神様がくれた奇跡

藤原葉月

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第3話 4日目

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外に出ると、雪がちらついていた。
「・・寒いと思ったら、雪だよ」
さっきまで降っていなかったのに・・・
「おはようございます、涼さん。」
「・・おはよう、竹さん」
「・・今日も、相変わらず早いですね」
「・・あの、竹さん」
「・・やだな~、さん付けなんてしないでくださいよー!俺の方が、年下なんですから」
「・・じゃあ、竹、率直に聞いていい?」
「・・はい、なんでもきいてください!」
「・・・君は、佐里奈ちゃん・・・つまり、サリーちゃんのことが、好き?」
バシャッ
みんなの分の、ペットボトルを、なぜだか、落とす竹。
「・・や、やだなぁ、涼さん、お、俺は別にサリーちゃんのこと・・・」
明らかに動揺している。
かなりわかりやすくて笑える。
「・・あははっ、わかりやすいやつだな、ほんと」
「・・ほ、ほんとです!」
「・・嘘、つかなくていいよ。っていうか隠さなくてもいいよ。バレバレだから。」
「・・か、勘弁してくださいよ~!俺、まだ、彼女に気持ちを、伝えてないんですから!」
「・・いや、安心しろよ、みんなには、ばらしたりしないし」
ばらさなくても、みんな知ってると思うけど(笑)
「・・・俺は、彼女のそばにいれれば、いいんです。」
「・・あぁ、知ってる。お前は、誰にでも平等に、優しいんだろうな。けど、サリーちゃんのことは、ずっと見守ってる。たった、2日間で、そう感じた」
「・・俺って、わかりやすいですか?」
「・とってもね。よく、本人にバレてないよな」
それとも、サリーちゃんが、鈍感なのかな?
「・・・俺、サリーちゃんに一目惚れで・・・」
「・・・そっか。一途なんだな」
「・・彼女は、俺のこと、ただの劇団の仲間としか見ていてくれてないけど・・・」
「・・・・・」
「・・・でも、いいんです。この気持ちが、例え届かないとしても、応援するって、きめたんです。」
「・・・竹は、強いんだな」
「・・強くなんかないですよ。彼女が、好きなのは、和也さんですから。かなわないなぁ~って。」
「・・・えっ?二人は、兄妹だろ?」
「・・・あの二人は、本当の兄妹じゃないんです」
やっぱり、あの二人は、そういうことだったのか。
「・・親同士の、再婚とか?」
「・・いろいろあって、彼女・・・サリーちゃんが、、養子として、和也さんの家に来たんです。」
「・・・養子・・・。なんでまた」
「・・・和也さん、お姉さんとも、血が繋がっていなかったらしいんです。そのお姉さんが、初恋の人だったとか」
「・・・初恋の人だった。」
過去形・・・
しかも、初恋・・・・
(美奈子さんじゃ、ないんだ)
「和也さんは、言ってくれたんです。彼女のことは、好きにならないから安心しろよって」
「もしかして、そのことを、知った上で、サリーちゃんのこと、応援しているのか?」
「はい、それで、いいんです。それで、幸せですから。サリーちゃんの1番の味方でいて、そばにいられるならって、そう思ってるから。」
「・・・・・・」
なんて、純粋なやつなんだ。
「・・お前ら二人、なに油売ってんだよ!練習入るぞ」
あきれた顔で和也が言う。
「・・ごめん、ごめん、すぐいくよ」
「・・すいません、涼さん。なんか、変な話をして」
「・・・俺の方こそ、聞きすぎてごめん。」
「・・えっ?聞きすぎて?」
「・・いや、なんでもない。また、聞かせてくれよ?」
「・・はい、もちろんです」
「和也がうるさいから、行こうか」

そして俺は、おもった。
みんなの事情を、ひとつ聞くたび、おれ自身の事情を、話せなくなっている気がする。
1日、1日が過ぎるたび・・・・
散々、人の事情聞いておいて、俺のこと、知ってもらってないような?

