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第24話
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あれから3日も経っていた。
「・・・・・・」
一樹さんは、黙々と仕事を続けている。
「一樹先輩!」
そこへ後輩のめぐみちゃんが近づき
「めぐみちゃん」
仲良く話し始めた。
「これ、どうですか?」
「いいね👍それ」
そしてそれをタイミングよく見てしまったのは、莉佐さん。
「・・・・・・」
どうしてだろう。あの2人を見ていると・・・・わたし・・・・
ぼーっとしていたら、
「あら?莉佐ちゃん。来てくれたのね」
怜香さんに声をかけられた。
「あの、あの二人って・・・・」
2人をチラ見しながら・・・・
「あー、めぐみちゃんと斎藤くん?」
「この間から、仲良いなぁと思っていましたけど・・・・、もしかして、付き合っているんですか?」
「あら、気になるの?」
「あっ、別にそういうわけでも・・・」
と、はっきりしない莉佐さん。
「じゃあさぁー直接彼に・・・斎藤くんに聞いてみれば?」
「えっ?」
何故か戸惑う莉佐さんだったが・・・・
「えーっと・・・」
資料室に彼が入るのを見計らって
「あのー?」
と、声をかけた。
すると
「うわっ!びっくりした」
と驚かれた(笑)
「ごめんなさい」
「って、なんだよ、莉佐かよっ」
「あの?どうして私を名前で?」
「どうしてって。半年も一緒に働いていたから当然でしょう?っていうか、当たり前・・・。それとも、他に理由知りたいの?」
と、詰め寄ってみると
「わたしと一樹さんって・・・」
「そう、幼なじみだよ。(さん付けか。)今も、昔も・・・」
「あの、それだけですか?」
「そう、それだけ・・・・(そんなわけないじゃん)」
「なに?元幼なじみとか言おうか?」
「幼なじみに元はつけません」
(そんなの当たり前だろ。これからも、莉佐は僕の幼なじみだ)
一樹さんがそう思っているとは知らず・・・
「じゃあ、めぐみちゃんと付き合っているの?」
「はぁ?誰がそんなことを?(まさか悟さん?)」
「だって、仲良く話していたし・・・」
「べつに?彼女とは、先輩後輩の仲だよ。付き合っているように見える?」
「じゃあ、他に好きな人いるとか?」
「・・・・・」
「いるんですか?」
「・・・・いるよ」
《えっ》
私の胸になぜだかグサリと来た。
「今でもそいつが好きだよ・・・・。なかなか【好きだ】って言う一言が言えなくて・・・・。本当は、会いたくて会いたくてたまらない人だ」
と、かれは、私を真っ直ぐに見て言う。
「・・・・・・」
けれど彼は・・・・なぜだか悲しそうで・・・・
「僕の話はここまでだ。ちゃんと仕事に戻れよ?じゃあな」
と、資料室を出ていこうとする一樹さん。
どうして?どうしてそんな悲しそうで切なそうな顔をするの?
「・・・・・えて・・・・」
「えっ?」
何かを言われた気がしたから振り向いてみると、思ったよりも近くに莉佐がいて・・・・
「莉佐?・・・どうした?」
「教えてください、一樹さん」
「えっ?」
ドキンと、胸がなる。
なにを?
まさか僕のことを?
