それぞれの空~another story~

藤原葉月

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第29話

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あれから3日後・・・・

悟さんは、莉佐さんに近づき・・・・

「莉佐さん。なんで泣いているんですか?あなたは彼に捨てられたのに」
「捨てられたわけじゃ・・・・」
「でも、泣かせてる!しかも、許可なしにキスするなんてありえない」
「でもわたし、彼のことが気になるの。嫌じゃなかったから。なのに彼は、あれから会ってくれなくて・・・。同じ部署に戻ったのに。彼と会いたいのに・・・会えないのが苦しくて辛いの」

それは、それは・・・・莉佐さんがあいつを!

「だからって、僕と別れると言うんですか?」
どんなに思っても、どんなにアプローチしても、彼のことを忘れてしまっても・・・・
この人の心は・・・・

「ごめんなさい・・・。悟さん」
莉佐さんは、その場をさっていった。



「・・・・・なんでだよ!」



そして、莉佐さんは、

「・・・・・」
「・・・・・」
「あっ」
「やっと会えた。おなじ部署にいるのにちっとも会えないんだもん。会おうとしてくれないし?」
「悪いけど、忙しいから」
と、そっぽを向く。

「どうして私の目を見てくれないの?なんで、こっちをみてくれないの?」
「別にいいでしょ?付き合ってるわけじゃないんだし?」
「あんなキスしといて・・・・」

「えっ?だから、あれは・・・・」
そう言ったら彼は振り向いた。
「あれは何?何も無ければしないでしょう?」
「・・・・・・」

ぼくは、怜香さんの言葉を思い出した。

「莉佐ちゃんの笑顔を撮るのよ」
「・・・・・」

「一樹さん?黙ってたらわからな・・・」
「・・・・ここ」

と言ってなぜか地図を渡された。

「3日後にそこに来てくれる?」
また、そっぽを向きながら言われる。

「えっ?」
「僕の最後の仕事。」
「最後って、どうして?」
「カメラマン、やめようと思うんだ。でも最後に・・・。君が結婚してしまう前に君の笑顔が撮りたい。僕は君を泣かせてばかりいたみたいだから」
「・・・・・・」
「必ず来て・・・・」
そう言うと彼は、いつのまにか私を見ていた。

「本当に辞めるの?」
「それは、もう決めたことなんだ。じゃあ、3日後にそこで会おう。必ず来いよ?現地集合で時間厳守な!じゃあ」
と、私の横を通り抜けていった。



そして
「そんなに上手くいくかなー」
と、呟くのは正也さん。
「大丈夫ですって。あの2人なら」
「ねぇ?それより、東さんはなんで髪切ったの?」
「き、気にしないでください」
「ふーん・・・・」

正也さんは、なにかをさっしたようだ。



そして、莉佐さんは舞い散る桜を見ていた。

「桜はもうおしまいかしら?」
声をかけたのは・・・・

「怜香さん・・・・」
「お疲れ様。斎藤君からのラブレターはもうもらったかしら?」
「あの、わたしこの地図の場所を知ってる気がします」
「そう。それなら好都合かもしれないわ」
「えっ?」
「あなたが、忘れている何かを思い出させてくれるきっかけになるといいわね」
「でも、彼は・・・私のせいでカメラマンを辞めようとしてます」
「莉佐ちゃん・・・・」

「私にそこへ行く資格はあるのでしょうか。彼にはカメラマンを辞めて欲しくないです。」
そう言う彼女を、怜香さんは
「大丈夫よ、莉佐ちゃん。きっと、きっと、思い出せるから。奇跡ってやつを信じてみない?」
そう言って肩に優しく手を置いた。
「・・・・・・はい」
果たして上手くいくのだろうか?


そして3日後・・・・・

「えーっと、どうやって行くんだっけ?」
と、迷子になりかけてる一樹さん。大丈夫かなー。

「あっ!タクシー」
「よし!引っ掛かった!」
と、車を出す正也さんと・・・

「あの?いいんですか?僕も同乗して・・・・」

「いいの、いいの。任せろ」
「はい」
と、一樹さんの前に止まり・・・・


「あの?乗ってもいいんですか?タクシー・・・じゃないですよね?」
「はい、どうぞ。乗り合いになりますが。」
「・・・・?」
不思議そうな顔をする一樹さん。
やべぇ。
「個人タクシーみたいなものなので。お客さん、どこまで行くの?」
「えーっと・・・桜台・・・?まで」
「あー、お客さん・・・。もうそこ桜はないですけどよろしいですか?」
「えっ?桜?」
「(ちょっと、正也さん・・・ストレートすぎますって)」
「(大丈夫。)」
「・・・・・?」
助手席の人は知り合いかなー?

