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のんびり高速移動旅
032、初野営 1(準備)。
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ユリランスを目指し、ひた走る。
日も暮れてきた頃、野営するがいいか?と聞かれ、応と応えた。
キャンプはやったことないから、単純に興味からの返答。
小川が近くにある空き地をリンが探しだし、適当な場所にラウとディラの寝床を作り、魔除けのランプを施し、次にテントの準備。
「あっそういや、夜は魔物が活発に動くとか?」
「夜行性の魔物が活発になるだけで、数は同じ位だ」
最初の魔物体験から、更に二度魔物にすれ違っただけだから、直接対面したのはあれだけ。
「だったら見張りしなきゃな感じ?村にした方が良かった?」
「村の方が安全性は確保できるが、これから野営は何度もするし、慣れるのは早い方がいいだろう。それに魔物避けもする、ここ辺りの魔物ならそれで防げるよ」
「そっか」
「……まだ引きずってるのか?」
「なんで?」
「大人しすぎる」
「なんだよそれ」
「言葉通りだよ、そっち持って」
テントの設置を手伝いながら、脳裏に浮かぶのは先ほどのリアルグロ。
「俺さー、グロエグな映画を見まくっても、特に何とも思わなかったけど、実際は違った」
「グロエグ?」
「グロいの極みみたいな感じかな」
「極み……まあ普通の感覚があったってことだろう。その映画ってのを見たことないから、どうとは言えないが」
「ホラー、バイオレンス、スプラッタ、サイコ、グロエグと言われるものは結構見たな」
「なんだか、名前だけで嫌悪感が湧くんだが、認識として合ってるか?」
「うん、合ってる。詳しく知りたかったら話すけど」
「いや、それはいいよ」
「そっか。まあ、画面越しだったから平気だっただけなんだな」
「そうだな」
次は夕食準備、リンがジンケットから買った薪を出して置くと、魔法で火を点け、下処理済みの色々な具材の入った鍋に小川の水を入れて設置している。
「ジンケット様々だな、鮮度も保つのすげーっ」
「ああ、先にこれを用意しとけば、火にかけるだけだから、野営も楽に出来る」
魔物体験のおかげで、胃の中は完全に空っぽ、早くもグーッと音が鳴った。
「あんまり食う気はないんだけど、腹は減ってる」
「これは胃に負担のかけない野菜中心だから大丈夫」
「そこまで考えてたのか?」
「不要にならなくて良かったよ」
「お前ってスゲーな」
時折、鍋をかき混ぜなから微笑むリンの表情が、焚き火の揺らめきと合わさり一段とカッコ良く見えたので、視線を逸らしてしまった。
「あー、ちょっと花摘に行ってくる」
「花摘?」
「ションベン」
「花摘なんて言うのか?」
「そういうのを思い出して言ってみただけ」
「ふーん、余り遠くに行くなよ、それとこれ持っていって」
テント脇に置いていた魔物避けのランプを取ると渡された。
「いいの?」
「灯りにもなるし、魔物の気配も感じ取れないのに何も持たずに花摘に行くのは危ないからな」
「あ、そっか。じゃあ花摘に行ってくる……って、どこでもいいのか?こういうの」
「風上じゃなければ、どこでもいい」
「風上?あー、そっか、風は……こっちだから、こっちかな」
指を唾で湿らせ、風の向きを確かめてから、リンの視線から外れる場所にいく。
夕闇に染まる林の中、森の中を歩くのは初めてで緊張してしまったが、何事もなく戻れ……なくなってしまった。
所謂、迷子です!
