただそれだけです。金融の仕事も特に興味はありません。お金がもらえればそれで良いです」
思った事を正直に伝えた。

「ほぉー……正直者じゃな……それじゃ家はどこじゃ?」

「家ですか?家はありません。スラム街で野宿しています」

「えっ?家ないのか?まぁ冒険者なら野宿もよくするが……冒険者ならギルド専用の借家が格安で借りれただろ?なんでまたスラム街なんかにいるんじゃ?」
不思議そうに尋ねるクルス。

「…………あー…………。あれはランクF以上じゃないと住めないらしいんです。俺はずっとGランクなんで借りられていません」

「あれ?そんなルールあったっけか……」
キョトンとするクルス。

「…………はい」

「…………そりゃ……可哀想にな。いつから冒険者やってんるんじゃ?」

「1年半ぐらい前からですかね」
なんかさっきから面接っていうか普通の会話してるだけの様な気がする。

「1年半前?!それでGランク?いくら何でもそりゃないじゃろ?普通はEランクぐらいじゃ!」

何なんだよ……さっきから……知らないよ俺だって。ギルドに言えよ。それにしてもやたら冒険者について聞いてくるな。

「はあ……そうなんですか」
ショウタは適当に答えた。

「そうじゃよ!そう言えばおぬしのスキルは何じゃ?」

「えっ?…………えっと……名前なんだっけ…………あっ『千里眼』だ。何か迷子とか見つけられるだけの使えないスキルですよ……」

バンッ!!
ショウタがスキルの名前を口にした途端クルスが机を勢いよく叩く。

「えっ!びっくりした……何なんですかいきなり」

「お前さん……今何て言ったんじゃ?」
クルスは驚いている。

「えっ?……『えっ!びっくりした……何なんですかいきなり』ですよ」

「違う!!バカ!!!その前に言ってたスキルの名前じゃ!」

「えっ……あッ……そっち?……だから『千里眼』ですよ」

クルスは驚いた表情で静かに語り始めた。
「…………驚いた…………お前の持つスキル『千里眼』は全てを見通す力があると言われる伝説のスキルなのじゃ。遥か昔パラディソスに突如現れた魔王を倒した勇者一行。その仲間の賢者が持っていたとされるスキルが『千里眼』じゃ。賢者達はそのスキルを使い、魔王の弱点を見破り見事、魔王を打ち滅ぼしたらしい。ワシも詳しい事は知らんがそのように伝承が残っている………………しかも、その賢者もお前さんと同じ日本人だったらしいのじゃ…………そのスキルを授かった者は世界を救う運命にあるらしい。まさか……こんな所で会えるとは…………」
クルスは驚いた顔で静かに座った……

「えっ………………嘘でしょ??信じられない……俺が伝説の賢者……」
ショウタは驚いている。
まさか自分が伝説の賢者だったなんて…………
そういえば女神もレアなスキルだっって言ってたぞ!!今まで極貧生活を耐えていたのはこういう事だったのか。いきなり賢者になるのでは無く苦労した者こそ賢者になる運命だったんだ。

すると………………
クルスの様子がどうも変だ。



「プッ………………ププ……プワッハッハッハ…………あー腹痛い……『俺が……伝説の……』だって……ハッハッハッ…………」
クルスが床に転げ回って笑っている。

「えっ…………どうしたんですか?………………」
急に笑い出したぞ。どうしたんだ。


「………………ウソじゃよ……今のウソ」
クルスは鼻をほじっている。ほーじほーじ。

「えっ?…………え?……………………はぁ?!」

「だから……ウソ!ウソなの!!こんな平和な世の中に勇者とか魔王とかそんなヤツらいる訳なかろう。そんなのおとぎ話の中だけの存在じゃ!!残念じゃったな!」
鼻をほじりながら話すクルス。

「…………えっ……だって……そんな……」
言葉を失うショウタ。
ウソだと?…


ショウタは、激しく落ち込んだ。そりゃそうだ。
やっと自分が認められたと思ったんだから……
それは、ショウタが一番望んでいた「希望」だった。
しかし、嘘と言われ一瞬にして希望は「絶望」に変わった。
ショウタにとっては耐え難い冗談だった。

