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第三話 女性たちを返せ! 残虐イケメン俳優
誤報?
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未希から相談を受けた日から数日後。
栗山はグラドルレンジャーの給料日を挟んで、軽やかな電子音で溢れるパチ屋の一筐体に陣取り、パチンコに興じていた。
開店の午前九時から三時間近く、時折台を替えながらひたすらに打ち続けている。
大当たりのメロディーが流れ、大量の玉が雪崩れ込んでくる。
「よっしゃ」
栗山は快哉を叫んだ。
台によって勝ち負けの比率は変動したが、今日は全般的に上々の成果で、栗山はすこぶる機嫌が良い。
一段落したところで時間を見ると、正午を四、五分過ぎていた。
「今日は勝ったしな。ここらへんで引き上げるとするか」
調子に乗って打ち続けるのをやめて、景品交換所で換金すると、あまり玉でもらった缶コーヒーを片手に店を出た。
道路を挟んだパチ屋の真向かいに、先月オープンしたと小耳に聞いた中華料理屋があり、昼時だからか、中華料理屋に入っていくサラリーマンの姿もちらほらと散見できた。
若干の空腹を覚えて、栗山はその店の引戸を潜った。
らっしゃい、というカウンター越しの店主の太い声が飛ぶ。
店内はL字型のカウンター席しか設けていないらしく、入り口から最も奥の席が一つ空いているだけだ。
栗山はその席に腰掛け、隣の席でブラワンピースの胸の大きい女性が食べている炒飯に食欲をそそられ、忙しく調理中の店主に同じく炒飯を注文した。
はいよ、と店主は注文を聞き受ける。
炒飯が出来上がるまでの時間に栗山はスマホを取り出していじり始めると、隣の女性が少し顔を振り向かせた。
「ぶふっ」
女性は勢いよく米粒を噴き出した。
栗山の方も不意に噴き出されて、ちょっと不快を露にして女性に怪訝な目を投げた。
「あっ、お前」
女性の顔を見て、驚きの声を漏らす。
「甘司じゃねーか」
甘司もとい上司優香は、口をもぐもぐしながらレンゲを置いて人違いでないことを示す意味合いで、ぺこりと頭を下げた。
「お前、こういう店来るんだな」
「いはいへふか?」
口に物を含んだまま答える。
「先に食べ物を飲み込め」
上司はごっくんと口の中の物を飲み下してから、改めて答える。
「意外ですか?」
「まあな。お前もうちっと乙女チックな店に行きそうなイメージがあったからな。中華食べるんだな」
「そりゃ食べますよ。中華料理は美味しいですから」
中華料理の識者を代表するように、誇って言う。
「美味しいのは認めるけどよ。似合わないな」
「そうですか?」
「お前ってさ、いかにも甘い物好きそうだからよ。ほら芸名があま……」
「やめてくださいっ」
上司は何の配慮もなく自身の芸名を言おうとした栗山の口を慌てて塞いだ。
栗山は言葉を呑み込んだ。
店内の他の客を見回して身バレしていないことを確認してから、栗山の口を塞いだ手を退かし、他の人がいるところで芸名で呼ばないでください、と小声で釘を刺す。
「バレたらマズいのか?」
「だって、グラビアアイドルですよ。世間体よくありません」
「今更、世間体なんて気にすんなよ」
「栗山さんこそ気にした方がいいです。グラビアの時と私生活が逆ですから。人気が落ちますよ」
「言われてみれば、そうかもしれねぇな」
栗山はグラビアの際の自分の姿を思い浮かべて、納得する。
はいおまち、と頼んだ炒飯とレンゲが栗山の前に置かれる。
「いただきまーす」
そう言って手を合わせてから、レンゲで炒飯の山の一角を掬い口へと運んだ。
「美味いな」
極めて短く感想を述べ、舌鼓を打つ。
よそ事をせず炒飯を頬張り出した栗山に、上司が訊く。