遠くに行くなと言われたのに、恥ずかしさとかも含め、野営地よりも離れた場所でっと無意味に離れてしまったのが災いした。
小川の近くだったと耳を澄ませてみても、木々の揺れる音などしか聞こえない。
「これは声を出してリンを呼ぶべきか?森の中で大声出すのは危ないか?どっちだ?」
その時、ガサッと音を立てて、現れたのは……リン。
「不用意に大声を出さないのは正解だが。考えなしに離れるな」
「はい、ごめんなさい」
「まあ、初心者が必ずやるから分かっていたけど」
「だってなー」
「恥ずかしさよりも、野営地に戻れなくなる可能性と単身で魔物に会うことになる危険性を重視しておいてくれ」
ぐうの音もでないとは、こういうことを言うのだろう、うんと頷く俺からランプを受け取り、並んでテントへと歩き出す。
「それに俺相手に恥ずかしいも何もないだろう」
「いや、それはあるだろ」
「そうか、だから離れてしてたのか」
トイレ休憩は何度かしたが、そのときも少し離れていた。
「俺の世界はトイレ、じゃなくてトアレが充実してるから、外ですることなんてそうないんだよ」
こちらは、トイレをトアレと言うようで、名前がややこしい。
「でもこれからは遠くに行きすぎないようにな。ここはこれで防げるが、強い魔物はこれでは防ぐことも出来ないからな」
ランプを少し上げて説明され、最初にここ辺りの魔物はこれで防げると言っていたのを思い出した。
「分かった。……でも公衆便所か簡易トアレ欲しいー」
「んっ?」
「公衆便所は、公園とかにある誰でも使っていいトアレ。んで、簡易トアレは、テントをこう細長くしたやつで中がトアレで、こういうキャンプとか災害時に使うらしいよ」
使ったことはないが、画像とかで見た事のある簡易トイレを手振りを使い説明。
「街中には公衆トアレはあるが、ここは森の中だからな。簡易トアレとか、お前の世界は……俺からすると不要なものが溢れているな」
「まぁ、不要ちゃー不要かもな、でもあったらどこでするかなんて考えなくて済むじゃん」
「なるほど」
「あっ!そういやぁー風呂ってなしだよな」
「ないな。体を拭くなら小川の水を使えばいい」
「だよなー。まる1日シャワーも浴びないなんて何年ぶりだろ、酔っぱらって寝たときくらいだな」
「綺麗好きなんだな?それに、コウの世界は水資源も豊富そうだ」
「水大国でもあるからな。一家に一個は風呂があるし毎日入るのは当たり前な感じ。俺の住んでた安アパートでもユニットバスだったから、たまに溜めて入ってたし」
ユニットバスの説明をしながら戻り、テントに着くと火から下ろしていた鍋をまた火にかけ、しばらく煮込み、出来上がると夕食にした。
リンの見立て通り、薄味の野菜スープはあっさりと胃袋に収まった。
ついでに落ち着いてきたからか、パンもおかわりした。
ちょっと固くて、スープに浸して食べるなんてやったことないからか、楽しみながら食べ終わった。
日も暮れてきた頃、野営するがいいか?と聞かれ、応と応えた。
キャンプはやったことないから、単純に興味からの返答。
小川が近くにある空き地をリンが探しだし、適当な場所にラウとディラの寝床を作り、魔除けのランプを施し、次にテントの準備。
「あっそういや、夜は魔物が活発に動くとか?」
「夜行性の魔物が活発になるだけで、数は同じ位だ」
最初の魔物体験から、更に二度魔物にすれ違っただけだから、直接対面したのはあれだけ。
「だったら見張りしなきゃな感じ?村にした方が良かった?」
「村の方が安全性は確保できるが、これから野営は何度もするし、慣れるのは早い方がいいだろう。それに魔物避けもする、ここ辺りの魔物ならそれで防げるよ」
「そっか」
「……まだ引きずってるのか?」
「なんで?」
「大人しすぎる」
「なんだよそれ」
「言葉通りだよ、そっち持って」
テントの設置を手伝いながら、脳裏に浮かぶのは先ほどのリアルグロ。
「俺さー、グロエグな映画を見まくっても、特に何とも思わなかったけど、実際は違った」
「グロエグ?」
「グロいの極みみたいな感じかな」
「極み……まあ普通の感覚があったってことだろう。その映画ってのを見たことないから、どうとは言えないが」
「ホラー、バイオレンス、スプラッタ、サイコ、グロエグと言われるものは結構見たな」
「なんだか、名前だけで嫌悪感が湧くんだが、認識として合ってるか?」
「うん、合ってる。詳しく知りたかったら話すけど」
「いや、それはいいよ」
「そっか。まあ、画面越しだったから平気だっただけなんだな」
「そうだな」
