グラドル戦隊グラドルレンジャーズ

青キング

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第四話 NO MORE 盗撮怪人カメラーン!

交戦1

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 巡査に許可をもらっているパープルとレッドより先に、カメラーン率いるシキヨクマーの一隊が屋上遊園地で待ち構えている廃デパートの一階エスカレーター前に、ブルーとグリーンが降り立った。

 着いてすぐ管理する人を失くし、長い間停止している上階行きのエスカレーターが、二人の目に入る。

「これを昇ればいいのか?」

「屋上って言ってたから、そうに決まってるじゃない」

 行き先は決まっているのだが、どちらも足を踏み出そうとせずに躊躇った。

「足、置いて大丈夫か?」

 ブルーは一段目に足を踏みかけてやめた。

「罠とか、あるんじゃねえのか?」

「それでも昇るしかないじゃない。階段を捜す時間が惜しいものね」

 躊躇いを早々に振り払い、グリーンは腹を決めた。

 グリーンが一段目に足を置いたところで、ブルーが肩に手をやり制止した。

「ちょっと待て。お前、体重何キロだ?」

「はあ?」

 場違いなブルーの質問に、腹を立てた声音で訊き返す。

「そんなこと、今どうでもいいじゃない」

「どうでもよくねえよ。昇る時にお前の重みでエスカレーターが崩れたら大変だろ」

「そんなに重くないし、私軽い方よ。あんたこそデカい尻して、どう見たって私より重いじゃない」

 自分が気にしている身体の部位を論われて、ブルーはムッとして主張する。

「痩せてるだけのお前とは違うんだよ。あたしの場合は鍛えてる分の筋肉で多少重いだけだ」

「痩せてるだけって何? 私は毎朝ランニングしてスレンダーな身体を保ってるの。勘違いしないで」

「何がスレンダーだ。細すぎて気持ち悪いわ」

「それを言うなら、あんたの尻もデカすぎて見ていて不快よ」

「二人とも喧嘩はやめてください」

 いつの間にか到着していたイエローが、横合いから困惑の顔をして二人の仲裁に入った。

「私達は人質を助けに来たんです。ここで喧嘩をしている場合じゃありません」

「私は昇ろうとしたんだけど、ブルーが止めるから」

 グリーンは口論の責任をブルーに転嫁する。

「おい、あたしのせいじゃねえぞ。お前が言い返したのが悪いんだろ」

 責任転嫁され、ブルーは苛々として否定する。

 いがみ合う二人を窘めるためにイエローが口を開けようとした時、彼女の傍でテレポートの気配がする。

 イエローの傍に虚空から浮き出るようにレ、ッドとパープルが姿を現した。

「あっ、イエロー」

 レッドがすぐにイエローを目に入れて、次にエスカレーターの上り口にいるブルーとグリーンにも目を留めた。

「全員揃ってるね」

「レッド、急いで屋上へ行きましょう。光那ちゃんが心配だわ」

 レッドの隣にテレポートしたパープルは、気を揉んでいる声で急かした。

 パープルの声音から深刻さを感じ取ったブルー、グリーン、イエローは慌てて道を空ける。

 レッドとパープルが躊躇いもなくエスカレーターを昇っていくのを見て、ブルーが感心したように声を漏らした。

「軋みもしねぇじゃねーか。エスカレーターって案外丈夫な造りしてんだな」

「エスカレーターよ。丈夫に決まってるじゃない」

 嫌味っぽくグリーンは言った。

「決まってねえよ。エスカレーターに欠陥があるかもしれなかっただろうが」

 案の定、ブルーは激して抗弁する。

 犬猿の仲で反目する二人にイエローは困った顔付きで口を入れる。

「ブルーもグリーンも喧嘩はやめてください。今は人質を助けるのが優先です」

 イエローの窘めにブルーとグリーンはばつの悪い顔になって、エスカレーターを昇り出した。

 三階エスカレーターの降り口でレッドとパープルに三人が追いつき、五人はいよいよ壁面の薄汚れて錆びつき、子ども受けのプリティーさが無くなった案内看板の示す先、デパートの屋上遊園地へ続く観音開きの扉を押し開いた。

