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のんびり高速移動旅
093、白き者が泣く 3(男泣き)
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そんな注意をしていると、リンが森の方に視線を移した。
「……シラツェーラ、話は変わるがご兄弟は何人かな?」
人を感知したようで、リンがシラツェーラに尋ねる。
「えっ?あの、にいちゃんとねえちゃんがいるよ」
「探しに来てるぞ、ご両親とご兄弟も」
「えっ?どこに?」
「この方角にみんないるよ。もしかして、この場所はシラツェーラの好きな場所かな?」
「うん、にいちゃんと二人だけの秘密の場所なんだ」
「そうか、先導している彼がお兄さんなのだろうな。みなこちらを目指して歩いてきているよ」
ようやく、耳を澄ませば微かに名前を呼んでいるような気もしてきて、今更になって状況を見返した。
「あっ、どうしよ、コレ?」
「治療してしまったのだから、説明はしないといけないだろう」
「だよなー。えーっと、あとは頼んだ」
「そう言うと思ったよ。少しだけでっち上げるがいいか?」
「何を?」
「コウが精霊に呼ばれたとかはどうだい?」
「うーん、なら俺じゃなくてお前が治したことにして」
「それは無理だな。人の手柄を横取りする性分ではなくてな」
「いや、手柄じゃねぇし、そこをなんとか」
「すまないな」
「うー、俺はあいつらのとこに戻る、じゃっ」
ラウ達は少し離れたところに置いてきた。
従魔を見慣れてる子供はそういないだろうし、怖がらせてしまう可能性もあると、魔除けと目隠しの魔法もしてある。
「コウ、いるだけでいいから、いてくれ」
「うー……分かった」
シラツェーラーと呼んでいる声がはっきりと聞こえ、シラツェーラが声の方を向いた。
「あの、僕はどうすれば?」
「ここだと答えてあげるといい」
リンの言葉に頷き、ここだよーっと大きな声を出した。
「心配したのよ」
「無事だったんだな」
母親がシラツェーラを抱き締め、その上から父親か二人を抱き締めた。
そして、兄と姉はシラツェーラと両親を見たあと、俺らをじっと見た。
「あなた方は?」
お兄ちゃんがキリッとした目で吟味している。
「わたしは、リン。こっちはコウと言う。旅の途中なのだが、ここを通りかかりってシラツェーラに会ったんだ」
「こんな夜更けに?」
「宿がこの先でね。それで、ご家族に無断で悪いがシラツェーラを治療してしまった、すまない」
その言葉に皆、一斉にこちらを見て、次にシラツェーラを見た。
「何を……えっ、目が……」
「ど……どうなって……」
「彼は口下手なので、私が代弁するが、いいだろうか?」
皆の視線がリンから俺に代わり、居たたまれなくてリンの陰に隠れると、誰かが頷いた気配。
「話してもらえますか」
シラツェーラの父親がリンに向き、リンが頷いた。
「彼は魔法の制御が出来ないが、治療師としては優秀なんだ。私の古傷も一瞬の内に治せる程でね。彼がシラツェーラの話を聞き、白き者の状態を考えいる内に治療魔法を作り出してしまった。また同じものが出せるか分からないからと、シラツェーラに許可を取って治療したというのが大まかな流れだ」
でっち上げは却下で、ざっくりとした説明にまとめたリン。
「本当に、治ったのですか?」
そりゃごもっともな質問、シラツェーラの瞳の色が変わったからと言っても、治ったとはまた別の話。
「本当に治ったかは、明日の朝、日の光の下を無事に歩けてからだろう。それにシラツェーラの目の見え方は治ったと本人から聞いている」
その言葉にリンに向いていた視線がシラツェーラへと戻ると、シラツェーラが頷き、真ん中だけじゃないんだ、周りも全部見えるよっと嬉しそうに話す。
その言葉に家族の俺らへの警戒心が薄れてきたが、兄ちゃんだけはまだ厳しめな表情。
「治療魔法を作り出した?」
「信じられないと思うが、彼は作り出せてしまう、しかも演唱もなしに、これは口外しないで欲しい案件だがね」
その言葉に兄ちゃん少し考えた後、歩きだし、俺の前に来た。
「……完全に納得した訳ではないが……シラツェーラが笑顔なのは、あなたのおかげだ、本当にありがとう」
その言葉に他の家族も集まり、俺の周りに来ては口々に感謝を述べる。
「いや、あの、だから明日にならなきゃ、本当に治ったかは、あの……」
そんな状況に、俺は後退りしながら、しどろもどろに応えるとまたもや兄ちゃんが一歩踏み出した。
「だとしても、しっかりと目を見開いて笑っている。それだけでも凄い治療だ。治療師に診せても治らないと言われ。物知りだと言われる旅人の神父でさえも無理だと言っていた。それが……」
過去に色々とシラツェーラの為に尽力したのは、この兄ちゃんのようだ、目頭を押さえての男泣き。
父親も兄ちゃんの肩に手を置き、労っている。
「私たちが働いている間、シラツェーラの為にと色々と動いてくれたのはこの子です。この子の苦労もこれで報われました。ありがとうございます」
「いや、だから、明日にならないと本当に治ったかは……」
「……そうですね。明日ですね」