肩を落とした…………

「おいおい……そんな落ち込む事ないじゃろ?大げさな……悪かったよ……飴あげるからさ……ホラ」
さっきクルスが舐めていた汚いペロペロキャンディーを差し出してきた。

「………………」
ショウタはショックで呆然としている。
クルスの声が聞こえていない様だ。

その様子を見ていたクルスが口を開いた。

「……?これで分かったじゃろ?世の中そんなに甘くないんじゃ。転生して自分だけが特別な存在にでもなったつもりか?努力もしないクズはいつまで経っても何も得られないんだよ。分かったら帰りな」
キャンディーを舐めながら話す。

は??はあーー!?
そこまで言う必要あるか?!

クソがッ!!人の事コケにしやがって!!!
クルスが放ったスピリチュアルアタック(精神的攻撃)によりショウタの何かが吹っ切れた。

あーもうやめだ、やめ。やってらんねぇ。
あーもう疲れた。

ショウタが帰ろうとしたその瞬間、ふと足が止まった。



いや、待てよ……
コイツの言う事は、あながち間違っていないかもしれない………………
俺は今まで苦手な事や嫌いな事は避けて特に努力もせずに文句ばっかりは一丁前に言うクズだった。

勝手に人のせいにして、何も変えようとしない。

ここで帰ったらいつもと同じじゃないか。
ずっと同じだ…………


俺は何の為にここに来たんだ。
仕事をする為だろ。
忘れるな…………

これがチャンスかもしれないなら必死にしがみつくんだ。

今まで目的もやる気も無く、何となく生きてきた自分を少しでも変えるんだ!

やるだけやってみるんだ!!
ショウタの中で感情の何かが勢いよく燃え始めた。

ショウタの目の色が変わった。



「面接の続きをお願いします!!」
ショウタは勢いよく声を出した。


すると……



「採用じゃ!まぁ……とりあえず仮採用ってとこかの」
クルスはキャンディーを舐めながら話す。

「えっ?…………」
どういう事?


「だーかーらー採用じゃ!!いや……仮採用か。明日から来い!あ…………そうじゃ……家無いんだっけなお前。うーん……あっ……そういや、前に辞めたヤツが使ってた部屋があるから使え!風呂、キッチン、トイレは部屋についている。給料はとりあえず家賃引いて一か月金貨10枚じゃな。ん?どうした?ぼーッとして?」
クルスは早口で話し始めた。

「えっ……いや……採用?ですか?まだ何もアピール出来て無いですけど……」
拍子抜けだった。何故採用と言われたのか分からない。特に何も言っていない。
しかも給料とは別に部屋を貸してくれる?
なんで?

「なんじゃ……そんな事か?単純じゃ!帰らなかったからじゃよ。あんな風に言われても帰らなかったじゃろ?だから採用じゃ」

「……はあ」
なんかよく分からないが採用ならいいや。いや……仮採用か。

「でもな本当はトガシショウタ……おぬしはウチに来る前から採用する事は決まっておった。正直おぬしのスキルは、この仕事に向いておる」

「えっ?どういうことですか?」

「それは自分で考えるんじゃ!!とりあえず!明日から仕事じゃ!今日はゆっくり休め。そうだ。これで身なりを整えるんじゃ。おぬしは汚いからのぅ」


そう言うとクルスは金貨1枚をくれた。

「あ……ありがとうございます!!いいんですか?こんなに貰って?」
金貨1枚は俺にとって大金だ。
パンが数えきれない程買える。

「やった!」
ショウタは誰もいなくなった事務所で一人小さなガッツポーズをしていた。
何に対しての喜びなのかは分からない。
お金が貰えたから?
認められたと思ったから?

ただ、ショウタは転生してから初めて心からの喜びを見せた。



――ギルド 酒場――

「クルスさん。あの子採用しました?」
若い女性がクルスと話している。

「…………あー。採用したよ」
クルスは牛乳を飲んでいる様だ。

「上手くいくと良いですね♪」
不敵な笑みを浮かべる女性。

「あぁ……」
少し心配そうな顔をするクルス。

………………何の事だろうか。不穏な空気だ。
ショウタを採用した事が何かあるのだろう。
これは、これから始まる出来事の始まりに過ぎなかった………………



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