「私、知りたいんです。」
「知りたい?」
「あなたがどんな写真を撮るのか知りたい・・・・」
「えっ?僕の写真?(なんだ、写真のことか)」
「それなら・・・」
と、言おうとしたところに・・・・
「莉佐さん!」
現れたのは、悟さん。
やっぱり、話させてくれやしないよな。
「なんでいつもいなくなるんですか?」
ジロっと僕を見ながら、莉佐さんに詰め寄る悟さん。
「莉佐、途中で仕事抜け出してきたのか?ダメじゃないか」
「だって、どうしてもあなたのことを・・・思い出せなくて」
「えっ・・・・」
「他の人のことは知ってるのに・・・。だから、あなたの事を思い出したいの」
「・・・・・」
「悪いけど、莉佐さんに余計なこと」
「ぼくは、まだ何も言ってないし、話してないよ?(幼なじみだとは言ったけど)そっちから、来たんだから・・・・」
「一樹さん・・・・」
「じゃあ、そういうことなんで。莉佐、じゃあな」
「一樹さん!」
悟さんにただ、引っ張られていく莉佐を見ないようにして去ってきた。
「莉佐さん、どうしてあいつの所へ行くんですか?」
「悟さん、どうして彼に会っちゃいけないの?彼は私の幼なじみなんだよね?」
「あなたの婚約者はこの僕なんだ!あいつには絶対渡さないから!」
そう言って、莉佐さんを、きつく抱きしめた。
そして、ぼくは
「ねぇ?斎藤くん!」
「怜香さん。どうしました?」
「莉佐ちゃんに会えた?さっきまでいたよね?」
「・・・いましたよ?」
「何も話さなかったの?」
「話しましたよ?けど、悟さんが探しに来て連れていかれました・・・・」
と、淡々と言われ、
「・・・・えっ?」
「悟さんに、何故か怒られて・・・。相当怒ってて・・・。きっともう会いに来れない・・・いや、会いにこないと思います。」
「斎藤くん・・・・それでいいの?」
「えっ?なにが?」
「・・・・・莉佐ちゃんとのこと・・・・」
「あっ、ねぇ?それより怜香さん、オメデタなんですよね?」
「えっ?どうしてそれを」
「だって、衛とは、マブダチだし」
「・・・・・・」
「僕の心配なんかしないで、自分の心配してくださいよ。これからが大事なんでしょう?」
「・・・・でも」
「僕の場合は、散々アイツに冷たくしていたんで・・・きっとバチが当たったんですよ」
「・・・・そんな」
「神様が言ってるんですよ・・・・。
《もう、忘れろって・・・》」
どこかで聞いたセリフ。
これは、榊さんも言っていた言葉だ。
同じ状況ではないけれど・・・・同じ気持ちになっているようだ。
「怜香さん、お疲れ様。無理しないでくださいね」
精一杯の笑顔を向けてぼくは、怜香さんを見送った。
怜香さんは、会社を出ようとした所で衛と出くわした。
衛は、不思議に思った。自分より早く帰っているはずなのに・・・。
「どうしたの?怜香さん・・・。今日は、早退したはずじゃ?」
「衛・・・・あの二人を・・・・・」
なぜだか泣き始めた怜香さん。
どうやら、一樹さんたちのことを、心配しすぎているようだ。
「怜香さん?大丈夫ですか?」
「・・・あの二人を・・・遠ざけてしまったのは私のせいね、きっと・・・」
なぜか、責任を感じているらしい。
「えっ?ちょっと待ってどうして?」
「ねぇ?衛・・・。どうしたらあの二人を戻せる?」
「怜香さん・・・・」
衛さんは、怜香さんを抱きしめた。
そして言った。
「あの二人は、きっといつか戻ります。そう、ぼくは信じてる」
と、彼女の手を握り言う衛さんは、とても心強い。
「でも、莉佐ちゃんは、悟さんと・・・・」
このままじゃ、悟さんと結婚してしまうかも・・・・。
「忘れたんですか?あの二人を繋ぐ写真のことを。あの二人を、引き会わせたのは、紛れもなく、怜香さんの写真集なんです。そりゃあ、1枚だけ違う写真だったとは今更いえなくなってるけど・・・でも、それこそが2人を結びつけたんだ。怜香さんだって、ずっと信じていたじゃないですか。あの二人が、いつか本当に結ばれることを!きっと、戻りますよ!いや、戻してみせる」
と、ハッキリと言う衛さんはとても頼もしく見えた。
「ごめんなさい、衛・・・わたし・・・・」
「怜香さん、少し働きすぎたんですよ。これからは、休んでください。俺がそばにいますので・・・・」
「ありがとう、衛」
2人はしばらく抱き合い、衛は、仕事へ、怜香さんは、家に戻っていった。
一樹さんは、ぼーっと歩いている。
その後ろに正也さんがいて・・・
「一樹!前!」
「・・・・・・」
聞いていないようだ。
「一樹!前見ろ!」
さらに叫ぶ!
