22 / 72
21話 優しさが辛い。
しおりを挟むさて、これからどうしようかとミライが悩んでいたらチャイムが鳴った。なんだかんだでお昼になっていたみたいだ。
「お昼だね、ミライ、ツバサ。昼食は食堂へ行くのかい?」
ユアンがそうミライへ問いかける。空気を変えるのに丁度良いと思いミライは頷く。
(あ………よし、ナイスタイミング。何とかもう少しイメージを良い方に変えないと………、常識人のライアン・エアーとは良好な関係になっておきたいし。)
「あ、うん。そうするつもりだよ」
「そうか、なら僕と一緒に行こう。 こっちの食堂を案内するよ?」
(え、………ユアンと?………うーん、でも、ここまで絡まれてるならもう仕方ないかな?)
「あー、じゃあお願い。」
渋々そう答えるとユアンは満面の笑顔になった。王子様スマイルが眩しい。
(う。………イケメンだな………、推しじゃ無かったけど、これは女の子が騒ぐのも分かるな………、何で私に好意的なの?謎すぎる………。)
「任せて、ミライ」
ユアンは嬉しそうだ。
「あ、私もっ!!私も行くわ‼︎」
エリカが声をあげる。
「ライアンはどうするの?お弁当?」
エリカがライアンに尋ねるとライアンは数秒悩んでからニコリと笑った。
「んー、私も今日は食堂いこかなぁ。」
「じゃあ皆で行こうか」
ユアンの言葉に全員が頷く。ツバサも特に異論は無いようで頷いている。
「あ、もう一人大丈夫?」
ミライはにゃん子の事を思い出した。
(お昼も奢る約束だし………、起こしてって言ってたしな………)
「うん、大丈夫だよ。何人でも大歓迎さ」
ユアンが答える。
教室の中には今も微かなイビキが聞こえている。にゃん子はあの騒ぎの中でも爆睡してたようだ。
「あ、起こしてくるから少し待っててもらって良いかな?」
にゃん子を起こしに行こうとするミライにライアンが待ったをかける。
「ちょぉ待ち。にゃん子ちゃんやろ?私が起こして連れて行くから、皆は先に行っててええよぉ」
「え?でも………」
「大丈夫、にゃん子ちゃんとはお友達やしぃ」
「あー、そうなんですか?」
(へー?アニメにはにゃん子さん出てこないけど。………仲良いのかな?)
「うん、そうやねん。任せてぇ」
ほなら後で行くわぁ。
そう言うライアンと別れて、ユアン、ツバサ、ミライ、エリカの四人で一先ず先に食堂へ向かう事になった。
◇◇◇◇◇◇
ライアンは四人を見送ってからため息を吐いた。
(なんや、けったいな子らやったなぁ………、大丈夫かなぁ?ユアンちゃん。知らへんかったわ、………ああ言う子が好きなん?………それにツバサ・ブラウン、あの子もちょっと気をつけて見ておかへんと、心配やわぁ………、エリカちゃん。)
ツバサの方はさらりとボディタッチを繰り出していた。
(大人しそうな顔して意外とプレイボーイなんかなぁ?………)
ライアンはエリカとユアンには幸せになって欲しいのだ。それを邪魔するような者達なら排除も辞さないと思っている。でもだからと言ってあんな嬉しそうな顔見せられたら、直接的には何も出来ない。
ライアンは優しかった。なので少しの間お邪魔虫は退散しておく事にした。
(とりあえずにゃん子ちゃん起こして、………はあ………、暫くはどっちにも目え光らせて置かへんとなぁ………)
◇◇◇◇◇◇
四人で食堂へ向かっている時。エリカがこっそりミライへ近づく。
「ねぇ………」
小声で話しかけられてミライはエリカへ目を向ける。
「あ、あのね、さっきのミライの趣味の話なんだけどね………」
言いにくそうにエリカは目を泳がせている。
「わ、私には良くわからないけど、そう言う男の人同士って言うのが好きな人も居るって知ってるわ、だから、えっと、ね、私は、気にしないわ………、これからも友達よ‼︎」
理解ありますみたいな顔で言いきるとスッキリとした顔をしてエリカは先頭へ駆けて行った。
(え?)
誤解なのだがその誤解を解くわけにも行かず変態でも気にしてないよ、と優しくされてミライは大ダメージを受けた。クリティカルヒットである。優しさが辛い。
(ち、ちが………ご、誤解なのにぃ………)
一部始終を見ていたツバサは慰めようかと思ったが、ミライの自業自得であり先程巻き込まれた事も思い出してやめておいた。
◇◇◇◇◇◇
「こっちの渡り廊下を過ぎたらすぐ食堂よっ」
エリカは張り切って案内してくれている、そのすぐ後ろでユアンはニコニコしている。平和だ。
誤解されて心に傷を追ってトボトボ歩くミライとの温度差が酷い。
「ほら、園田さん。もう着くよ?………元気出しなよ?」
案内された食堂は高級ホテルのバイキング会場の様だった。
「はー、豪華ー」
「凄いね、園田さん!!」
呆けてるミライと喜ぶツバサを見てユアンとエリカはクスクス笑っている。
白を貴重にした食堂内には真ん中にでっかい噴水が有りその周りには観葉植物も飾られている。壁沿いには色々な食事がケースの中に並べられており洋食和食とその種類も豊富だ。
奥の方にはスイーツもあった。
「説明するわね?まずこれがメニューよ」
入り口壁際にかけられたメニューを広げるエリカ、ツバサとミライは覗きこむ。
コース料理や単品の品物もあるようだ。どれもお高い。
そして一番高いのはバイキングコースでなんとお値段5000円である。学生の昼食に出せる値段じゃない。
ツバサとミライは息を飲んだ。
「た、高いね?うわ………」
ミライが引き攣った笑顔を向けるとユアンは困ったように笑う。
「………そうだね。二人はまだ任務を受けていないから、此処の食堂で食事するとなると少しお財布に厳しいかも知れないね?」
「任務を受けると、回数に応じたパスチケットがもらえるのよ‼︎」
「お食事券だよ」
エリカが割り込んで来てゴソゴソとポケットから数枚の券を取り出す。これが【お食事券】らしい。
続けてユアンが言う。
「これ一枚で、どのメニューでも頼めるよ。今後任務に行けば必ずミライ達も貰えるよ」
「………どうする?園田さん?」
ツバサがミライにコソコソと聞く。
「んー、せっかくだけど高すぎてここで食べるの無理だよね私達、お財布が空になっちゃうよ」
折角案内して貰ったけど、ミライ達には特別食堂で昼食を取るのは無理そうだ。エリカ達にどう断ろうかと考えていると後ろから声がした。
「おまたせぇ、あら?まだ何も決めてへんのぉ?」
「やぁっとごはんやー‼︎お腹空いたしー」
背中ににゃん子をおぶったライアンが食堂へと入って来た。ぴょんっと背中から降りたにゃん子はミライへと詰め寄る。
「じゃあ昨日の報酬、此処のバイキングコースで払ってもらえるやんなー?」
にゃん子はギラギラした目をミライへ向ける。ガチの目だ。断ったら殺られる。
「いやー、ちょっとここでは高すぎると言うか………」
視線をそらして冷や汗を流すミライ。だがにゃん子は下からガンをつける。
「はぁーん?なに言ってるのかなー?高い?
あれだけの汚部屋を片付けてあげたのにぃー?昨日の夜のコンビニ弁当と、普通のお昼じゃ、割にあわんよー?」
「…汚部屋?」
後ろでライアンが呟く。目が怖い。またライアンのミライへ対する好感度が下がった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる