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37話 悪戯な風。

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「えー!!エリカちゃんと安藤君って、幼馴染だったんだ?それに退学かぁ……、ちょっと可哀想かな。」

ツバサは一乗寺さん呼びから、エリカちゃん呼びになっていた。最早完全なる子供扱いである。


「うん、私もびっくりしたよ、でも納得もしたけどね。だからエリカちゃんに絡んでたみたいだし。まあ、ストーリーの流れには関係ないはずだけど一応。情報としては覚えておいて、なんなら後でノートに書き足しておこうか?後、アニメでは解らなかったフルネームが判明したんだよねー。【安藤あんどう豹二郎ひょうじろう】だって」

「へー、バンダナが豹柄だったのは意味があったんだね、そういえば安藤君が退学になるのって何時なの?」

「んー、確か来月末にはお兄さんの手術が成功して、実家と揉めるはずだから。それくらいかな?」

「へー。結構近いね。ならもう、余り関わることはなさそうだね」

ホッとしてツバサが言う。不良は苦手みたいだ。

ミライは立ち上がって伸びをした。

「んー、油断は禁物だけどね」

その時、一際強い風が吹いてミライのスカートが捲れ上がった。

立っているミライと座っているツバサ。

ガッツリパンツが見えたようで、ツバサは目を見開いて顔を真っ赤にしていた。ミライはミライで焦りすぎて混乱していた。

「あ……。初ラッキースケベおめでとう!!!」

テンパってそう言うミライにツバサが突っ込む。

「もう!!何言ってるのっ!!!園田さんの馬鹿っ‼︎!」



◇◇◇◇◇◇





風が強くなって来たので、二人は教室に戻ることにした。ちょっと気まずいがそれはお互いに触れない。

「じゃあ、食べながらで続き話そうか?」

そろそろお昼なので、適当にパンを買って来て教室に戻る。教室には誰も居なかったので、ノートを広げて二人並んで座った。


「誰も居ないね、皆、任務かな?なら丁度良いね、んーと。じゃあ一応書き足しておくね」

「うんオッケー。あ、そういえばルージュ兄妹はどうするの?……その、あのブランって人って……その」

「あー、うん、ブランは死んじゃうね。本来ならだけど。……あの二人は時間的猶予もあるし、とりあえずツバサ君が殺されそうにならなければ、ブランもツバサ君を庇うことも無くなるだろうから。一旦様子見で」

「んー、そっかぁ、僕も殺されそうになるのかぁ。」

ツバサは青い顔だ。

「もう、大丈夫だって、だって殆ど不死身だし。そう簡単に死んだりしないよ?主人公なんだから、しっかりしてよー!!」

励ますようにパンパンと肩を叩いておく。

ヒュー。ガタガタ。

やはり外は風が強いみたいで、ガタガタと窓が鳴り。少し隙間風が吹いてくる。

「室内に移動して、良かったね。ツバサ君、あ。それから~……」

暫く色々と、今後の事を話していると、扉が開いて一人の男子生徒がキョロキョロと中を見渡してこちらを見てホッとしたように息を吐いた。

「あー、園田さんにブラウン君。……先生が呼んでたよ、すぐに終わるからちょっと僕について来てくれる?」

「あー、わかりました」

(なんだろ?)

「あ、園田さん。荷物どうする?」

「すぐに済むらしいし、置いてこ。殆ど任務で人も居ないし大丈夫でしょ?」

時計を見ると昼を回っていて、多分皆出発した頃だろう。

なので荷物はそのままにして、男子生徒について行く。だが、中々先生の所へたどり着かない。それどころか男子生徒はゆっくりゆっくり、意味もなく歩いているような感じだ。よく見ればネクタイが通常クラスの生徒でミライがアレ?と思ったその時。

「ご、ごめんなさい!!」

男子生徒は二人を置いて、凄い速さで走り去って行った。


ポカンとして二人は顔を見合わせた。

「えぇ?なに?先生は?……悪戯?」

「さ、さあ?そうなのかな?」

良く解らないが、呼んでいると言う先生が誰なのかもすら解らない。
なので、とりあえず教室に戻ることにした。もし用事が有るなら、また呼ばれるだろう。そう思って教室に戻ると安藤が居た。

「よぉ?遅かったな。主人公さん?」

ノートを片手に笑っていた。



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