「えっ?Σ(゚д゚;)」
やっと気づいたようだ。
「えっ?正也?正也が呼んだのか?」
「もちろんだ。今世紀最大の声を出したよ。お前さ、壁に激怒する気か?ちゃんと前見て歩けよ」
「いやーあはははー考え事しててさぁー」
「お前さぁ、なんかあっただろ」
「えー?なにもないよー?あはは」
ゴン
壁にぶつけた。
「・・・ったく。ほら、入れよ・・・」
と、店のドアを開ける。
なぜか考え事しているのに、ここに来てしまった。
何故だろう。
誰かに聞いてほしくなったのか?
「
「あのさぁ、正也・・・・」
一樹さんは、何かを言いかけていたが・・・
「ただいまー」
と、入っていく正也さん。
「おかえりなさい、正也さん。」
と、和葉さんが迎えてくれて・・・
「・・・・と、斎藤さん?」
「・・・どうも、こんばんは。」
「こんばんわ!」
「あっ、そうだ。一樹・・・暇か?」
「暇かって・・・暇なわけ・・・・」
「ここ、1週間後にオープンさせるつもりでいるから。手伝えよ?」
「えっ?なにを?」
やっぱり、わかっていなかったか。この前泥酔していたもんな。
「カフェひまわり・・・へぇー」
「ここに、来てくれた人の写真を、飾ろうかなぁって。あっ、でも・・・・いつか貼る場所無くなるか」
「・・・・写真ね・・・。」
「お前に写真を撮ってもらおうかなぁって思っていたんだけど・・・・忙しいよな?」
「・・・・・あっ!そうだ」
「えっ?なに?」
「モザイクアートでも作る?」
「なにそれ」
「パソコンある?」
「あるわよ」
「例えばー・・・・」
と、パソコンをサクサクと動かし・・・
「これなんかは、ネットで募集した写真をー・・こんなふうに・・・」
と、操作してみせると
「うわぁーすげぇ!」
と、感嘆する正也。
「・・・そんなに感動する?」
「するよー。でも、できるならやってみたい。一樹、ありがとう」
「・・正也こそ凄いよ」
「えっ?何がだよ」
「それに比べてぼくは・・・・・」
となぜだかおちこむ。
「なぁ?やっぱりなんかあったんだろう。壁に激突しそうなくらい考え事するなんてさ」
「・・・・・・」
「一樹?」
「・・・・ごめん、今日は帰るよ。ちゃんと、手伝いにくるし、モザイクアート上手くできるようにも考えてくるからさ」
と、ニコリと笑った。
「あ、あぁー・・・じゃあ気をつけて帰れよ」
「うん、じゃあおやすみ」
と、みせからでていった。
「あれ?斎藤さんは?」
和葉さんは、スコーンを試食してほしくて用意してくれたみたいだが
「・・・今日は、帰るってさ」
「そう、残念」
「じゃあ、俺がいただくよ」
「はい。じゃあどうぞ」
ひと口食べた正也さんは
「うまい!」
と、素直に感想を言った。
「よかった」
2人は、そのあと掃除の続きをした。
「《ねぇ?榊さん》」
そのころ、東さんはききたいとおもっていたことを、聞こうとしていた。
《えっ?どうしました?》
「《あのさ、榊さんって、凛子ちゃんと・・・・》」
付き合うの?
