上 下
4 / 4

.

しおりを挟む
家に帰るとお父様から「学園はどうだ?」と聞かれたけれど、自分のせいで心配をかけるのは気が引けたので「順調です」と答えた。

私が帰宅すると浮かない顔をしているのか、最近では毎日のように学園での様子を聞かれるようになってしまった。

お母様やお兄様も私に何かがあったのではないかと心配そうに顔色を伺って来ることが増えた。

頑なに学園での出来事を家族に打ち明けることはしなかったけれど、私には唯一自分の感情を曝け出す相手が居る。

それは侍女のフェイ。

私が五歳の時にこの屋敷に来てから、ずっと私の世話をしてくれている信頼出来る相手。

婚約するまでの私は、今の性格とは真反対で人に対してズバズバと意見するじゃじゃ馬娘でお父様達を困らせていた。

しかし、歳を重ねるにつれて自分が置かれている立場や家の立場を最優先に考えるようになり本来の性格はなりを潜めた。
お父様達はガラリと性格が変わったことを最初は不審に思ったようだけれど、時間が経つにつれて貴族の令嬢としての自覚が芽生えたのだろう気にも止めなくなった。

そんな私を心配してフェイはいつも声を掛けてくれた。

無理に聞き出そうとせず、私が自分から話すまで隣で立っていただけだけどその気遣いがとても嬉しくて次第に自分の思っていることを打ち明けられる存在になっていった。

部屋に戻るとフェイがお茶を入れてくれたから前の席に座るように促して今日の出来事を説明すると、話が進むにつれてフェイの握りしめた手がプルプルと震え始めた。

一通り話し終わるとフェイは私に「なぜ言い返さなかったのか」と聞いてきた。

伯爵家の娘であるサンドラ様から言われた言葉は侯爵家の娘である私に対しての侮辱として捉えても問題がない。

それでも私がサンドラ様を糾弾しなかったのには理由があった。

「私はね、フレデリック様の婚約者として今後も隣で支えていく自信が無くなってしまったの。

過去の私に自信があった訳では無いけれど、いつかは私と向き合ってくださって愛を育み生涯を共にできると信じていた時期もあったわ。

でも、サンドラ様が帰国してからのフレデリック様は私の知らない存在になってしまった。

昔からフレデリック様には傲慢なところがあったけれど、きちんと人の話を聞いてくれる方だったのよ?

それが今ではサンドラ様の意見だけに耳を傾けるようになって私の手には負えないと思うの…

仮にサンドラ様が別の方と結婚をしてもフレデリック様の想いが冷めることは無いでしょうし、私達が結婚したとしてもサンドラ様の陰がついてまわるわ。

周囲の人達は今以上に真実の愛を邪魔した悪女として私の事を噂するでしょうね。

社交界で私がそんな立場になってしまうとフレデリック様を支えるどころかただのお荷物になってしまう。
だからこのまま流れに身を任せて婚約を解消出来ないかと思って…

二人が想い合っているのであれば、私が身を引くだけで穏やかに婚約解消出来て家にも迷惑がかからないでしょう?」

私の考えを聞いたフェイは疑いの目を向けて真意を探ろうとしてきた。

「本音はどう思っているんですか?」

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄と言いますが、好意が無いことを横においても、婚約できるような関係ではないのですが?

迷い人
恋愛
婚約破棄を宣言した次期公爵スタンリー・グルーバーは、恥をかいて引きこもり、当主候補から抹消された。 私、悪くありませんよね?

公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。

夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、 自分の姿をガラスに写しながら静かに 父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。 リリアーヌ・プルメリア。 雪のように白くきめ細かい肌に 紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、 ペリドットのような美しい瞳を持つ 公爵家の長女である。 この物語は 望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と 長女による生死をかけた大逆転劇である。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。 ⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

王太子から婚約破棄……さぁ始まりました! 制限時間は1時間 皆様……今までの恨みを晴らす時です!

Ryo-k
恋愛
王太子が婚約破棄したので、1時間限定でボコボコにできるわ♪ ……今までの鬱憤、晴らして差し上げましょう!!

婚約者を変えて欲しいと言われ変えたのに、元に戻して欲しいなんて都合良すぎませんか?

紫宛
恋愛
おまけの追加執筆のため、完結を一度外させて頂きました(*ᴗˬᴗ)⁾ 幼なじみの侯爵令嬢がいきなり婚約者を変えて欲しいと言ってきました。 私の婚約者と浮気してたみたいです。 構いませんよ? 王子と言えど、こんな王子で良ければ交換しましょう? でも、本当にいいんですか? あなたの婚約者も、隣国の王子で王太子ですよ? 私の婚約者は、王子ですが王位継承権はありません。 今更戻して欲しいと言われても、私たち正式に婚約し来月結婚しますので無理です。 2話完結 ※素人作品、ゆるふわ設定、ご都合主義※

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

婚約破棄ですか……。……あの、契約書類は読みましたか?

冬吹せいら
恋愛
 伯爵家の令息――ローイ・ランドルフは、侯爵家の令嬢――アリア・テスタロトと婚約を結んだ。  しかし、この婚約の本当の目的は、伯爵家による侯爵家の乗っ取りである。  侯爵家の領地に、ズカズカと進行し、我がもの顔で建物の建設を始める伯爵家。  ある程度領地を蝕んだところで、ローイはアリアとの婚約を破棄しようとした。 「おかしいと思いませんか? 自らの領地を荒されているのに、何も言わないなんて――」  アリアが、ローイに対して、不気味に語り掛ける。  侯爵家は、最初から気が付いていたのだ。 「契約書類は、ちゃんと読みましたか?」  伯爵家の没落が、今、始まろうとしている――。

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

処理中です...