上 下
48 / 173
2

22

しおりを挟む
届いたお菓子は最早芸術に見えた。
食べるのが憚れるけど、食べたいものだからパクッとマカロンを一口食べるとふわっと柔らかい甘みが広がった。

美味しくて、一口また一口と進めていくと手元にあったマカロンはいつの間にかなくなっていた。
お皿に乗っているマカロンは僕が食べたものを含めると4個。

1人二つだと考えると、さっきの勢いで食べてしまったのを後悔した。
マカロンはまた後で食べるとして、先に口の中をリセットするために紅茶を飲んだ。

キャンディという名前とは違って、普段飲んでいた紅茶よりとってもマイルドで飲みやすいものだった。
このキャンディっていう紅茶も美味しい。

お家に帰った時にもお父様とお母様にお話ししてみよう。
口の中がリセットされて次にクッキーを手に取った。

クッキーに何か練り込まれている。
どんな味がするのか楽しみに思って一口齧ると、オレンジのドライフルーツが練り込まれていた。

若干酸味の残ったオレンジと、クッキーの甘さが合わさってとても美味しく感じる。
しつこくない甘さでいくらでも食べれそうだ。

サクサク食べているとあっという間に減って、後数枚になってしまっていた。
ハルト様の分まで食べてしまったのではないかと慌てたけど、ハルト様は頬一杯にクッキーを詰め込んでいた。

リスみたいなことその姿に笑ってしまって、ハルト様に拗ねられてしまったけどその姿も可愛くてまた笑ってしまった。
グリグリと頭を擦り付けられるけど、それすらも可愛くてほわっとした気持ちがした。

「ザインハルト様とネヴィレント様はとても仲良しですわね。その仲睦まじい姿は羨ましいぐらいですわ」

レザリアにそう言われた途端パッとハルト様が僕から離れた。
ハルト様がしゅんとしていて、頭の上に垂れた犬耳が見える気がする。

「あらあら、そんなにしゅんとなされないでくださいまし。あまり逢瀬をされてしまいますと、他の生徒達には目に毒なのですわ」

レザリアの目が笑っていると表情が全く笑っているように見えない。

「あらあら、なんでそんな表情をしていらっしゃるんですの?」

お母様そっくりで怖いです!!

「レザリアだめだよ?寮に戻ったら一緒にお話ししよ?」

「アルフレッドがそう言うのならば仕方がないわね」

ツーンとした感じでいたけど、アルフレッドと2人きり?で話す機会を得て嬉しそうにしている。
レザリアから逃れられて助かったと思って、ハルト様の方を見るとまだ子犬の様にぷるぷると震えていた。

よっぽどレザリアの事が怖かったんだね。
ハルト様の頭を撫でると、はっと気がついて僕にまた甘え始めてきた。

ハクとヴェルベルトは2人で何やら談笑しており楽しそうにしている。
アゼルとクラウゼンはレザリアの標的にならないようにしながらいちゃついている姿が見えた。

いちゃついているというよりかはほぼクラウゼンの食事の介護に見えるけど、これが2人にとっては日常的であるし蜘蛛人のアゼルにとって給餌行動は愛情行動の一つだと言っていた。
多種多様なイチャコラと談笑を繰り広げながら、僕たちはカフェテリアの食事に舌鼓をうった。


「あのカフェテリアの食事は最高でしたわね。今後も利用したいと思いますが皆様はいかがでしょうか?」

「良いのではないでしょうか?品もありつつ、最高の食事をいただける場でもあるのですから、たまの憩いの場として有用だと思いますわ」

「右に同じく」

「私もここの食事を大変気に入りました。皆様とまたご一緒できればと存じます」

「僕もみんなとまた一緒に食べたいです」

「そうだね。次はテラス席で暖かい日差しの元で頂きたいね」

全員が賛同の言葉を述べ、みんなで集まって談笑または休憩をする時に利用する事が決定した。
このカフェテリア後に知ることになるのだが、実はSクラス且つ特待生枠のものしか利用できない場所であったそうだ。

それを知るのはかなり後の時であるが、この条件を誰も落ちることなく過ごせていたので問題にはならなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」  ワタクシ、フラれてしまいました。  でも、これで良かったのです。  どのみち、結婚は無理でしたもの。  だってー。  実はワタクシ…男なんだわ。  だからオレは逃げ出した。  貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。  なのにー。 「ずっと、君の事が好きだったんだ」  数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?  この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。  幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

処理中です...