次は夕食準備、リンがジンケットから買った薪を出して置くと、魔法で火を点け、下処理済みの色々な具材の入った鍋に小川の水を入れて設置している。
「ジンケット様々だな、鮮度も保つのすげーっ」
「ああ、先にこれを用意しとけば、火にかけるだけだから、野営も楽に出来る」
魔物体験のおかげで、胃の中は完全に空っぽ、早くもグーッと音が鳴った。
「あんまり食う気はないんだけど、腹は減ってる」
「これは胃に負担のかけない野菜中心だから大丈夫」
「そこまで考えてたのか?」
「不要にならなくて良かったよ」
「お前ってスゲーな」
時折、鍋をかき混ぜなから微笑むリンの表情が、焚き火の揺らめきと合わさり一段とカッコ良く見えたので、視線を逸らしてしまった。
「あー、ちょっと花摘に行ってくる」
「花摘?」
「ションベン」
「花摘なんて言うのか?」
「そういうのを思い出して言ってみただけ」
「ふーん、余り遠くに行くなよ、それとこれ持っていって」
テント脇に置いていた魔物避けのランプを取ると渡された。
「いいの?」
「灯りにもなるし、魔物の気配も感じ取れないのに何も持たずに花摘に行くのは危ないからな」
「あ、そっか。じゃあ花摘に行ってくる……って、どこでもいいのか?こういうの」
「風上じゃなければ、どこでもいい」
「風上?あー、そっか、風は……こっちだから、こっちかな」
指を唾で湿らせ、風の向きを確かめてから、リンの視線から外れる場所にいく。
夕闇に染まる林の中、森の中を歩くのは初めてで緊張してしまったが、何事もなく戻れ……なくなってしまった。
所謂、迷子です!
遠くに行くなと言われたのに、恥ずかしさとかも含め、野営地よりも離れた場所でっと無意味に離れてしまったのが災いした。
小川の近くだったと耳を澄ませてみても、木々の揺れる音などしか聞こえない。
「これは声を出してリンを呼ぶべきか?森の中で大声出すのは危ないか?どっちだ?」
その時、ガサッと音を立てて、現れたのは……リン。
「不用意に大声を出さないのは正解だが。考えなしに離れるな」
「はい、ごめんなさい」
「まあ、初心者が必ずやるから分かっていたけど」
「だってなー」
「恥ずかしさよりも、野営地に戻れなくなる可能性と単身で魔物に会うことになる危険性を重視しておいてくれ」
ぐうの音もでないとは、こういうことを言うのだろう、うんと頷く俺からランプを受け取り、並んでテントへと歩き出す。
「それに俺相手に恥ずかしいも何もないだろう」
「いや、それはあるだろ」
「そうか、だから離れてしてたのか」
トイレ休憩は何度かしたが、そのときも少し離れていた。
「俺の世界はトイレ、じゃなくてトアレが充実してるから、外ですることなんてそうないんだよ」
こちらは、トイレをトアレと言うようで、名前がややこしい。
「でもこれからは遠くに行きすぎないようにな。ここはこれで防げるが、強い魔物はこれでは防ぐことも出来ないからな」
ランプを少し上げて説明され、最初にここ辺りの魔物はこれで防げると言っていたのを思い出した。
「分かった。……でも公衆便所か簡易トアレ欲しいー」
「んっ?」
「公衆便所は、公園とかにある誰でも使っていいトアレ。んで、簡易トアレは、テントをこう細長くしたやつで中がトアレで、こういうキャンプとか災害時に使うらしいよ」
使ったことはないが、画像とかで見た事のある簡易トイレを手振りを使い説明。
「街中には公衆トアレはあるが、ここは森の中だからな。簡易トアレとか、お前の世界は……俺からすると不要なものが溢れているな」
「まぁ、不要ちゃー不要かもな、でもあったらどこでするかなんて考えなくて済むじゃん」
「なるほど」
「あっ!そういやぁー風呂ってなしだよな」
「ないな。体を拭くなら小川の水を使えばいい」
「だよなー。まる1日シャワーも浴びないなんて何年ぶりだろ、酔っぱらって寝たときくらいだな」
「綺麗好きなんだな?それに、コウの世界は水資源も豊富そうだ」
「水大国でもあるからな。一家に一個は風呂があるし毎日入るのは当たり前な感じ。俺の住んでた安アパートでもユニットバスだったから、たまに溜めて入ってたし」
ユニットバスの説明をしながら戻り、テントに着くと火から下ろしていた鍋をまた火にかけ、しばらく煮込み、出来上がると夕食にした。
リンの見立て通り、薄味の野菜スープはあっさりと胃袋に収まった。
ついでに落ち着いてきたからか、パンもおかわりした。
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