「そういえば、涼さんは、好きな人、いないんですか?」
「・・えっ?俺?」
「・・和也さんが言ってたんですよね~。
たしか、"ヒロコ"って、名前だったような?」
「・・・・!?」
やっぱり聞いていたんだ・・
「あー!赤くなるってことは、図星ですね?」
「・・か、勘弁してよ」
「・・涼さんも、人のこと言えずにわかりやすい人なんですね」
「・・・あ、あいつには、気持ち伝えられずにいるんだ。」
「・・えっ?なんで?俺と一緒じゃないですか?」
「・・・お前とは違うよ。伝えたくても、もう伝えられないんだ」
いまは、伝えてくれば良かったって、後悔しかないから。
「・・すいません!俺また余計なことを!」
「・・いや、いいんだよ。」
俺たちが、なかなか戻らないから、和也が、そばにいて聞いていた。
「"ヒロコ"・・・まさかね」
俺はまだ、気づいていない。
この時代の人たちが、俺にとって、"どんな人たちで、どんな関係がある人たち"なのか
{全然、関係なくはない・・・・だが、それに気づくのは・・・
きっと、終えてからになるだろう"
かみさまは、そう呟いた。
「さすが、涼さん、歌もうまいですね」
「本当に、前のところやめて、こんなところに、きていいのか?」
「こんなところじゃないだろ?まぁ、色々あるからな。」
「それも、そっか。」
「今日の練習は、ここまでよ。みんな、お疲れ様。」
「お疲れ様!」
「そうだ、みんな帰る前に聞いてくれ。せっかく一般公開するんだし、劇団名決めたいんだけど」
「いいじゃん!で?候補とかあるんですか?」
「涼、お前ならどうする?」
「えっ?和也さん、涼さんにいきなり決めさせるんですか?」
「涼なら、いいアイディア持ってそうだし?どうする?」
「じゃあ・・・・」
俺は、かつてつけようとした名前がある。
サリーちゃんが、その花をなぜか持っていた。
「わたしの、一番好きな花なの。花言葉は、"希望"
みんなに、希望の光が、舞い降りますように!」
ヒロコの言葉が、俺の頭に浮かぶ。
「涼?」
「・・・・スノードロップ」
「・・・・」
「・・サリーちゃんが、持ってる花がまさに"それ"」
「えっ?」
和也は、驚いて振り向く。
「いやね、知り合いが凄く好きな花でさ」
「この花がスノードロップって知ってるなんて、すごい!」
「いや、それほどでも」
("弘子"が、好きな花だなんて言えない・・・・)
「スノードロップ・・・・ね」
「・・その知り合いがいうには、冬の一番寒いときに咲く花で、花言葉が"希望"なんだって」
「・・・・・」
「・・なぁんて、全部その知り合いの受け売りってやつ。
男が花について詳しいなんて、おかしいでしょ?」
「・・ってことは、教えてくれた知り合いは、女の人ですね?」
竹が、鋭いことをいってきた。
「・男の人が知ってても素敵だと思うわ」
嬉しそうなサリーちゃん。
「そう?それはどうも」
「知り合いじゃなくて、涼の好きな女じゃないの?」
「・・・いや、あの、それは、聞かないで・・・・」
(わかりやすいやつだな)と、和也は思いながら、
「よし、決定だ」
「決定?」
「劇団名は、"スノウ☆ドロップ"」
そう言って、ホワイトボードに、名前を書いた。
他の候補も聞かないまま・・・・
「いいじゃないですか、今の僕たちにピッタリだ。」
「そうね、"希望をもて"って、ことだよね?」
「涼」
「えっ?」
「お前は、この劇団、"スノウ☆ドロップ"の、希望の花になってくれよ?」
「"希望の花"・・・・」
「そうですよ、涼さん、最後まで頑張りましょう!」
「よし、頑張ろう!」
「あぁ」
俺は、嬉しかった。
俺がいた劇団では、こんなことを言ってもらえなかった。
ずっとずっと探していたのかもしれない。
俺を必要としてくれる場所を。
これが俺の本当の居場所なんだ。






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