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7話 所持金と試練報酬
しおりを挟む食事を始めた他の女性達や、比奈や美咲を横目に萌香は食事に手を付けず、静かに座っていた。綺麗な格好の女達はニコニコと微笑んで給仕している。だけど少しだけ、その瞳に怯えの色が見えた。
(……料理に毒や薬の類は入って無いけど、……でも、絶対に何か有る)
萌香は【鑑定】スキルを使い、目の前の料理を眺めた。
勇者だった頃のスキルは問題無く使える。獲得した各種耐性も失っては居なかった。今こうして、冷静に思考出来て居るのも昔、旅の間に獲得したストレス耐性のお陰だ。
(本当はステータスをもっと詳しく確認したいけど、ここじゃ、ちょっと怪しまれるし。はあ……、話はまだなのかな?)
ステータスを確認する為には一度ステータス画面を開く必要が有る。流石に此処では無理だ。情報が欲しかったから付いてきたが、やっぱり失敗だったかな?そんな事を考えて居ると、一度別れた茶髪と黒髪の青年が入って来た。茶髪の隣にはギャルの香夜が居る。肩を抱かれて得意げな顔だ。
(居ないと思ったら、……。名波さんの言う通り、取り入るのが上手いのかな?まあ、私には関係無いけど)
「みんな~、食事楽しんでる~?」
「食べながらで、良いから話を聞いて貰えるかな?ここで生活する為には、大事な情報だから。質問も受け付けるから、何かあれば挙手してくれれば良いからね。」
部屋の奥、空いた席に二人が座ると給仕して居た女達は二人にお酒を注いだ。
「えー、じゃあまずは俺達の自己紹介からね。……、俺は一応この組織のリーダーやらして貰ってる、【大城和也】。カズとかリーダーって呼んでくれれば良いよ~」
リーダーと名乗ったのは茶髪の男だった。そして隣の黒髪も片手を挙げた。
「俺は【伊藤直樹】、副リーダーだよ。説明は俺がします。」
◇◇◇◇◇◇
「じゃあまず、説明だけするんだけど、今の俺たちプレイヤーには一つ隠されて居る情報が存在します。」
直樹の言葉に皆食べる手を止めた。
「隠された情報……ですか?」
一人、20代後半くらいの真面目そうな女性がそう言った。
「そうです、………、質問の時は挙手してくれると、助かります。えーっと、じゃあ話を続けますけど、まず、目の前。何も無い空間だと思いますけど、そこを人差し指と中指で2回タップしてください。」
そう言って、直樹は二本指を立てると空中を2回叩くように動かした。萌香達の目には何も起こったようには見えない。女性達は困惑した様子だ。
「ねえ?まともそうだと思ったけどヤバイ奴じゃん、あの人」
「え……、どうなのかな?」
美咲と比奈の会話が聞こえてくる。それを尻目に萌香は二本指で空中を2回叩いた。
すると、目の前に透明のディスプレイが現れた。
(ステータス画面?いや、ちょっと違うか)
画面に映し出されたのはシンプルな文字。
NAME
【高橋萌香】
所持金 【5000G】 試練報酬 【1】
(名前と……、所持金と試練……報酬。)
萌香の他にも何人かが直樹の真似をして、そして驚いて居た。
「こんだけ?もっと色々あるんじゃ無いの?ここってゲームなんしょ?アイテムとかスキルとかさー?無いの?カズチー?」
香夜は隣に居る和也に聞いているが、和也は首を振っている。それを横目に見て直樹は苦笑して続けた。
「皆さんもこれだけ?と思うかもしれませんが、これは大切な事です。今、貴女達が食べている食事もお金が無ければ手に入れる事は出来ないし、試練報酬が無ければ………、死にます」
直樹の言葉に誰もが言葉を失って、広間に沈黙が流れる。
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