短く男泣きを終わらせた兄ちゃんは、少し潤みの残った目を擦ると、一度深呼吸し、今度はリンに向いた。
「明日、また会えますか?」
「……シラツェーラ、話は変わるがご兄弟は何人かな?」
人を感知したようで、リンがシラツェーラに尋ねる。
「えっ?あの、にいちゃんとねえちゃんがいるよ」
「探しに来てるぞ、ご両親とご兄弟も」
「えっ?どこに?」
「この方角にみんないるよ。もしかして、この場所はシラツェーラの好きな場所かな?」
「うん、にいちゃんと二人だけの秘密の場所なんだ」
「そうか、先導している彼がお兄さんなのだろうな。みなこちらを目指して歩いてきているよ」
ようやく、耳を澄ませば微かに名前を呼んでいるような気もしてきて、今更になって状況を見返した。
「あっ、どうしよ、コレ?」
「治療してしまったのだから、説明はしないといけないだろう」
「だよなー。えーっと、あとは頼んだ」
「そう言うと思ったよ。少しだけでっち上げるがいいか?」
「何を?」
「コウが精霊に呼ばれたとかはどうだい?」
「うーん、なら俺じゃなくてお前が治したことにして」
「それは無理だな。人の手柄を横取りする性分ではなくてな」
「いや、手柄じゃねぇし、そこをなんとか」
「すまないな」
「うー、俺はあいつらのとこに戻る、じゃっ」
ラウ達は少し離れたところに置いてきた。
従魔を見慣れてる子供はそういないだろうし、怖がらせてしまう可能性もあると、魔除けと目隠しの魔法もしてある。
「コウ、いるだけでいいから、いてくれ」
「うー……分かった」
シラツェーラーと呼んでいる声がはっきりと聞こえ、シラツェーラが声の方を向いた。
「あの、僕はどうすれば?」
「ここだと答えてあげるといい」
リンの言葉に頷き、ここだよーっと大きな声を出した。
「心配したのよ」
「無事だったんだな」
母親がシラツェーラを抱き締め、その上から父親か二人を抱き締めた。
そして、兄と姉はシラツェーラと両親を見たあと、俺らをじっと見た。
「あなた方は?」
お兄ちゃんがキリッとした目で吟味している。
「わたしは、リン。こっちはコウと言う。旅の途中なのだが、ここを通りかかりってシラツェーラに会ったんだ」
「こんな夜更けに?」
「宿がこの先でね。それで、ご家族に無断で悪いがシラツェーラを治療してしまった、すまない」
その言葉に皆、一斉にこちらを見て、次にシラツェーラを見た。
「何を……えっ、目が……」
「ど……どうなって……」
「彼は口下手なので、私が代弁するが、いいだろうか?」
皆の視線がリンから俺に代わり、居たたまれなくてリンの陰に隠れると、誰かが頷いた気配。
「話してもらえますか」
シラツェーラの父親がリンに向き、リンが頷いた。
「彼は魔法の制御が出来ないが、治療師としては優秀なんだ。私の古傷も一瞬の内に治せる程でね。彼がシラツェーラの話を聞き、白き者の状態を考えいる内に治療魔法を作り出してしまった。また同じものが出せるか分からないからと、シラツェーラに許可を取って治療したというのが大まかな流れだ」
でっち上げは却下で、ざっくりとした説明にまとめたリン。
「本当に、治ったのですか?」
そりゃごもっともな質問、シラツェーラの瞳の色が変わったからと言っても、治ったとはまた別の話。
「本当に治ったかは、明日の朝、日の光の下を無事に歩けてからだろう。それにシラツェーラの目の見え方は治ったと本人から聞いている」
その言葉にリンに向いていた視線がシラツェーラへと戻ると、シラツェーラが頷き、真ん中だけじゃないんだ、周りも全部見えるよっと嬉しそうに話す。
その言葉に家族の俺らへの警戒心が薄れてきたが、兄ちゃんだけはまだ厳しめな表情。
「治療魔法を作り出した?」
「信じられないと思うが、彼は作り出せてしまう、しかも演唱もなしに、これは口外しないで欲しい案件だがね」
その言葉に兄ちゃん少し考えた後、歩きだし、俺の前に来た。
「……完全に納得した訳ではないが……シラツェーラが笑顔なのは、あなたのおかげだ、本当にありがとう」
その言葉に他の家族も集まり、俺の周りに来ては口々に感謝を述べる。
「いや、あの、だから明日にならなきゃ、本当に治ったかは、あの……」
そんな状況に、俺は後退りしながら、しどろもどろに応えるとまたもや兄ちゃんが一歩踏み出した。
「だとしても、しっかりと目を見開いて笑っている。それだけでも凄い治療だ。治療師に診せても治らないと言われ。物知りだと言われる旅人の神父でさえも無理だと言っていた。それが……」
過去に色々とシラツェーラの為に尽力したのは、この兄ちゃんのようだ、目頭を押さえての男泣き。
父親も兄ちゃんの肩に手を置き、労っている。
「私たちが働いている間、シラツェーラの為にと色々と動いてくれたのはこの子です。この子の苦労もこれで報われました。ありがとうございます」
「いや、だから、明日にならないと本当に治ったかは……」
「……そうですね。明日ですね」
短く男泣きを終わらせた兄ちゃんは、少し潤みの残った目を擦ると、一度深呼吸し、今度はリンに向いた。
「明日、また会えますか?」
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