上 下
88 / 173
3*

35

しおりを挟む
音が聞こえた先を見ると何故か帯刀していた剣の柄が粉々になっていた。
お父様ってどんな怪力の持ち主なんだ!?

忘れがちだったけど、お父様この国で一番強い人だった。
人間族でありながら他種族を退けて最強の称号を持っていて、精霊池の守り手にまで上り詰めた人だ。

だから簡単に柄を粉々に出来たのだろう…
いやいやいや!!

お父様が嬉しそうに話していたけど、この世界で一番硬い鉱石で作られた剣だって言っていたよね!?
柄までその鉱石で作られたとか言っていたよね!?

本当に人族であるか疑いしか思い浮かばない。

「それはそれは、そんなに国同士との抗争を起こしたかったのですね。ネヴィレントはハーフエルフでありますが、伯爵令息でもあります。伯爵令息に手を掛けるというのは、国家間の戦争を望んでいると思っていらっしゃると考えられてもおかしくないのでは?」

お父様の低い声が応接室に酷く響いた。
エルフは答えられないのか、黙ったままの状態を貫いている。

「レガリオ様お答えできないのでしょうか?」

「大変申し訳ございません。襲撃の件もこちらに伺う際に知った事でして、国家間の戦争につきましては失礼ながら私は存じ上げません」

今度はバキンっと鈍い音がして、柄が…というか柄だった場所が完全に無くなってしまっていた。
お父様その剣どうやって再度調達されるのでしょうか?

「制約がなければ私はすぐにでも其方らの首を切って、エルフ族に対しての宣戦布告を行っただろう。制約がある事に感謝するが良い」

エルフ族は特殊な種族でもある為、礼節を持って接する事が重要視されている。
お父様がその礼節を無視して対応している時点で、礼節を弁える必要がないと判断されたんだろう。

「そちらのハイエルフ殿に話を聞けばわかる事か?」

お父様が礼節を無視して話ている姿を見たことがない。
それぐらいお父様がエルフに対して怒っている事だけが分かった。

「父上にお聞きいただければわかるかと思いますが…、いかんせん最近ハイエルフの中でも立場が危ういので捨て駒にされた可能性はございますので、詳細の確認ができない可能性がございます」

「問題ない。場合によっては一度制約を解いてもらった上で対処する」

制約というのがなんなのか分からない。

「そ、それだけはどうかおやめください!」

その制約というのがエルフに対して何か作用があるものだろう。
どれだけその制約がお父様に大きな枷を課しているのだろうか。

「制約を解くことについては、そちらの発言によって対応する。懇願があっても理由次第では制約を完全に解かせてもらう」

「かしこまりました…。父上は放心しております故、しっかりと回答させるように私が介助致します」

お父様がハイエルフのところまで行くと、まさかの足蹴にして放心しているハイエルフを正気に戻した。

「何をするんだ!高貴なハイエルフに手を出すとは!」

手ではなく出されたのは足だけど…
そんなくだらない事を言えば、お父様に怒られる可能性があるから口に出さないでおく。

「高貴か。子供の命を奪うような手段を用いている時点で、高貴も何もないのが理解できないのか?」

「人間如きが生意気を言っているんじゃないぞ!私はハイエルフのウルベルティ家当主であるぞ!」

「だからなんだと言うんだ。我が国の貴族に手を出して問題ないと思っているのか?外交問題にも上がる事を聡明なハイエルフに分からないとは言わせない」

お父様まで煽るような言葉を言っている。
僕の煽る言葉を言うのまさか前世からじゃなくて、お父様の遺伝だったんだ。

「ハイエルフに手を出した事を後悔するが良い!精霊様からのご加護を賜る事ができないだろう!」

その精霊様僕の近くで浮遊してるし、お父様大好きだからすっごい数の精霊がいるんだけど。
このハイエルフ精霊眼持ってないんだ…

精霊に鎮まるように言っていたけど、見えてない状態で叫んでいたと思うと哀れだと思う。
精霊に愛されていないハイエルフ程惨めでしかないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

婚約破棄と言われても・・・

相沢京
BL
「ルークお前とは婚約破棄する!」 と、学園の卒業パーティーで男爵に絡まれた。 しかも、シャルルという奴を嫉んで虐めたとか、記憶にないんだけど・・ よくある婚約破棄の話ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。 *********************************************** 誹謗中傷のコメントは却下させていただきます。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...