グラドル戦隊グラドルレンジャーズ

青キング

文字の大きさ
8 / 37
第二話 ストッキングが盗まれた。破廉恥!百足怪人ムカデラス

日常に射し込む影

しおりを挟む
 森屋靴下での盗難事件から一週間が過ぎた。甘司ゆうかもとい上司は写真集に載せるグラビア写真の撮影を行っていた。

 この日の撮影は屋内のシチュエーションを目的としていて、彼女の格好も胸と腰の下着だけだ。

 ソファの上で床に足を放りだして浅く腰かけるという、どこにも艶やかさのない姿勢をとっていた。

「うん、オーケー」

 撮影者がカメラを覗きながら腕を挙げて、指先で丸をつくってみせた。

 上司はきちんと座り直した。

「これで最後でしたか?」

 撮影する写真がもうないことを撮影者に訊ねた。

 彼女の問いに四十代半ばの短く顎髭を生やした撮影者の男は、どっちともつかない顔で答える。

「これで終わりでも構わないんだけど、写真集だからね、まだ少し撮っておきたいポーズとか服装があるんだよ」

「どんなのですか?」

「そうだね、甘ちゃんが今までやったことない黒下着とか」

「黒下着ですかぁ」

 上司は童顔の自分が黒い下着を着けている姿を想像してみたが、大人の女性のような色気はなかった。

 しかし撮影者は彼女と考えが違って、黒下着での撮影にやる気を見せ始める。

「うん、今頭の中で甘ちゃんが黒下着を着けているのを思い浮かべたけど、今までで一番の艶やかな甘ちゃんが撮れそうだよ」

 えっー、と上司は相手が本心で言っているのか疑ったが、大丈夫大丈夫、俺の腕なら甘ちゃんがどんな格好だろうと綺麗に撮れるから、と自信たっぷりに促されては、黒下着を着けようという気にもなる。

「それじゃ、撮ってもらっていいですか?」

「おーけー、今すぐ準備させるから」

 撮影者は上機嫌にそう言うと、後ろに控えていたスタッフの女性に言いつける。

「近くで黒い下着を一式と今回はストッキングも買ってきて」

 スタッフの女性は指示を聞くと、駆け足で黒下着を買いに出かけた。

「多分、三十分もしたら帰ってくるからね」

 撮影者の男は上司にそう伝えたのだが、その予想は大いに外れてスタッフの女性は帰ってこないまま二時間が経過した。

 照明係の男性スタッフが、腕時計で時間を気にする。

「遅いですね、どうしたんでしょう?」

「衣装選びに関しては彼女は優秀なんだけどな」

 撮影者の男も首を捻る。

 なにが三十分もしたら帰ってくるからね、なんですか。と上司は下着にブラウスを羽織った格好で暇を持て余した。

 それから十分経って、撮影場所のドアが開いて下着を買いに行っていた女性スタッフが息を切らして帰ってきた。

「はあ、はあ、すみません」

 手にはランジェリーショップの袋を持っている。

「おお、やっと帰ってきたか。早速、甘ちゃんに着けてあげて」

「それが、ストッキングだけ買えなくて」

「ええ、どうしてだい?」

「いろいろ店を回りましたが、どこもストッキングを切らしてるそうです」

「なぜ、ストッキングだけが品切れしてるんだろ」

 撮影者はどうしてこんな事になっているのか、疑問を投じたい風に言った。

「撮影はどうするんですか?」

 上司は撮影車に訊ねた。

「ストッキングなしでやるしかないわな」

 撮影者は答えた。

 ストッキングがないだけじゃ取りやめにしないか、と上司は内心落ち込んだ。

 

 上司がグラビア撮影した日の翌日、栗山は自宅のリビングで家族と朝の食卓を囲んでいた。

栗山の真向かいで新聞を広げていた父親が、あまり関心なさそうに記事の見出しを読んだ。

「女性用靴下が消えた、だってさ」

 トーストを手に載せて栗山は訊き返す。

「女性用下着がなんだって?」

「消えた、だって。女性用靴下とは言ってもストッキングだけが、工場から盗まれているらしい。しかもこれで先週に続いて二件目だそうだ」

 記事の文面を読み、詳しく補足した。

「そりゃ、またなんでだ?」

「お父さんが知るわけないだろう。犯人じゃないんだから」

 新聞から顔を上げて栗山の父親は、なんでもかんでも訊くなという目をした。

 母親がコーヒーを注いだカップを持って父親の隣の席に座すと、話に入り込んでくる。

「妙な泥棒がいるのね」

「ほんとだな」

 父親はすでにストッキングの事件については興味をなくしてしまい、また新聞に目を走ら始めた。

「あたしゃ、ストッキングを履かないから関係ないけどな」

 栗山も事件に興味がなく、程よく焼けたトーストに齧りついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...