上 下
96 / 173
3*

43

しおりを挟む
「失礼するよ」

教室に入ってきたのは僕のお父様だった。
子供に威圧を与えないようにする為に、お父様は笑顔のままでいる。

格好は滅多に見られない騎士服を着ていて、ピシッとした姿だった。
その服装でお父様の仕事中に呼んでしまったみたい。

髪型も整えていて騎士の仕事と、謁見の予定もあったんだろう。

「ネヴィレントこの机、何したの?」

「話し合う気が全くなかったので、机に伏せて嘘泣きしている坂蔵さんを机毎ひっくり返す返しました」

「そうなんだね。女の子に手を出すのはダメだけど、今回だけは許してもいいかな」

愛はお父様に見惚れているのか、ポッと頬を赤くしてお父様をじっと見つめている。
こいつ顔さえ良ければなんだっていいのか?

お父様にはお母様がいるからそんな邪な思いは一切叶わないけどね。

「君がネヴィレントを殺そうとした坂蔵愛くんかな?」

お父様が愛の前に片膝をつきながら、僕を殺そうとした事を聞いている筈なのに、重大な内容を聞かれている立場の筈なのにお父様をじっと眺めている。

「その、お名前をお聞きしてもいいですか…?」

「質問に答える気はないのかな?」

会話を成り立たせる気がないのか、それとも自分の欲望に忠実であるが故に会話が成り立たないのか入って僕にはわからない。
この不可解な行動にお父様はまだ笑顔で対応している。

「君が私の質問にしっかりと答えられれば、君の質問にも答えてあげる」

「本当ですか!?」

「ああ、本当だよ。君と違って私は誠意を持って接しているからね」

お父様が愛をすごく見下した発言をしているけど、愛はそれに一切気が付いていない。
一目惚れというどうでもいいその姿に吐き気を覚えた。

僕のお父様だからという理屈ではなく、重要な話をしているのにも関わらずそのふざけた行動を取れることに苛立ちしか感じなかったし、吐き気も覚えていた。
本当にこれが人を殺そうと思った人が出来る行動なのか?

「答えるからもう一回質問を言ってくれる?」

正気かこいつ。

「なんで君はネヴィレントを殺そうとしたのかな?質問に答えてくれる?」

「殺そうとしたってよりかはー、エルフ?に渡された紙をネヴィレントに貼り付けてってお願いされただけだよ?まあ、死ぬのは知っていたけどね?」

エルフに頼まれていたのか。
ここにまで手を伸ばしていたとは、どこにエルフの手下が隠れているかも定かではないからかなり気にしなければならない。

しかし、僕が死ぬのを知っていたとはどういう事だ?
僕は子悪党令息として最後まで役割が決まっているはずだ。

何か小説と違うことがあったのだろうか?
それとも小説の後に続編だったり、ゲーム化でもしたのだろうか。

ゲーム化が行われていれば僕の死に方は相当数あるだろう。
そうなれば僕の死は色々とあるという事?

小説の通りであれば僕にも回避する事ができるけど、ゲーム化している内容であれば僕はそれを回避できる術がない。
何せゲーム化となればオリジナルストーリーや、様々なエンドストーリー等用意されているだろう。

それを考えた瞬間僕は余りにもゾッとしてしまった。
そんな事を知っているのに、僕に手を下すことを厭う事なくその判断を下せてしまう愛にも恐れしか無い。

「そうか、君はネヴィレントが死ぬと分かっていて手を掛けようとしたんだね。私の息子を、そんなくだらないお願い如きで殺そうとしたんだね」

「え、息子?ネヴィレントが?え?」

お父様と僕はそこまで似てないけど、その反応を今ここでする必要はない。
今はどうやってとてつもなく怒っているお父様との対応をしっかりとするべき事だと理解すべきだ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」  ワタクシ、フラれてしまいました。  でも、これで良かったのです。  どのみち、結婚は無理でしたもの。  だってー。  実はワタクシ…男なんだわ。  だからオレは逃げ出した。  貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。  なのにー。 「ずっと、君の事が好きだったんだ」  数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?  この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。  幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。

嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。 一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。 最終的にはハピエンの予定です。 Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。 ↓↓↓ 微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。 設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。 不定期更新です。(目標週1) 勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。 誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

処理中です...