「いや、実はねこの時期まだ、どうしても花見をしたいって人が多くて・・・」
「いえ、僕は花見をしに行くわけじゃ・・・・」
確かに、桜咲いていれば最高ですけど・・・・

「でも、いいカメラ持ってるじゃないですか。ってことは、なにかを撮影しに行くってことでしょう?」
「いえ、これは仕事ですので・・・・」
「そうですか」
普通にタクシーの運転手のように話しかける正也さんと、一樹さんとのやりとりに
(バレてないのがすごい)
と思う東さん。

「・・・・・僕の最後の仕事なんですよ」
と、ふと呟いた一樹さん。
「えっ?さい・・・」
思わず叫びそうになった東さんを制して
「なんかわけアリなんですね」
と、なぜか話に上手く入る正也さん。
「ある女性の撮影に・・・・」
「へぇー。それってもしかして、その方は好きな方だったりしませんか?」
「えっ?」
「いえ、なんとなくそんな気がするだけです。では、改めて・・・」
「あっ、あの・・・・この場所分かりますか?」

と、地図を見せられる。
(ふっ😏やっぱりここか・・・よし)
と何故かドヤ顔する正也さん。
キャラ変わってますよね?

「お客さん、ちょっと時間かかりますが任せてください」
「・・・・・・(僕は乗ってる意味あるのかなぁ・・・・)」
と思う東さん。


「任せます」
と、まだ、彼らの正体に気づかない一樹さん。
何も疑ってはいないようだ。
バレるのも時間の問題かもしれないけど・・・・。

そのころ、莉佐さんは・・・・

「莉佐さん」
「悟さん、ありがとう」

悟さんと別れを決意し、そして少し迷っていた。

この場所へ行くべきかどうか。
けれど、怜香さんが
「彼を思い出させてくれるきっかけになるといいわね」

その言葉が頭にあった。



そして、何も話さず車は進んでいた。

東さんはモヤモヤしていた。
(な、なんか話さなきゃ)


「・・・・・・・」
窓の景色を見る一樹さん。

(正也さん、なんか話してくださいよー)
(ごめん、運転中だから東さん、よろしく)
と、なぜかこそこそ話す前の2人。

「あ、あの・・・・」
なにか話しかけようとした東さんだが、
「あの?本当に知っているんですか?」
ちょっと疑ってきたようだ。

「・・・・・」
「あなたは一体誰なんですか?人の話を・・・・聞き出すなんて・・・」

と、キッ
車を停めた正也さん。 
「そんなの、プライバシー損害だ」
と、一樹さんは運転手(正也さん)のサングラスを取った。

すると、
「えっ?Σ(゚д゚;)正也・・・・・」
ようやく運転手の正体に気づき・・・
 「ごめんなさい、一樹さん。」
「・・・と、東さんまで?えっ?なんで、正也、なんでお前たちが・・・・」

「お前さぁ、毎日ラジオで俺の《声》、聞いてるくせにわからなかったんだ」
と、正也さんは、冷静に対応。

どうやら作戦通りではあったみたいだ。
「いや、似てるかなとは思ったけど・・・・」

「まぁ?声色変えていたからな。これも、作戦のうちだ。いや、大成功だわ。」
「っていうか、なんで2人がここに?」

「はぁ(´Д`)ハァ…お前がこないだから様子おかしいし、俺ん所にちっとも来てくれないから色んな人に聞いたんだ」
「・・・・・えっ・・・・」
「1番思ったことは、お前がカメラマンを辞めようとしているんじゃないかって」
「正也さん、すごく心配していたんだよ?」
「・・・・・余計なお世話だよ」
「お前さぁ、そんな中途半端な気持ちでカメラマンをやっていたのか?」
と、少し喧嘩腰になってきた。
「ま、正也さん・・・・」