「栗山さんは中華料理好きですか?」
「美味けりゃなんだって好きだな」
カテゴリの枠組みを取り払った答えを返した。
「味さえ良ければ何でもいい、っていうことですか。食事にこだわりとかないんですか?」
「ないな」
食べる手を止めずに答える。
「好き嫌いはどうですか?」
「それもないな、大体のものは食べるぜ」
すごいなー、と偏食の気味がある上司は少し尊敬の気持ちが湧いた。
栗山は休みなく食べ続けて、器に米粒一つ残さなかった。
「ごちそうさまー」
食べ始めと同様に手を合わせて、食物への感謝を捧げた。
「食べるのも早いんですね」
「そうか?」
栗山は上司の前にある炒飯を見る。盛られた分の半分ぐらいしか減っていない。
いたずらっ気を滲ませて、炒飯を指さす。
「それ、いらねぇのか。いらねえなら食べてやるよ」
「ダメです。これは私の分です。私一人で食べます」
器を自分の方に引き寄せ、ムキになって拒否した。
冗談だよ、と瓢げて言う。
「しかしよ、早く食べないと冷めるぜ」
「わかってます。ちゃんと食べます」
レンゲを握って、残りの炒飯と向き合う。
「制限時間は三分な」
勝手にタイムリミットを設けて、栗山もレンゲを握り持った。
果たして上司は十九年の生涯で、最も行儀悪く米粒をかき込んだ。
その間栗山は、上司の慌てた食べっぷりが面白おかしくて、他の客への心配りなくゲラゲラと笑っていた。
上司が三分以内に食べ終え、栗山は褒美ばかりにと炒飯の代金を奢った。
「ご馳走様でした」
連れ添って店を出るなり、恭しく上司は栗山に頭を下げる。
「奢ってくれてありがとうございます」
「それマジで言ってんのか?」
早食いを強いた身としては、礼を言われるとは思ってもみなかった。
栗山の呆れたような問いに、上司は真面目に返答する。
「はい。タイムリミットを課せられたのは怒ってますけど、奢ってくれたことには感謝してるんです」
「いや、だってよ。無理に早食いさせて悪かったかなと思って奢ったんだぜ。礼を言われることしてないだろ」
「早食いさせたことと奢ってくれたことは別です。感謝は素直に受け取ってください」
指摘する口調で言う。
当惑しつつも栗山はわかったよ、と感謝を受け取った。
「栗山さん」
「こんどは何だよ」
「これから予定ありますか?」
「ないけど」
「それじゃ、この後一緒に買い物しましょう」
「付き合うのはいいけどよ、買い物ってどこ行くんだよ?」
「何も決めてないです。どこか行きたい場所ありますか?」
「行きたい所があったら、予定がないなんて言わねえよ」
苛々として言う。
それもそうですね、と上司はへへへ、と後ろ頭を掻く。
「行く場所、私決めていいですか?」
「どうぞ」
「それじゃ……」
その時、二人のネックレスが小さく振動する。
二人はそれぞれ服の襟の下からネックレスの宝石部分を取り出し、顔に近づける。
新たな怪人の出現予測場所が、上司と栗山と他の三名に木田から告げられた。
二人は中華料理屋の横の路地に入り、通達された場所へとテレポートした。
上司と栗山は出現予測場所へと降り立った。
「ここはどこでしょうか?」
「さあな」
辺りを見回すと、昼時にも関わらず天井照明が点き、整然と並んで眠っているような車の群で、地下駐車場の一画であることがわかる。
近くに他の仲間の姿はない。まだ到着していないらしい。
「車の音がします」
駐車場の床を伝って微かに響く車輪の踏む音を、イエローの耳が敏く聞き拾った。
音はスピードを落とさずに少しづつ二人へと近づいてくる。
「イエロー、こっちだ」
ブルーに声をかけられ、イエローはブルーの見ている方向を見遣る。
そちらからは駐車された車の間から一台の軽自動車が、二人に迫ってくる。
軽自動車の運転手は進行方向にいる二人を見て、慌ててブレーキを利かせた。