そう質問をしようとしたのだろう。
だが、
ピンポーン
なぜか、このタイミングで来客。
《あっ、来たみたいですよ?》
「《えっ?誰が?》」
《その、凛子さんが》
「《えっ?どういうこと?》」
そう、来客は
「こんにちは!榊さん、大地君」
《いらっしゃい》
「凛子ちゃん・・・・」
本当に、凛子さんだった。
驚きを隠せない東さん。
「《あの・・・わたし、ここに来てもいいの?》」
「えっ?来ていい?」
ますますなんの事か分からない。
「《もちろんですよ》」
「《ねぇ?榊さん、どういうこと?》」
《彼女に、他にも部屋は空いてるって言ったんですが・・・・・僕のそばにいたいって言ってくれたんです》
「・・・・・・・」
何も言えない東さん。
《東さんもいるから、男二人の部屋にどうかとは思ったんですが・・・東さん、迷惑でした?》
「《まって?今の話の流れからすると・・・・2人は、もしかして?》」
「・・・・・・」
「付き合うの?」
思わず手話を忘れてしまった。
《あっ・・・・》
「・・・・・」
「《・・・否定しないし・・・・》」
「・・・・・」
「《なぁんだ。それなら、僕は邪魔になるじゃないですか。今からでも出ていきますよ?》」
「・・・・・」
「《いえ、いてください》」
と言ってくれる榊さん。
《東さんは、健常者なのでいてくれた方が助かります》
《・・・・健常者》
そうか、ぼくは健常者になったんだ。
《ここは、叔父と叔母が将来の為にとこんな広い家と部屋を用意してくれて・・・・
感謝はしていますが耳が不自由な僕には広すぎます・・・・。1人じゃなくなるならぼくはそれだけで嬉しいです。》
「榊さん・・・・」
「ワンワン」
《あはは!ごめんごめん、ラッキーも一緒ですよ?》
「・・・・・」
榊さんの優しさが伝わってきた。
「《今日は、腕を振るいます!2人とも、待っていてくださいね?》」
と、キッチンの方へ行った榊さん。
「ねぇ?大地君・・・。私ね、彼を支えてあげたいの。彼に再会してからずっとそう思っていた」
「・・・・凛子ちゃん・・。うん、そうだねそうしてあげて・・・・・」
{ぼくは、凛子ちゃんが笑顔でいてくれればそれでいいよ}
凛子ちゃんを見つめながらそう思った。
そして
(今日は、ご馳走ですゆよ?)
「《ねぇ?手伝わなくて大丈夫?》」
《2人は座っていてください》
「《え?でも・・・・》」
(いいから、いいから》
そして並べられていく料理。
「うわー!美味しそう」
《たくさん食べてくださいね》
3人は、改めて乾杯をした。
そしてそのころ、正也さんは西田さんに連絡をしていた。
様子がおかしかったので西田さんに理由を聞こうとしていたのだ。
「えっ?莉佐さんが?」
「えっ?正也さん、何も聞いてないんですか?(本当に誰にも話してないんだ)」
「・・・そうだったんですね・・・。教えてくれて、ありがとう。{だから、あんなに落ち込んでいたんだ}」
「どうしてこんなに大事なこと、正也さんに話さなかったんだろう」
「・・・西田さん、しばらくは二人を見守るしかなさそうですね」
「そうだな。あいつがちゃんと話してくれるまで待つしかないかな・・・」
そして、
「それでさぁ」
「くすくす、おかしいね」
なぜだかめぐみは、男といる。
「めぐみ・・・?」
一緒にいるのは、たしか同僚の住田ってやつ。
「悟さん?」
「はぁ、見せつけやがって」
「彼女は、悟さんの幼なじみですか?」
心做しか怒っているように見える。
「えっ?なんでそう思う?」
「違うんですか?」
「そうですけど?それが何か」
「やっぱり、そうなんですね・・・・」
「別にあいつとは何もないですよ?信じてください」
「なにもいってないけど・・・・」
