グラドル戦隊グラドルレンジャーズ

青キング

文字の大きさ
上 下
21 / 37
第三話 女性たちを返せ! 残虐イケメン俳優

誓い

しおりを挟む
 柴田は朝日の眩しさに眠りから覚めた。

 遮光カーテンの隙間から射し込む陽光に目を細めながら、上半身を起こす。

 どうやら彼女が寝ているのは自宅のベッドらしいのだが、服装がいつもの水色の寝間着じゃなくスーツとはいうのが不思議だった。

 昨夜の事を思い出そうとすると、予期しない頭部の鈍痛に襲われた。

 記憶は抜き取られたように無くなっており、せいぜい記憶にあるのは昨朝に家を出たことぐらいだ。

「健忘症っすかね?」

 病気を疑うが、頭を打ったとか深酔いしただとか、これといって思い当たる節はない。

「まあ、気にすることもないっすか。思い出せないってことは、大して覚えることがなかったってことっすよ」

 自分に言い聞かせるように、柴田はお気楽に疑問を手放した。

 下着から寝て皺の出来たスーツまで全てを新しい物に着替え終えると、手早く朝食を済まして、玄関に向かった。

 鞄からスケジュール帳を取り出し、本日の予定を確認する。

 今日の欄には、神里バラエティと書き込まれている。

 神里さんは今日も仕事っすか、人気っすね。

 昨夜の惨劇を知らない柴田は、自分が仕える男性俳優に残虐の色を見出さなかった。

 彼女の頭には彼女の知っている神里晋一しかいない。

 柴田は誰に示すでもなく張り切って、家を出たのだった。



 神里晋一が行方不明になったと報じられた翌日、栗山は未希を呼び出し、最寄りの駅前広場で落ち合った。

「ヤッホー、チーちゃん」

 すでに楽し気な笑顔で、未希はベンチに座る栗山に駆け寄ってきた。

 栗山も片手を挙げて応じる。

「元気そうだな、未希」

「元気ない時の私を見たことないでしょ、チーちゃん?」

 元気を誇るように未希は尋ねた。

 栗山は確かに、と請け合うような口ぶりで頷いた。

「それで、チーちゃん。私に何か用があるの?」

 落ち合う理由を未希が訊くと、栗山は急に真面目な顔になる。

「お前に聞いておかないといけないことがあってよ」

「なあに?」

「神里晋一って知ってるか?」

 その名前を耳にして、未希はああ、と記憶にある人物を思い浮かべる。

「その人って二枚目で人気の俳優でしょ。この前、行方不明になったっていう」

 他人事のように話す未希の口調に、栗山は人知れずほっとした。

「そうだな」

 柄に合わず瞳を潤ませて、一筋涙を溢す。

「どうしたのチーちゃん?」

 突然に友人の頬に涙が伝うのを見て、未希は何があったのかと心配になる。

「いや、なんでもねえ」

「なんでもないのに涙は流さないでしょ」

 自分に隠し事でもしているのか、という目で栗山の顔を見つめる。

「ほんとになんでもねぇんだよ」

「ほんとう?」

「お前が目の前にいることにほろりときちまっただけだからよ、気にすんな」

 そう答えながら、目の前の友人の顔を見返した。

「どうして私を見て泣き出すの?」

 理解しがたい表情で未希は訊いた、

 栗山はすまねえ、と詫びて顔を逸らし、努めて安堵の涙を押しとどめた。

「チーちゃん?」

「なんだ?」

 先程まで涙が頬を伝っていたとは思えぬ、溌溂な笑顔で向き直った。

「用って何?」

「用? そんなのねえよ。ただ一緒にパチンコ打つために誘おうと思っただけだ」

「私、パチンコやめたって前に言わなかったっけ?」

 うんざりしたように未希は、栗山の記憶の正確さを疑った。

「そうだな。前に聞いたぜ」

 パチンコに誘う気なんか端からねえーんだよ、記憶に異常がないかこの目で確認したかっただけだ、と心の内ではそう返事をした。

 シキヨクマーの手先と化した後の神里を知らない未希が目の前にいる。

 栗山は初めてヒーローになったことに感謝した。そしてこれからは、自身が未希の平穏を護ってやるとも誓った。

 ブルーには護れる力があるから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

熱砂のシャザール

春川桜
キャラ文芸
日本の大学生・瞳が、異国の地で貴人・シャザールと出会って始まる物語

処理中です...