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初めてお互いの想いを語り合った日から
ふたりの日常は大きく変化した。

何をする時も必ず相談しあって
お互いの意見を尊重しながら
毎日を大切に過ごしている。

意外なことに龍樹の方が
その傾向が顕著に現れていて
最近では引越しを考えている。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

side.龍樹

過去の過ちを忘れず
自分の事を戒めるために
引越しをするつもりは無かったが、
ふたりで新たなスタートを切るなら
引越しするべきだと思い始めたのは
最近になってからだ。

湊が俺たちの家を
どうやって調べたのかは分からないが
自分と関係を持ったオメガから
住所を聞き出したのだろう…

関係を持ったことがあるオメガとは
随分前に関係を切り携帯も変えたが、
湊の時のようにいきなり突撃されて
遥が傷付けられたら…
他のオメガを招いた家で
遥との思い出を作るのは… 
考え始めると
色々な不安が押し寄せてきて
そのことを遥に相談すると
二つ返事で了承を得ることが出来た。

遥のからは
「相談してくれてありがとうございます。
僕も新しい家で龍樹さんと
過ごしたいと思っていたんです。」と
自分の思いも伝えてもらえて
俺は幸せを感じた。

それからは
ふたりで内見に出かけたり
新しい家具を選びに行ったりして
ゆっくりだが俺たちは
本当の夫婦になろうとしている。

□□□□□□□□

引越しが終わって少しした頃、
龍樹は遥から相談を受けた。

相談の内容は
結婚してからの5年間、
家に引こもるような生活が続いていて
社会の流れから置いていかれているような
孤独感を感じるというものだった。

それを聞いた龍樹は、
自分の会社で働くことを提案した。
番契約を結んでいないオメガが
いきなり就職活動をしても
良い結果が得られるとは限らず、
余計に塞ぎ込むかもしれないからと
理由も添えて遥に伝えると
遥もそれに納得して
龍樹の考えに賛同した。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

side.遥

龍樹さんの会社で働くことが決まったが
一体どんな仕事内容なのかと不安になり
僕は龍樹さんに聞くことにした。

「龍樹さん。
僕が働く部署?というか
仕事内容ってどんな感じなんですか?」

何かの雑務をこなすのかなと
心の中では考えていたが
僕の質問に対して龍樹さんは
予想外の提案をしてきた。

「俺の未来の秘書候補として
秘書課で働いてもらいながら
色々な経験を積むのはどうだろう?

これから先も俺と一緒に
人生を歩んでくれるのであれば
パートナーとして色々な場所に
同伴してもらう機会も増えてくる。
今までは形だけの夫婦だったから
連れて行かなかったが
本当の夫婦になった時には
俺の隣に遥が居て欲しいんだ。

俺と行動を共にできる秘書なら
お互いのスケジュール管理もしやすいし
そういう席に出席する頃には
秘書として一人前になっていて
顔見知りも増えているだろうから
立ち回りやすくなるかと思うんだが…」

最近の龍樹さんは
未来のことをよく口にする。
龍樹さんの未来に
僕が組み込まれている事が嬉しくて
思わず笑みがこぼれてしまう。

それに加えて
高卒で資格を持っていないことを
気にしていた僕の事を考えて
秘書にしてくれたんだろう。

過去の僕は
自分の考えを伝えることが怖くて
一人で抱え込んでいたけど
今は龍樹さんに相談する方が
何倍も気持ちが楽になる。
それと同時に龍樹さんに対しての
愛おしさも募っていく。

僕はもちろん龍樹さんの提案を承諾して
5日後から勤務することにした。

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