「・・・・・・」
「わたし・・・・」
「それより、最近の莉佐さんはおかしいですよ。」
「えっ?」
「あんなに生き生きとした写真を撮っていたのに!原因は、もしかして幼なじみのあの男ですか?だったら・・・・」
「・・・・・・わからない」
「えっ?」
「わからないの・・・・」
「今でもそいつが好きだよ」
そういった時の彼の悲しそうな顔が忘れられないから・・・・
「悟さん、少し考えさせて欲しいの。私が本当にあなたを好きだったのか。あの彼と・・・一樹さんとは、本当に何もなかったのか」
真剣な顔をする莉佐さんに、降参したのか・・・
「わかったよ。勝手にしろよ」
「ごめんなさい」
そう言って、悟さんは先に帰ってしまった。
それぞれの恋は、それぞれの形で進んでゆくのだった。
「・・・・・・」
一樹さんは、黙々と仕事を続けている。
「一樹先輩!」
そこへ後輩のめぐみちゃんが近づき
「めぐみちゃん」
仲良く話し始めた。
「これ、どうですか?」
「いいね👍それ」
そしてそれをタイミングよく見てしまったのは、莉佐さん。
「・・・・・・」
どうしてだろう。あの2人を見ていると・・・・わたし・・・・
ぼーっとしていたら、
「あら?莉佐ちゃん。来てくれたのね」
怜香さんに声をかけられた。
「あの、あの二人って・・・・」
2人をチラ見しながら・・・・
「あー、めぐみちゃんと斎藤くん?」
「この間から、仲良いなぁと思っていましたけど・・・・、もしかして、付き合っているんですか?」
「あら、気になるの?」
「あっ、別にそういうわけでも・・・」
と、はっきりしない莉佐さん。
「じゃあさぁー直接彼に・・・斎藤くんに聞いてみれば?」
「えっ?」
何故か戸惑う莉佐さんだったが・・・・
「えーっと・・・」
資料室に彼が入るのを見計らって
「あのー?」
と、声をかけた。
すると
「うわっ!びっくりした」
と驚かれた(笑)
「ごめんなさい」
「って、なんだよ、莉佐かよっ」
「あの?どうして私を名前で?」
「どうしてって。半年も一緒に働いていたから当然でしょう?っていうか、当たり前・・・。それとも、他に理由知りたいの?」
と、詰め寄ってみると
「わたしと一樹さんって・・・」
「そう、幼なじみだよ。(さん付けか。)今も、昔も・・・」
「あの、それだけですか?」
「そう、それだけ・・・・(そんなわけないじゃん)」
「なに?元幼なじみとか言おうか?」
「幼なじみに元はつけません」
(そんなの当たり前だろ。これからも、莉佐は僕の幼なじみだ)
一樹さんがそう思っているとは知らず・・・
「じゃあ、めぐみちゃんと付き合っているの?」
「はぁ?誰がそんなことを?(まさか悟さん?)」
「だって、仲良く話していたし・・・」
「べつに?彼女とは、先輩後輩の仲だよ。付き合っているように見える?」
「じゃあ、他に好きな人いるとか?」
「・・・・・」
「いるんですか?」
「・・・・いるよ」
《えっ》
私の胸になぜだかグサリと来た。
「今でもそいつが好きだよ・・・・。なかなか【好きだ】って言う一言が言えなくて・・・・。本当は、会いたくて会いたくてたまらない人だ」
と、かれは、私を真っ直ぐに見て言う。
「・・・・・・」
けれど彼は・・・・なぜだか悲しそうで・・・・
「僕の話はここまでだ。ちゃんと仕事に戻れよ?じゃあな」
と、資料室を出ていこうとする一樹さん。
どうして?どうしてそんな悲しそうで切なそうな顔をするの?
「・・・・・えて・・・・」
「えっ?」
何かを言われた気がしたから振り向いてみると、思ったよりも近くに莉佐がいて・・・・
「莉佐?・・・どうした?」
「教えてください、一樹さん」
「えっ?」
ドキンと、胸がなる。
なにを?
まさか僕のことを?
