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第五話 遊泳場の決戦。グラドルレンジャー変身不可能?
大仕事
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ウォータースライダーを滑り終えてから五人は、これと言って思い付く遊びもなく、施設内の端にあるフードコートのテーブル席で、各自ドリンクを傍に置いて、水鉄砲をかけあっている少年二人を眺めていた。
「赤い帽子の方が当てるの上手いよな」
テーブルの上で腕を枕のようにして、だらりと顎を載せている栗山が、どこの家の子か知れない少年を評した。
「確かに上手いね。それよりもあの子たちの親はどこだろうね」
栗山の評言を同調しつつ、話題をすり替えた。
施設のどっかにゃいるんだろ、と栗山はおざなりに返す。
少年二人は水鉄砲の弾が切らしたらしく、停戦協定のように掌を向け合ってからお互いに近くのプールで、水鉄砲に水を入れ始める。
「私達がここに座ってから三回目。何回補充し直すのかしら。よく飽きないわよね」
テーブルの下で脚を交差させている西之森が、何がどう楽しいのか理解し難く退屈そうに言った。
「栗山さんが男の子を産んだら赤い帽子の子に似た感じの子になるわね、きっと」
母性的な微笑ましさで少年二人の様子を見ている新城が、唐突に緩んだ声で口にした。
面倒なだけの子どもなんて持ちたくねえよ、と想像するのも嫌だと言わんばかりに吐き捨てた。
「あっ」
上司は視界の端をかすめた人影に見覚えがあり、そちらの方を向くと唐突に声を上げた。
「ん? どうかした上司さん?」
楠手が訊くと、上司は気の進まない顔で答える。
「さっきの男の人達です。こっちに近づいてきてます」
「ゲッ、関わり合いたくねえ」
あからさまに嫌う態度で栗山は、ドリンクを持って席を立った。
私も会いたくない、と西之森もドリンクを持ってテーブルから離れる。
しかし時すでに遅し、二人が三歩離れたところで、男性三人組の一人の金髪が彼女達におどけた口ぶりで話しかけてきた。
「逃げるなんてひどいじゃねーか。退屈してるように見えたから、今度こそ遊べると思ったのによ」
「私らにはお前達と遊ぶ気はねえんだ。うせろうせろ」
立ち去ろうとした時の背中を向けた格好で、渋顔を振り向けて栗山が言った。
西之森も眉間を寄せた顔で、男性達を見返している。
「おい、和也。そっちの二人はやめとけ。俺達の事、毛嫌いしてる。こっちの三人なら話くらいは聞いてくれそうだ」
茶髪が和也という金髪に提案する。
和也は理解した表情で茶髪の顔を見て、そうだなと頷く。
途端に男性三人組の意識は逃げようとしなかった楠手、新城、上司に集中する。
「よかったら少しだけ話相手になってくれねえか。俺らも退屈してるからさ」
茶髪の提案によって鞍替えした金髪が、一番手前にいた上司に手を合わせて頼み込む。
上司は決めかねて、楠手と新城に振り向いて二人の意向を窺った。
新城はお話しぐらいならいいわよ、というように微笑み。
楠手はそこまで言うなら、という顔で苦笑いした。
次々と撃破されていったギャルゲ大佐麾下の残存していた科学部隊のグリーンタイツ達四名が、総指揮官ギャルゲ大佐の待つプール施設の裏口駐車場に、増援として到着する。
「今日こそ我々の命運が分かれる日だ。失敗は許されない」
ギャルゲ大佐は、グリーンタイツが到着するなり訓令を告げた。
グリーンタイツ達は局面の逼迫を改めて痛感する。
「はい、大佐。前線での作戦行動は初めてですが、鋭意努めるつもりです」
グリーンタイツの中でも班長に当たる者が返礼する。
「よろしい。それでは行こうか」
ギャルゲ大佐は施設内へ入る裏口を潜り、人員不足で駆り出した部下四人を誘導する。
彼等はぞろぞろと集団になって、目指す部屋へ向かった。
預り所のドアの前まで来て、ギャルゲ大佐は足を止めると四人に向き直った。
「お前達の内、二人はこの中でグラドルレンジャーの変身ネックレスの見張りも兼ねた構造分析をしてもらう。残り二人はプール施設のゲート封鎖だ」
グリーンタイツ四人は相談することもなく、近い者同士で二組ツーマンセルに分かれた。
「よろしい。一方はついてこい」
そう言って預り所を通り過ぎて通路を歩き出したギャル大佐に、一組が伴う。
しばらく施設内を歩いてゲートに直接繋がる職員用のルートが右手にあったとことまで来ると、ギャルゲ大佐は足を止めずに奥へ進もうとした。
「大佐? ゲートへの道はこちらですが?」
気に掛かって一人が尋ねると、ギャルゲ大佐は弁えているという顔で部下を見た。
「お前達は二人はその通路で合っているぞ。しかし俺は同伴しない」
「何故ですか?」
問いに対して、如何様にも受け取れる複雑な笑みを口辺に浮かべる。
「準備整い次第、大仕事があるんだ」
「大佐。まさかこの状況を楽しんでおられますか?」
無礼を承知でグリーンタイツは訊いた。
ギャルゲ大佐はどうだかな、と曖昧な表情を作る。
「俺もここまで大仰な演出を施すのは久しぶりでな。幹部としての己と平怪人としての己が混淆している」
「はあ、左様ですか」
大佐の言葉の本意が解せず、グリーンタイツ二人揃って、同調することしか出来ない。
途端にギャルゲ大佐は、表情を厳しいものに変えて命じる。