 五人の視界は拓けて、過去の時代に置いていかれた残骸のような遊具の数々が目に入る。

しかしすぐに長く放置され閑散とした空間の中に、敵の気配を五人は感知した。

 周囲に首を巡らせて警戒の視線を走らせていると、遊園地中央のティーカップ遊具の辺りから不気味な人間に似た体型の影が立ち上がった。

「こっちだ。グラドルレンジャー」

 五人が声のした方に振り向くと、そこにはティーカップの中に腕を組んで立っている頭部がビデオカメラの怪人の姿があった。

「俺の名前は盗撮怪人カメラーンだ」

 怪人が名乗ると、両隣のティーカップから筍が生えてくるみたいに、ピンクタイツが立ち上がる。

 五人はすぐさま戦闘の姿勢を取った。

 くっくっ、とカメラーンはあくどく笑う。

「グラドルレンジャー、お前達の目的はわかっている。人質を助けに来たんだろう」

 図星の五人が無言を通す。

 カメラーンは少しの沈黙を挟んで続ける。

「だが人質はここにはいない」

 五人の間に共通の衝撃が広がった。

「それじゃどこにいるの?」

 レッドが代表して尋ねた。

 カメラーンは頭を斜め上に持ち上げ、五人を睥睨するように見た。

「そんなの答えられるわけないだろ」

 五人は臍を噛んだ。人質の居場所が判明しないと助けに行けない。

「交渉のチャンスを設けよう。人質の命を助けてやれる方法が一つだけある。お前達五人がこのデパートから頭を下にして身を投げろ」

 カメラーンが人質の光那の命と対価に要求したのは、グラドルレンジャー五人の身投げ自殺だった。

「それをやれば、光那の命は助かるわけね?」

 パープルが念を押すように訊いて、選択を決めかねている他の四人より怪人側に足を踏み出す。

 カメラーンは内心でほくそ笑んだ。シキヨクマーの存在を知られているんだ、人質を助けてやるはずがないだろ。しかし内心とは真逆に返す。

「二言はない。人質は無傷で開放してやろう」

「わかった。飛び降りてあげるわ」

 パープルは怪人の言葉を信じ、決意を固めた。

「怪人のことを信じるな、パープル」

 ブルーが背後から厳しく戒めた。

 覚悟を済ませた表情をパープルはブルーに向ける。

「私達は人質を助けに来たのよ。目的を果たせるから問題ないわ」

「それは違うよ、パープル」

 レッドが首を振ってパープルの主張を否定する。

「あたし達が死んだら。光那ちゃんが助かったことを確かめられる人がいなくなる。そうなったら怪人の思うつぼだよ。私達が死んでからなら光那ちゃんを投げ落とすことだって考えられれる」

 レッドの言葉はパープルは胸に驚愕をもって入ってきた。

 助かったことを確かめられない、それでは怪人側が条件を破棄したことになり、自分達の死は無駄死にとなる。

 パープルはハッとして我に返り、一歩踏み出していた位置から、後ろに一歩下がり、他の四人と再び並び立つ。

 カメラーンは肩を竦めるような動作をする。

「おいおい、いいのか。人質がどうなっても?」

「私はあなたのことが信用できないわ」

「信用しないのは勝手だが、これだけは忘れるな。人質の命は我らが握っている。俺の言うことに従った方が人質のためだぞ」

 腕っぷしで戦わずしてグラドルレンジャーを屈服させようと怪人が言い放った、それと時を同じくして、どこかから電子的なベルの音が聞こえてくる。

「なんだ、この音は?」

 この場では出せるはずのない電子的なベルの音に、怪人は不可解そうに耳を傾ける。

「光那ちゃん!」

 パープルは音を聞くと同時に人質の名を叫んで、左手の子供向けな花柄のペイントを塗られた小さな建物を振り向く。

 この中に光那ちゃんがいる、という確信が湧き、建物へと駆け出した。

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