「私、知りたいんです。」
「知りたい?」
「あなたがどんな写真を撮るのか知りたい・・・・」
「えっ?僕の写真?(なんだ、写真のことか)」
「それなら・・・」
と、言おうとしたところに・・・・
「莉佐さん!」
現れたのは、悟さん。
やっぱり、話させてくれやしないよな。
「なんでいつもいなくなるんですか?」
ジロっと僕を見ながら、莉佐さんに詰め寄る悟さん。
「莉佐、途中で仕事抜け出してきたのか?ダメじゃないか」
「だって、どうしてもあなたのことを・・・思い出せなくて」
「えっ・・・・」
「他の人のことは知ってるのに・・・。だから、あなたの事を思い出したいの」
「・・・・・」
「悪いけど、莉佐さんに余計なこと」
「ぼくは、まだ何も言ってないし、話してないよ?(幼なじみだとは言ったけど)そっちから、来たんだから・・・・」
「一樹さん・・・・」
「じゃあ、そういうことなんで。莉佐、じゃあな」
「一樹さん!」
悟さんにただ、引っ張られていく莉佐を見ないようにして去ってきた。
「莉佐さん、どうしてあいつの所へ行くんですか?」
「悟さん、どうして彼に会っちゃいけないの?彼は私の幼なじみなんだよね?」
「あなたの婚約者はこの僕なんだ!あいつには絶対渡さないから!」
そう言って、莉佐さんを、きつく抱きしめた。
そして、ぼくは
「ねぇ?斎藤くん!」
「怜香さん。どうしました?」
「莉佐ちゃんに会えた?さっきまでいたよね?」
「・・・いましたよ?」
「何も話さなかったの?」
「話しましたよ?けど、悟さんが探しに来て連れていかれました・・・・」
と、淡々と言われ、
「・・・・えっ?」
「悟さんに、何故か怒られて・・・。相当怒ってて・・・。きっともう会いに来れない・・・いや、会いにこないと思います。」
「斎藤くん・・・・それでいいの?」
「えっ?なにが?」
「・・・・・莉佐ちゃんとのこと・・・・」
「あっ、ねぇ?それより怜香さん、オメデタなんですよね?」
「えっ?どうしてそれを」
「だって、衛とは、マブダチだし」
「・・・・・・」
「僕の心配なんかしないで、自分の心配してくださいよ。これからが大事なんでしょう?」
「・・・・でも」
「僕の場合は、散々アイツに冷たくしていたんで・・・きっとバチが当たったんですよ」
「・・・・そんな」
「神様が言ってるんですよ・・・・。
《もう、忘れろって・・・》」
どこかで聞いたセリフ。
これは、榊さんも言っていた言葉だ。
同じ状況ではないけれど・・・・同じ気持ちになっているようだ。
「怜香さん、お疲れ様。無理しないでくださいね」
精一杯の笑顔を向けてぼくは、怜香さんを見送った。
怜香さんは、会社を出ようとした所で衛と出くわした。
衛は、不思議に思った。自分より早く帰っているはずなのに・・・。
「どうしたの?怜香さん・・・。今日は、早退したはずじゃ?」
「衛・・・・あの二人を・・・・・」
なぜだか泣き始めた怜香さん。
どうやら、一樹さんたちのことを、心配しすぎているようだ。
「怜香さん?大丈夫ですか?」
「・・・あの二人を・・・遠ざけてしまったのは私のせいね、きっと・・・」
なぜか、責任を感じているらしい。
「えっ?ちょっと待ってどうして?」
「ねぇ?衛・・・。どうしたらあの二人を戻せる?」
「怜香さん・・・・」
衛さんは、怜香さんを抱きしめた。
そして言った。
「あの二人は、きっといつか戻ります。そう、ぼくは信じてる」
と、彼女の手を握り言う衛さんは、とても心強い。
「でも、莉佐ちゃんは、悟さんと・・・・」
このままじゃ、悟さんと結婚してしまうかも・・・・。
「忘れたんですか?あの二人を繋ぐ写真のことを。あの二人を、引き会わせたのは、紛れもなく、怜香さんの写真集なんです。そりゃあ、1枚だけ違う写真だったとは今更いえなくなってるけど・・・でも、それこそが2人を結びつけたんだ。怜香さんだって、ずっと信じていたじゃないですか。あの二人が、いつか本当に結ばれることを!きっと、戻りますよ!いや、戻してみせる」
と、ハッキリと言う衛さんはとても頼もしく見えた。
「ごめんなさい、衛・・・わたし・・・・」
「怜香さん、少し働きすぎたんですよ。これからは、休んでください。俺がそばにいますので・・・・」
「ありがとう、衛」
2人はしばらく抱き合い、衛は、仕事へ、怜香さんは、家に戻っていった。
一樹さんは、ぼーっと歩いている。
その後ろに正也さんがいて・・・
「一樹!前!」
「・・・・・・」
聞いていないようだ。
「一樹!前見ろ!」
さらに叫ぶ!
