裏切られた元勇者、また異世界に召喚されちゃいました。今度は自分の為だけに力を使って生き残ります。

鳳城伊織

文字の大きさ
上 下
2 / 8

2話 異世界召喚は突然に……。

しおりを挟む







戻って来てからは、萌香は魂が抜けた様にぼうっと過ごした。いくら体が完全に戻って居ようと、心の傷は簡単に癒えなかった。これは夢で、目覚めたら、また地下牢じゃ無いかと怯えて暴れた。そんなだから萌香は、一年間は学校にも行けず、精神病院でのカウンセリング受けつつ、引き篭もって居た。異世界召喚の事は誰にも言えなかった。萌香からは勇者の力は全て失われていたし、成長した筈の体は元に戻って居る。証拠なんて無い。親に言われた『娘が狂った』その言葉の方が、説得力が有る。

空想を現実だと思い込んで、頭がおかしくなった少女。それが世間から見た萌香だ。

だけど萌香は、絶対にアレは現実だったと言える。だって心はこんなに変わってしまった。

中二病と思われるかも知れないが、全てに置いて楽しいと言う気持ちが無くなった。イケメン大好きな少し、夢見がちな少女。それが召喚前の萌香だった。だが今の萌香は、イケメンもブサイクも、男は皆、同じに見える。興味と言う興味が消え失せた。それから、誰の事も信じられなくなった。

(人は簡単に嘘をつく………)

なんとか一年経って萌香は普通の暮らしに戻れた。萌香自身、アレは夢だった。悪夢だったと自分に言い聞かせた。

それから一年遅れになったが学校にも通う事になった。

(全部忘れて、普通に生きよう。………その内きっと元の私に戻れるよね…………。)

萌香はそう思ったのだが、そう簡単な話では無かった。

本来なら二年生だったが、一年からやり直しになった。それもその筈、萌香は一年の春から引きこもって居た。それに周りが知らない人ばかりの方が良いだろうと親に言われた。母親は萌香がおかしくなったのを、いじめられて居たんじゃないかと、勘繰っていた。

(いじめの方が何倍もマシだよ………)

萌香はそう思って、ため息を吐いた。



◇◇◇◇◇◇◇




結局、年下に混ざって一年生として通い出したが、頭がおかしい、だから休んでいた。と陰で噂されて遠巻きにされた。更には、萌香も全く馴染めなかった、歩み寄ろうにもどうすれば良いのか分からない。でもこのままじゃ駄目だと思い、歩み寄ろうと努力はした。でも

『やばくね?あたおかババア、こっち見てるんだけど………』

『きもー』

クラスメイトの女子に話しかけるタイミングを見計らって居たら、クスクスと笑われた。それからは、一人静かに過ごした。

(やっぱり………人は信用ならない)

そこまで、思い出して萌香はさっき話しかけてくれた、比奈の事を考える。

時又ときまた比奈ひな

二年に上がって、同じクラスになった少女。明るい茶色のふわふわロングでいつも困り眉、背が低くて巨乳、顔も可愛い。

そして何故か、萌香によく話しかけてくれる。誰からも好かれる良い子。萌香の思う比奈のイメージは、そんな感じだ。

(………良い子なのかな?ううん、ああ言う子程、陰で何言ってるか………分かんないよ。それに………)

比奈が萌香に話し掛けて居ると、必ず他の誰かが比奈を連れて行く。萌香は危険人物扱いだ。

(………あたおかババア。だもんね、本当にそうなら、良かったな。全部妄想とか、夢なら………良かったのに)


萌香は、心からそう思った。





◇◇◇◇◇◇




その日は酷い雨だった。傘を持って来てない生徒が多くて、教室で雨が止むのを待って居たり、迎えを待って居る生徒が多かった。萌香も傘が無くて、母親の迎え待ちだった。

(別にそんなに遠くないし、濡れて帰っても良いのに、………過保護だな)

萌香が引き篭もりから復帰してから、母親はめちゃくちゃ過保護になった。本当はさっさと帰りたかったのだが、迎えに行くから教室で待ってなさいと連絡が有った。それが無ければ濡れてでも良いから、萌香は帰りたかった。

何故か今日は体調が悪い。ズキズキと頭が痛い、そんな時に濡れるなんてどうかしてると思われるだろうが、それでも何故か、早く帰りたかった。

今になって思えば虫の知らせだったのかも知れない。




その日、高橋萌香は教室に残って居たクラスメイト数人と再度【異世界召喚】された。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

噂(うわさ)―誰よりも近くにいるのは私だと思ってたのに―

日室千種・ちぐ
ファンタジー
身に覚えのない噂で、知らぬ間に婚約者を失いそうになった男が挽回するお話。男主人公です。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

処理中です...