「いいか、ゲートから誰一人として出すな、そして誰一人として入れるな」
「了解です」
威厳さを帯びた命令を聞き受けて、敬礼を返した。
ギャルゲ大佐は部下に背中を向けると、通路の奥へ足を進めていった。
「赤い帽子の方が当てるの上手いよな」
テーブルの上で腕を枕のようにして、だらりと顎を載せている栗山が、どこの家の子か知れない少年を評した。
「確かに上手いね。それよりもあの子たちの親はどこだろうね」
栗山の評言を同調しつつ、話題をすり替えた。
施設のどっかにゃいるんだろ、と栗山はおざなりに返す。
少年二人は水鉄砲の弾が切らしたらしく、停戦協定のように掌を向け合ってからお互いに近くのプールで、水鉄砲に水を入れ始める。
「私達がここに座ってから三回目。何回補充し直すのかしら。よく飽きないわよね」
テーブルの下で脚を交差させている西之森が、何がどう楽しいのか理解し難く退屈そうに言った。
「栗山さんが男の子を産んだら赤い帽子の子に似た感じの子になるわね、きっと」
母性的な微笑ましさで少年二人の様子を見ている新城が、唐突に緩んだ声で口にした。
面倒なだけの子どもなんて持ちたくねえよ、と想像するのも嫌だと言わんばかりに吐き捨てた。
「あっ」
上司は視界の端をかすめた人影に見覚えがあり、そちらの方を向くと唐突に声を上げた。
「ん? どうかした上司さん?」
楠手が訊くと、上司は気の進まない顔で答える。
「さっきの男の人達です。こっちに近づいてきてます」
「ゲッ、関わり合いたくねえ」
あからさまに嫌う態度で栗山は、ドリンクを持って席を立った。
私も会いたくない、と西之森もドリンクを持ってテーブルから離れる。
しかし時すでに遅し、二人が三歩離れたところで、男性三人組の一人の金髪が彼女達におどけた口ぶりで話しかけてきた。
「逃げるなんてひどいじゃねーか。退屈してるように見えたから、今度こそ遊べると思ったのによ」
「私らにはお前達と遊ぶ気はねえんだ。うせろうせろ」
立ち去ろうとした時の背中を向けた格好で、渋顔を振り向けて栗山が言った。
西之森も眉間を寄せた顔で、男性達を見返している。
「おい、和也。そっちの二人はやめとけ。俺達の事、毛嫌いしてる。こっちの三人なら話くらいは聞いてくれそうだ」
茶髪が和也という金髪に提案する。
和也は理解した表情で茶髪の顔を見て、そうだなと頷く。
途端に男性三人組の意識は逃げようとしなかった楠手、新城、上司に集中する。
「よかったら少しだけ話相手になってくれねえか。俺らも退屈してるからさ」
茶髪の提案によって鞍替えした金髪が、一番手前にいた上司に手を合わせて頼み込む。
上司は決めかねて、楠手と新城に振り向いて二人の意向を窺った。
新城はお話しぐらいならいいわよ、というように微笑み。
楠手はそこまで言うなら、という顔で苦笑いした。
次々と撃破されていったギャルゲ大佐麾下の残存していた科学部隊のグリーンタイツ達四名が、総指揮官ギャルゲ大佐の待つプール施設の裏口駐車場に、増援として到着する。
「今日こそ我々の命運が分かれる日だ。失敗は許されない」
ギャルゲ大佐は、グリーンタイツが到着するなり訓令を告げた。
グリーンタイツ達は局面の逼迫を改めて痛感する。
「はい、大佐。前線での作戦行動は初めてですが、鋭意努めるつもりです」
グリーンタイツの中でも班長に当たる者が返礼する。
「よろしい。それでは行こうか」
ギャルゲ大佐は施設内へ入る裏口を潜り、人員不足で駆り出した部下四人を誘導する。
彼等はぞろぞろと集団になって、目指す部屋へ向かった。
預り所のドアの前まで来て、ギャルゲ大佐は足を止めると四人に向き直った。
「お前達の内、二人はこの中でグラドルレンジャーの変身ネックレスの見張りも兼ねた構造分析をしてもらう。残り二人はプール施設のゲート封鎖だ」
グリーンタイツ四人は相談することもなく、近い者同士で二組ツーマンセルに分かれた。
「よろしい。一方はついてこい」
そう言って預り所を通り過ぎて通路を歩き出したギャル大佐に、一組が伴う。
しばらく施設内を歩いてゲートに直接繋がる職員用のルートが右手にあったとことまで来ると、ギャルゲ大佐は足を止めずに奥へ進もうとした。
「大佐? ゲートへの道はこちらですが?」
気に掛かって一人が尋ねると、ギャルゲ大佐は弁えているという顔で部下を見た。
「お前達は二人はその通路で合っているぞ。しかし俺は同伴しない」
「何故ですか?」
問いに対して、如何様にも受け取れる複雑な笑みを口辺に浮かべる。
「準備整い次第、大仕事があるんだ」
「大佐。まさかこの状況を楽しんでおられますか?」
無礼を承知でグリーンタイツは訊いた。
ギャルゲ大佐はどうだかな、と曖昧な表情を作る。
「俺もここまで大仰な演出を施すのは久しぶりでな。幹部としての己と平怪人としての己が混淆している」
「はあ、左様ですか」
大佐の言葉の本意が解せず、グリーンタイツ二人揃って、同調することしか出来ない。
途端にギャルゲ大佐は、表情を厳しいものに変えて命じる。
「いいか、ゲートから誰一人として出すな、そして誰一人として入れるな」
「了解です」
威厳さを帯びた命令を聞き受けて、敬礼を返した。
ギャルゲ大佐は部下に背中を向けると、通路の奥へ足を進めていった。
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