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お父さんとお母さんが悪い
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パソコンの購入を断固として反対された小牧は、その日から両親が揃って出掛ける日を待ち望むようになった。
時機は一週間後にやって来る。
前日に蟹江の自宅で『MEMORY・GAME』をプレイさせてもらっていた。
両親が揃って外出し留守を任された小牧は、両親が忘れ物を取りに戻ってこないこと確かめてから、パソコンを所持している父親の書斎に脚を向けた。
玄関から廊下を歩きリビングを通り過ぎた最奥に父親の書斎はあり、小牧は書斎の引戸を恐る恐る開けた。
さすがに警報器のような物は無かったが、慎重に踏み入る。
書斎の机には会社で使うのであろう資料が整然と詰まれ、ブックラックには営業職やマネジメント関連の書籍が並んでいる。
いかにもビジネスマンらしい机といえるが、肝心のパソコンは机の上になく、それにどこにあるのか見当がついていない。
部屋中を探す必要があるとわかり、小牧は骨折りを感じて引き返そうかという考えが浮かんだ。
一応辺りを見回してみるが、目に付くところに探している物はない。
しかし、ふと見た机の横にある本棚の、床に面した抽斗が微かに開いていることが気に掛かった。
小牧は棚に歩み寄り、ゆっくりと抽斗を開けた。
「あった」
あっさりと発見できて、思わず声を漏らす。
開けた抽斗の中には、畳まれた状態のパソコンが無防備に仕舞われていた。
立ち入り厳禁を破り、父親の物を無断で使用しようとする後ろめたさが拭えないままだったが、恐々とパソコンを手に持った。
珍品を扱うような緊張した手つきでパソコンを床に置き、蟹江の自宅で覚えた通りに起動させた。
認証コードの欄が現れ、キーボードを打とうとする小牧の手が止まった。
「なんて入力すれば、いいのかな?」
情報端末の類を蟹江のパソコンで初めて触れた小牧には、父親が使いそうな認証コードなど予想が付かない。
試しに蟹江から聞いた認証コードを入力してみる。
当然、間違っているというメッセージが映る。
小牧は首を捻り、一つ閃いた。
乗用車のナンバープレートが本人の誕生日だと言っていた覚えがある。
ナンバープレートの数字を、欄に入れてみた。
アプリが左方に寄せられたホーム画面に切り換わる。
「わぁっ」
ダメもとで入力した認証コードが適合したことに、小牧はビクリと驚き竦んでキーボードから指を離した。
しばし画面を見つめていると、驚きが鎮まってくる。この画面からなら『MEMORY・GAME』がプレイできるのではないかと気がついた。
小牧の思考から後ろめたさが薄れていき、途端に今まで怯えていた両親の折檻が恐くなくなってしまった。
「あたしを束縛するお母さんと父さんが悪い」
とさらには禁則を破った自身を正当化して、両親の悪口を呟きながら、慣れないながらもキーボードを打ち込み始める。
先日に蟹江から教えてもらった検索方法を使い『MEMORY・GAME』のサイトを見つけ出すと、アカウントを作成した。
罪悪感のないまま小牧は、両親が帰宅する予定時間の五分前まで『MEMORY・GAME』にのめり込んだ。
時機は一週間後にやって来る。
前日に蟹江の自宅で『MEMORY・GAME』をプレイさせてもらっていた。
両親が揃って外出し留守を任された小牧は、両親が忘れ物を取りに戻ってこないこと確かめてから、パソコンを所持している父親の書斎に脚を向けた。
玄関から廊下を歩きリビングを通り過ぎた最奥に父親の書斎はあり、小牧は書斎の引戸を恐る恐る開けた。
さすがに警報器のような物は無かったが、慎重に踏み入る。
書斎の机には会社で使うのであろう資料が整然と詰まれ、ブックラックには営業職やマネジメント関連の書籍が並んでいる。
いかにもビジネスマンらしい机といえるが、肝心のパソコンは机の上になく、それにどこにあるのか見当がついていない。
部屋中を探す必要があるとわかり、小牧は骨折りを感じて引き返そうかという考えが浮かんだ。
一応辺りを見回してみるが、目に付くところに探している物はない。
しかし、ふと見た机の横にある本棚の、床に面した抽斗が微かに開いていることが気に掛かった。
小牧は棚に歩み寄り、ゆっくりと抽斗を開けた。
「あった」
あっさりと発見できて、思わず声を漏らす。
開けた抽斗の中には、畳まれた状態のパソコンが無防備に仕舞われていた。
立ち入り厳禁を破り、父親の物を無断で使用しようとする後ろめたさが拭えないままだったが、恐々とパソコンを手に持った。
珍品を扱うような緊張した手つきでパソコンを床に置き、蟹江の自宅で覚えた通りに起動させた。
認証コードの欄が現れ、キーボードを打とうとする小牧の手が止まった。
「なんて入力すれば、いいのかな?」
情報端末の類を蟹江のパソコンで初めて触れた小牧には、父親が使いそうな認証コードなど予想が付かない。
試しに蟹江から聞いた認証コードを入力してみる。
当然、間違っているというメッセージが映る。
小牧は首を捻り、一つ閃いた。
乗用車のナンバープレートが本人の誕生日だと言っていた覚えがある。
ナンバープレートの数字を、欄に入れてみた。
アプリが左方に寄せられたホーム画面に切り換わる。
「わぁっ」
ダメもとで入力した認証コードが適合したことに、小牧はビクリと驚き竦んでキーボードから指を離した。
しばし画面を見つめていると、驚きが鎮まってくる。この画面からなら『MEMORY・GAME』がプレイできるのではないかと気がついた。
小牧の思考から後ろめたさが薄れていき、途端に今まで怯えていた両親の折檻が恐くなくなってしまった。
「あたしを束縛するお母さんと父さんが悪い」
とさらには禁則を破った自身を正当化して、両親の悪口を呟きながら、慣れないながらもキーボードを打ち込み始める。
先日に蟹江から教えてもらった検索方法を使い『MEMORY・GAME』のサイトを見つけ出すと、アカウントを作成した。
罪悪感のないまま小牧は、両親が帰宅する予定時間の五分前まで『MEMORY・GAME』にのめり込んだ。
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