自動車は二人の四、五歩手前で停止した。
運転席のドアからブルゾンを着た高身長の若い男性が出てきて、警戒の気構えで突っ立っている二人に駆け寄ってくる。
文句でも言いに来るのかと思いきや、男性は人当たり良く二人に話しかける。
「どうしたんだい、そこの二人?」
「あっ、あなたは確か」
男性の顔を見た上司が、記憶にある人物を思い出して声を漏らした。
「神里晋一さん。俳優の」
「僕のこと知ってるんだ。ありがとう」
そう言って、神里は上司に微笑みかける。
「それよりも、二人はここで何かしてたのかい。並んで立ってたけど、服装というか、その、格好もなんか、奇抜だし」
二人の水着姿を前に、目のやり場に困りながら尋ねる。
「これはですね、私達……」
「二人で涼んでたんだよ」
答えようとする上司の口を手で塞いで、栗山が答える。
神里は不思議そうな目をして訊き返す。
「その格好でかい。恥ずかしくない?」
「恥ずかしくないね。ここ人がいなさそうだからな」
「うん、まあ確かに。人はいないね」
周囲に目を遣って、神里は納得する。
「でも、時々車が通るから邪魔になるよ」
と諭すように付け足した。
渋々と言った顔をして、栗山が上司の腕を掴んで脇に寄って道を空ける。
「これで邪魔じゃないだろ?」
「すまないね」
神里は申し訳ない様子で言って車に戻り、二人の前を走り過ぎていった。
神里の乗る車の残影が見えるかのように、上司が車の走り過ぎていった方向に視線を注ぐ。
「どこに行くんでしょうかね。神里さん」
「さあな。あたしの知ったことじゃねー」
わずかにも興味ない栗山はいい加減に返す。しかし頭の中では不意に未希の顔が過ぎり、先程の男とむつみ合っている有り様が浮かんでいた。
その後少ししてレッド、グリーン、パープルの三人も、暇を惜しんで参着したが、日が暮れるまで待てどもシキヨクマーの怪人は姿を現さなかった。
グラドルレンジャー五人は糾合し、回線で木田をイチャモン風に問い詰めて、誤報を認めさせた。
それ以外は何一つの戦果もなく五人は解散した。
栗山はグラドルレンジャーの給料日を挟んで、軽やかな電子音で溢れるパチ屋の一筐体に陣取り、パチンコに興じていた。
開店の午前九時から三時間近く、時折台を替えながらひたすらに打ち続けている。
大当たりのメロディーが流れ、大量の玉が雪崩れ込んでくる。
「よっしゃ」
栗山は快哉を叫んだ。
台によって勝ち負けの比率は変動したが、今日は全般的に上々の成果で、栗山はすこぶる機嫌が良い。
一段落したところで時間を見ると、正午を四、五分過ぎていた。
「今日は勝ったしな。ここらへんで引き上げるとするか」
調子に乗って打ち続けるのをやめて、景品交換所で換金すると、あまり玉でもらった缶コーヒーを片手に店を出た。
道路を挟んだパチ屋の真向かいに、先月オープンしたと小耳に聞いた中華料理屋があり、昼時だからか、中華料理屋に入っていくサラリーマンの姿もちらほらと散見できた。
若干の空腹を覚えて、栗山はその店の引戸を潜った。
らっしゃい、というカウンター越しの店主の太い声が飛ぶ。
店内はL字型のカウンター席しか設けていないらしく、入り口から最も奥の席が一つ空いているだけだ。
栗山はその席に腰掛け、隣の席でブラワンピースの胸の大きい女性が食べている炒飯に食欲をそそられ、忙しく調理中の店主に同じく炒飯を注文した。
はいよ、と店主は注文を聞き受ける。
炒飯が出来上がるまでの時間に栗山はスマホを取り出していじり始めると、隣の女性が少し顔を振り向かせた。
「ぶふっ」
女性は勢いよく米粒を噴き出した。
栗山の方も不意に噴き出されて、ちょっと不快を露にして女性に怪訝な目を投げた。
「あっ、お前」
女性の顔を見て、驚きの声を漏らす。
「甘司じゃねーか」