東さんは、止めようとしているが・・・

「そんな簡単に辞められるのかよっ!」

と、叫ぶ。
「僕には合わなかったんだよ・・・」


冷静に返す一樹さん。
こんな2人見たことない。

「お前!」
と、胸ぐらを掴みかけて・・・

「喧嘩はやめて!
「あのね?聞いて、一樹さん。この場所のことをすごく調べていたのは正也さなんだよ?」
「えっ?」
「西田さんにも、西田さんのお兄さん達にも調べてもらったりして・・・・・」

「・・・・・」
「本当は、一緒に仕事をしたかったけど今の一樹は輝いてるって。だから、続けてほしいって」
「・・・・・・・」
正也さんは、一樹さんの胸ぐらを掴むのを辞めた。

「正也さん、一樹さんの事務所にも電話して、お願いしたんだよ?
一樹さんには、カメラマンを辞めて欲しくないって」
「・・・・・・・」

「もちろん、僕達もそう思ってるし、応援してる。けど、1番応援してくれているのは正也さんなんじゃないかな?」


と、東さんは、ニコリと笑う。


「ここに、写真飾りたいんだ。力貸してくれるか?」
「モザイクアートってどう?」

そんな二人は、別の仕事をしていても、いいコンビネーションだった。

「お前さぁ、人に笑えって言っておいて自分が笑わないのはなんでだよ」
「・・・・・・」
「莉佐さんのことがあったからだよね?一樹さんがなんで自分に莉佐さんの事を相談してくれなかったんだって、ショック受けていたんだよ?」
「・・・・一樹、俺は・・・・」

「正也・・・・東さん・・・・ありがとう・・・・そして、ごめん・・・・」


大事な仲間を失うところだった。
こんなにいいヤツらがいたんだった。

「もうすぐつくから・・・・」

「もういいんだ。莉佐のことは・・・・」
「諦めるなよ、一樹」
「そうだよ、一樹さん!!」


と、二人は、僕の背中を押してくれる。

なんていいヤツらなんだ。


そのころ、莉佐はもう現地に着いていて・・・・・

「・・・・・・」
「わーい!桜だ!!」
「えっ?桜・・・・・」

「そこは、桜が綺麗なところだから。きっと、最高の笑顔が撮れると思う」

莉佐は、進んで行った。

「今年は咲いたね!」
「ここが最後かもねー」

観光客がそんなことを言ってる。

そして、莉佐さんの脳裏に・・・・



「私ね、卒業したらカメラマンになる。
ねぇ?一樹は?」
「うーん、先のことはわからないや」


そんなセリフがなぜだか頭の中に流れてきた。
「ふふっ、一樹らしいね」

「この桜だけは残るみたいだな」
「ねぇ?約束。いつかここで満開の桜を見ようね」


「うん」


その約束をした人・・・・

《ねぇ?一樹・・・》

そう言ってるのは私・・・・


「・・・・・一樹・・・・・」


ザワっ
そのは名前を呟いた途端、桜がざわめいた。

時が止まったかのように・・・・・。


「・・・・わたし・・・・」


莉佐さんは、なにかを感じたみたいだ。


そのころ、一樹さんも現地に着いた。
「ありがとう、正也。東さんも・・・。話聞いてくれて。嬉しかった」
「ねぇ?本当に辞めちゃうの?」
「・・・あぁ。次の職種探すよ」
「一樹・・・。あと一つだけ言っておくよ」
と正也さんは、一樹さんをじっと見つめた。

「えっ?」

「愛してるって、ちゃんと言葉で言えよ?」
゙「えっ?」

「(ぇ━(*´・д・)━!!!)」

「い、いや。今言わないと、こ、後悔するかなって💦は、恥ずかしいから何度も言わねぇけど(あー、言ってて恥ずかしくなってきた)」
「あはは!なんで正也が赤くなってんだよ」
「う、うるさい!!」
「でも、ありがとう。なんか元気でたよ」
「き、きっと、大丈夫だよ!一樹さん、頑張って💪」
と、なぜかガッツポーズを送る東さん。
「ねぇ?東さん、それ自分にも言ってるの?」
「えっ?Σ(゚д゚;)」
「あはは!次は、東さんの番だな」

「いや、僕はいいんです」
「えっ?Σ(゚д゚;)いいって。(なんでみんな遠慮がちなんだよ)」
「あの2人の邪魔をする訳には・・・・・」

「ふーん」

複雑な恋してんだなぁー。
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