「えっ?Σ(゚д゚;)」
やっと気づいたようだ。
「えっ?正也?正也が呼んだのか?」
「もちろんだ。今世紀最大の声を出したよ。お前さ、壁に激怒する気か?ちゃんと前見て歩けよ」
「いやーあはははー考え事しててさぁー」
「お前さぁ、なんかあっただろ」
「えー?なにもないよー?あはは」
ゴン
壁にぶつけた。
「・・・ったく。ほら、入れよ・・・」
と、店のドアを開ける。
なぜか考え事しているのに、ここに来てしまった。
何故だろう。
誰かに聞いてほしくなったのか?
「
「あのさぁ、正也・・・・」
一樹さんは、何かを言いかけていたが・・・
「ただいまー」
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「・・・・写真ね・・・。」
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「・・・・・あっ!そうだ」
「えっ?なに?」
「モザイクアートでも作る?」
「なにそれ」
「パソコンある?」
「あるわよ」
「例えばー・・・・」
と、パソコンをサクサクと動かし・・・
「これなんかは、ネットで募集した写真をー・・こんなふうに・・・」
と、操作してみせると
「うわぁーすげぇ!」
と、感嘆する正也。
「・・・そんなに感動する?」
「するよー。でも、できるならやってみたい。一樹、ありがとう」
「・・正也こそ凄いよ」
「えっ?何がだよ」
「それに比べてぼくは・・・・・」
となぜだかおちこむ。
「なぁ?やっぱりなんかあったんだろう。壁に激突しそうなくらい考え事するなんてさ」
「・・・・・・」
「一樹?」
「・・・・ごめん、今日は帰るよ。ちゃんと、手伝いにくるし、モザイクアート上手くできるようにも考えてくるからさ」
と、ニコリと笑った。
「あ、あぁー・・・じゃあ気をつけて帰れよ」
「うん、じゃあおやすみ」
と、みせからでていった。
「あれ?斎藤さんは?」
和葉さんは、スコーンを試食してほしくて用意してくれたみたいだが
「・・・今日は、帰るってさ」
「そう、残念」
「じゃあ、俺がいただくよ」
「はい。じゃあどうぞ」
ひと口食べた正也さんは
「うまい!」
と、素直に感想を言った。
「よかった」
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「《ねぇ?榊さん》」
そのころ、東さんはききたいとおもっていたことを、聞こうとしていた。
《えっ?どうしました?》
「《あのさ、榊さんって、凛子ちゃんと・・・・》」
付き合うの?