甘司もとい上司優香は、口をもぐもぐしながらレンゲを置いて人違いでないことを示す意味合いで、ぺこりと頭を下げた。
「お前、こういう店来るんだな」
「いはいへふか?」
口に物を含んだまま答える。
「先に食べ物を飲み込め」
上司はごっくんと口の中の物を飲み下してから、改めて答える。
「意外ですか?」
「まあな。お前もうちっと乙女チックな店に行きそうなイメージがあったからな。中華食べるんだな」
「そりゃ食べますよ。中華料理は美味しいですから」
中華料理の識者を代表するように、誇って言う。
「美味しいのは認めるけどよ。似合わないな」
「そうですか?」
「お前ってさ、いかにも甘い物好きそうだからよ。ほら芸名があま……」
「やめてくださいっ」
上司は何の配慮もなく自身の芸名を言おうとした栗山の口を慌てて塞いだ。
栗山は言葉を呑み込んだ。
店内の他の客を見回して身バレしていないことを確認してから、栗山の口を塞いだ手を退かし、他の人がいるところで芸名で呼ばないでください、と小声で釘を刺す。
「バレたらマズいのか?」
「だって、グラビアアイドルですよ。世間体よくありません」
「今更、世間体なんて気にすんなよ」
「栗山さんこそ気にした方がいいです。グラビアの時と私生活が逆ですから。人気が落ちますよ」
「言われてみれば、そうかもしれねぇな」
栗山はグラビアの際の自分の姿を思い浮かべて、納得する。
はいおまち、と頼んだ炒飯とレンゲが栗山の前に置かれる。
「いただきまーす」
そう言って手を合わせてから、レンゲで炒飯の山の一角を掬い口へと運んだ。
「美味いな」
極めて短く感想を述べ、舌鼓を打つ。
よそ事をせず炒飯を頬張り出した栗山に、上司が訊く。
「栗山さんは中華料理好きですか?」
「美味けりゃなんだって好きだな」
カテゴリの枠組みを取り払った答えを返した。
「味さえ良ければ何でもいい、っていうことですか。食事にこだわりとかないんですか?」
「ないな」
食べる手を止めずに答える。
「好き嫌いはどうですか?」
「それもないな、大体のものは食べるぜ」
すごいなー、と偏食の気味がある上司は少し尊敬の気持ちが湧いた。
栗山は休みなく食べ続けて、器に米粒一つ残さなかった。
「ごちそうさまー」
食べ始めと同様に手を合わせて、食物への感謝を捧げた。
「食べるのも早いんですね」
「そうか?」
栗山は上司の前にある炒飯を見る。盛られた分の半分ぐらいしか減っていない。
いたずらっ気を滲ませて、炒飯を指さす。
「それ、いらねぇのか。いらねえなら食べてやるよ」
「ダメです。これは私の分です。私一人で食べます」
器を自分の方に引き寄せ、ムキになって拒否した。
冗談だよ、と瓢げて言う。
「しかしよ、早く食べないと冷めるぜ」
「わかってます。ちゃんと食べます」
レンゲを握って、残りの炒飯と向き合う。
「制限時間は三分な」
勝手にタイムリミットを設けて、栗山もレンゲを握り持った。
果たして上司は十九年の生涯で、最も行儀悪く米粒をかき込んだ。
その間栗山は、上司の慌てた食べっぷりが面白おかしくて、他の客への心配りなくゲラゲラと笑っていた。
上司が三分以内に食べ終え、栗山は褒美ばかりにと炒飯の代金を奢った。
「ご馳走様でした」
連れ添って店を出るなり、恭しく上司は栗山に頭を下げる。
「奢ってくれてありがとうございます」
「それマジで言ってんのか?」
早食いを強いた身としては、礼を言われるとは思ってもみなかった。
栗山の呆れたような問いに、上司は真面目に返答する。
「はい。タイムリミットを課せられたのは怒ってますけど、奢ってくれたことには感謝してるんです」
「いや、だってよ。無理に早食いさせて悪かったかなと思って奢ったんだぜ。礼を言われることしてないだろ」
「早食いさせたことと奢ってくれたことは別です。感謝は素直に受け取ってください」
