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「ほほっ、精霊眼まで授かったのかのぉ」

学院長お爺さんは楽しそうに聴いている。
その反対側ではレラッサ先生は表情が死んでいる。

真反対すぎる反応の場にいる僕たちかなり気まずいなー。
ハルトも雰囲気が理解できなくて、僕にずっとしがみついている。

「精霊の悪戯に、精霊眼となればエルフ達が…特にハイエルフ達が黙っとらんじゃろうの。精霊の悪戯は他種族にもあることだからと容認しておったが、精霊眼だけは何を言ってくるか計り知れぬ。場合によっては、その子の命は危ういと言えるだろう」

なんて?
僕の命が危ない?

どうして、望んでいないものの為に僕の命が危なければならないの?
煩くて敵わない、現にケタケタと笑って僕達を馬鹿にしている精霊これをエルフは崇拝でもしているの?

「我ら人間族や他種族にとって精霊は世界の礎という定義はあるが、崇拝する対象ではない。だがエルフの中でもハイエルフは自然を大事にしている故に世界の礎である精霊を崇拝する。その中でも精霊眼を持つものは特に大切に育てられる。わしでも一文字だけ目にしたことがあるが、多種族の精霊眼持ちは尽く消されておる」

「それは、ハーフエルフでも、ですか?」

うまく声が紡げない。

「ハーフエルフもハイエルフ達にとっては部外者なのだろう。もれなく消されおる」

昔に一度だけお母様の親戚というエルフ族の方にあったことがある。
ハーフエルフである僕を見た時には穢れた存在のような目で見られた覚えがある。

その時は一言も話しかけられなかった事も覚えてる。
種族差別を大人から受けるをこういうものであるのも知ったのはその時。

「じゃあ、そのハイエルフの糞共をぶっ飛ばせばいいんですね?」

「レラッサ先生簡単に言っておるが、ハイエルフ達は魔法と弓に長けている種族だが対応できるのかね?」

学院長お爺さんの話にレラッサ先生は鼻ではっと笑った。
そのまま足を机の上に置き、腕を胸の前で組んで不遜な態度をとってみせた。

「私は平民です。ですから、数年前の戦争にも参戦してきました。それゆえに何度かハイエルフ共をぶっ殺してきましたが、あの程度のハイエルフなら私とっては児戯に等しい程でしょう。汚い事を知らぬ、高潔な存在様には私が持つ術は通る」

「そうじゃったの…要らぬ心配をしたものよ。だからこそレラッサ先生を今のSクラスの担任へとのじゃからの」

学院長お爺さんはレラッサ先生の行動に何も言わずに淡々と話続けている。
数年前の戦争の事は覚えている。

2歳の時に起こった獣人族との間で戦争が起こったんだ。
その時にお父様も戦争に騎士団を率いて出陣したのを覚えている。

獣人族至上主義を掲げる獣人族が起こした戦争で、その戦争で色んな種族達もかなり巻き込んだ戦争だったけど、規模の大きさの割には一年という短さで終息した戦争だった。
色々な憶測が飛び交ったけど、結局戦争が始まった理由も終戦した理由もほとんど分からない戦争だった。

その中にまさかハイエルフ達まで参加していたなんて。
何か裏がありそうで怖い。

「さて、レラッサ先生や机から足をどかして貰えぬかの?その足をどかしてもらえれば今日壊した机の弁償は無かったことに…」

学院長お爺さんが言い切る前に机の上に乗っていた足が下に降りていた。
レラッサ先生ったらげんきーんって思っていたらポコっと小突かれた。

「ほほ。それではよろしく頼むのレラッサ先生」

「かしこまりました。それでは、また後日お伺いいたします」

レラッサ先生と、ハルト、僕が学院長お爺さんのところから出るとレラッサ先生が盛大なため息を吐いた。

「今日聞いたことは誰にも話すなよ?先生の職務は正しくは先生ではないからな」

「分かりました。でも、僕にとって先生は先生ですから、そこは変わらないと思っています」

「ぼ、僕にとっても先生は先生です!」

ハルトと僕はレラッサ先生にそう告げると、レラッサ先生は困った表情を浮かべた後恥ずかしそうに笑ってくれた。
その後は僕達はかなりの時間を使って、各所に説明という名の擁護を求める事を話しまわった。

日数もかなりかかったけど終わった頃には3人共へとへとだったけど、その後にやってくるテストに苦笑いするしか無かった。
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