そう質問をしようとしたのだろう。
だが、
ピンポーン
なぜか、このタイミングで来客。
《あっ、来たみたいですよ?》
「《えっ?誰が?》」
《その、凛子さんが》
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「こんにちは!榊さん、大地君」
《いらっしゃい》
「凛子ちゃん・・・・」
本当に、凛子さんだった。
驚きを隠せない東さん。
「《あの・・・わたし、ここに来てもいいの?》」
「えっ?来ていい?」
ますますなんの事か分からない。
「《もちろんですよ》」
「《ねぇ?榊さん、どういうこと?》」
《彼女に、他にも部屋は空いてるって言ったんですが・・・・・僕のそばにいたいって言ってくれたんです》
「・・・・・・・」
何も言えない東さん。
《東さんもいるから、男二人の部屋にどうかとは思ったんですが・・・東さん、迷惑でした?》
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「・・・・・・」
「付き合うの?」
思わず手話を忘れてしまった。
《あっ・・・・》
「・・・・・」
「《・・・否定しないし・・・・》」
「・・・・・」
「《なぁんだ。それなら、僕は邪魔になるじゃないですか。今からでも出ていきますよ?》」
「・・・・・」
「《いえ、いてください》」
と言ってくれる榊さん。
《東さんは、健常者なのでいてくれた方が助かります》
《・・・・健常者》
そうか、ぼくは健常者になったんだ。
《ここは、叔父と叔母が将来の為にとこんな広い家と部屋を用意してくれて・・・・
感謝はしていますが耳が不自由な僕には広すぎます・・・・。1人じゃなくなるならぼくはそれだけで嬉しいです。》
「榊さん・・・・」
「ワンワン」
《あはは!ごめんごめん、ラッキーも一緒ですよ?》
「・・・・・」
榊さんの優しさが伝わってきた。
「《今日は、腕を振るいます!2人とも、待っていてくださいね?》」
と、キッチンの方へ行った榊さん。
「ねぇ?大地君・・・。私ね、彼を支えてあげたいの。彼に再会してからずっとそう思っていた」
「・・・・凛子ちゃん・・。うん、そうだねそうしてあげて・・・・・」
{ぼくは、凛子ちゃんが笑顔でいてくれればそれでいいよ}
凛子ちゃんを見つめながらそう思った。
そして
(今日は、ご馳走ですゆよ?)
「《ねぇ?手伝わなくて大丈夫?》」
《2人は座っていてください》
「《え?でも・・・・》」
(いいから、いいから》
そして並べられていく料理。
「うわー!美味しそう」
《たくさん食べてくださいね》
3人は、改めて乾杯をした。
そしてそのころ、正也さんは西田さんに連絡をしていた。
様子がおかしかったので西田さんに理由を聞こうとしていたのだ。
「えっ?莉佐さんが?」
「えっ?正也さん、何も聞いてないんですか?(本当に誰にも話してないんだ)」
「・・・そうだったんですね・・・。教えてくれて、ありがとう。{だから、あんなに落ち込んでいたんだ}」
「どうしてこんなに大事なこと、正也さんに話さなかったんだろう」
「・・・西田さん、しばらくは二人を見守るしかなさそうですね」
「そうだな。あいつがちゃんと話してくれるまで待つしかないかな・・・」
そして、
「それでさぁ」
「くすくす、おかしいね」
なぜだかめぐみは、男といる。
「めぐみ・・・?」
一緒にいるのは、たしか同僚の住田ってやつ。
「悟さん?」
「はぁ、見せつけやがって」
「彼女は、悟さんの幼なじみですか?」
心做しか怒っているように見える。
「えっ?なんでそう思う?」
「違うんですか?」
「そうですけど?それが何か」
「やっぱり、そうなんですね・・・・」
「別にあいつとは何もないですよ?信じてください」
「なにもいってないけど・・・・」
「・・・・・・」
「わたし・・・・」
「それより、最近の莉佐さんはおかしいですよ。」
「えっ?」
「あんなに生き生きとした写真を撮っていたのに!原因は、もしかして幼なじみのあの男ですか?だったら・・・・」
「・・・・・・わからない」
「えっ?」
「わからないの・・・・」
「今でもそいつが好きだよ」
そういった時の彼の悲しそうな顔が忘れられないから・・・・
「悟さん、少し考えさせて欲しいの。私が本当にあなたを好きだったのか。あの彼と・・・一樹さんとは、本当に何もなかったのか」
真剣な顔をする莉佐さんに、降参したのか・・・
「わかったよ。勝手にしろよ」
「ごめんなさい」
そう言って、悟さんは先に帰ってしまった。
それぞれの恋は、それぞれの形で進んでゆくのだった。
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