指摘する口調で言う。
当惑しつつも栗山はわかったよ、と感謝を受け取った。
「栗山さん」
「こんどは何だよ」
「これから予定ありますか?」
「ないけど」
「それじゃ、この後一緒に買い物しましょう」
「付き合うのはいいけどよ、買い物ってどこ行くんだよ?」
「何も決めてないです。どこか行きたい場所ありますか?」
「行きたい所があったら、予定がないなんて言わねえよ」
苛々として言う。
それもそうですね、と上司はへへへ、と後ろ頭を掻く。
「行く場所、私決めていいですか?」
「どうぞ」
「それじゃ……」
その時、二人のネックレスが小さく振動する。
二人はそれぞれ服の襟の下からネックレスの宝石部分を取り出し、顔に近づける。
新たな怪人の出現予測場所が、上司と栗山と他の三名に木田から告げられた。
二人は中華料理屋の横の路地に入り、通達された場所へとテレポートした。
上司と栗山は出現予測場所へと降り立った。
「ここはどこでしょうか?」
「さあな」
辺りを見回すと、昼時にも関わらず天井照明が点き、整然と並んで眠っているような車の群で、地下駐車場の一画であることがわかる。
近くに他の仲間の姿はない。まだ到着していないらしい。
「車の音がします」
駐車場の床を伝って微かに響く車輪の踏む音を、イエローの耳が敏く聞き拾った。
音はスピードを落とさずに少しづつ二人へと近づいてくる。
「イエロー、こっちだ」
ブルーに声をかけられ、イエローはブルーの見ている方向を見遣る。
そちらからは駐車された車の間から一台の軽自動車が、二人に迫ってくる。
軽自動車の運転手は進行方向にいる二人を見て、慌ててブレーキを利かせた。
自動車は二人の四、五歩手前で停止した。
運転席のドアからブルゾンを着た高身長の若い男性が出てきて、警戒の気構えで突っ立っている二人に駆け寄ってくる。
文句でも言いに来るのかと思いきや、男性は人当たり良く二人に話しかける。
「どうしたんだい、そこの二人?」
「あっ、あなたは確か」
男性の顔を見た上司が、記憶にある人物を思い出して声を漏らした。
「神里晋一さん。俳優の」
「僕のこと知ってるんだ。ありがとう」
そう言って、神里は上司に微笑みかける。
「それよりも、二人はここで何かしてたのかい。並んで立ってたけど、服装というか、その、格好もなんか、奇抜だし」
二人の水着姿を前に、目のやり場に困りながら尋ねる。
「これはですね、私達……」
「二人で涼んでたんだよ」
答えようとする上司の口を手で塞いで、栗山が答える。
神里は不思議そうな目をして訊き返す。
「その格好でかい。恥ずかしくない?」
「恥ずかしくないね。ここ人がいなさそうだからな」
「うん、まあ確かに。人はいないね」
周囲に目を遣って、神里は納得する。
「でも、時々車が通るから邪魔になるよ」
と諭すように付け足した。
渋々と言った顔をして、栗山が上司の腕を掴んで脇に寄って道を空ける。
「これで邪魔じゃないだろ?」
「すまないね」
神里は申し訳ない様子で言って車に戻り、二人の前を走り過ぎていった。
神里の乗る車の残影が見えるかのように、上司が車の走り過ぎていった方向に視線を注ぐ。
「どこに行くんでしょうかね。神里さん」
「さあな。あたしの知ったことじゃねー」
わずかにも興味ない栗山はいい加減に返す。しかし頭の中では不意に未希の顔が過ぎり、先程の男とむつみ合っている有り様が浮かんでいた。
その後少ししてレッド、グリーン、パープルの三人も、暇を惜しんで参着したが、日が暮れるまで待てどもシキヨクマーの怪人は姿を現さなかった。
グラドルレンジャー五人は糾合し、回線で木田をイチャモン風に問い詰めて、誤報を認めさせた。
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