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「なんでここにいる」
話しかけられて僕はやっと意識を現実に戻せた。
なんでって言われても僕はなんでここにいるか分からない。
「分かんない…」
「分からない訳がないだろ。ここはツェーリア伯爵家が所有している妖精の森だ」
「僕のところ?」
妖精の森がこんなに鬱蒼な森なんて知らなかった。
「ツェーリア伯爵の子息という事は…ネヴィレント・ツェーリア伯爵令息か?」
「うん…。でもなんで僕の事を知ってるの?」
「父上からよくお前の話を聞いていた」
その返事に僕は実際に会ったことがある大人の貴族を考えた。
まずはレムナント侯爵に、大公殿下…数えるまでもなく大人の貴族に会ったのはこの二人だけだ。
考えられるのは大公殿下ぐらいだけど…、大公殿下のご子息なのかな?
「ふむ…父上がこちらに来るようだ。ネヴィレント伯爵令息、父上に会ったことはあるか?」
「えっと…大公殿下でお間違いなければ、お会いしたことはあります」
「そうか父上にお会いしたことがあるのならば問題ない。では父上が来るまでに怪我の手当をしようか」
怪我?
僕怪我した覚えはないんだけど。
大公令息に両手を取られ、やっと僕の指が血だらけになっていることを知った。
怪我をしていると認識してからじわーっと痛くなってきた。
「水流」
大公令息の手から水が出てきて、僕の指についている土を洗い流してくれる。
ピリピリと傷に染みて痛い。
「ふうぇ…」
何時もなら耐えられるのに、精神が削れすぎてて簡単に泣いてしまった。
「泣くな。目が溶けて落ちるぞ」
普通なら歯が浮くほどの言葉なのに、大公令息に言われると何故かしっくりきた。
ぼろぼろと溢れてた涙はひゅんっと引っこんだ。
土を水で流し終わったら、胸ポケットから真っ白なハンカチを出して僕の手を拭いてくれた。
白いハンカチが濡れて、じんわりと赤くなっている部分もできてきた。
しっかりとハンカチで拭き終わってから、僕の指先がじんわりと赤らんできた。
薄皮が捲れている程度だけど、範囲が広すぎたみたいで赤く見える。
ぼうっと指を見ていると、手が持ち上げられて指が大公令息の口の中に入った。
え?食べられ…
「にゃあああああ!?!?」
なんで食べてるの!?
いやあああ!!!なんか舐められてる!?吸われてる!?
ぶんぶんと手を振って解こうとしたけど、力が強くて全く解けない。
「はなっ、離してえええ!!びええええ!!」
予想だにしない事に対応し切れなくて泣くしかできなくなった。
側から見ればカオスな状況が出来上がったけど、僕はもう周りとか気にする余裕がない。
泣いて、指を口から出せるようにするために頑張ってるけど全然出ない。
「びゃっ!?噛んだ!?噛んだよね!?」
ガリって嫌な音したし、痛かったし!!
普段の僕とか知らない!!
痛いし、怖いし!!
最初は紳士的だったのに急にこんな事するなんて聞いてない!!
「何してるんだ…お前らは…」
「殿下あぁぁぁあああ!!!」
「むぐむぐ」
指を口に入れたまま離さないで!
「ラグザンド、ネヴィレントの指を離して上げなさい」
「ひひゃへふ」
嫌じゃなくて離すの!
「みゃっ!??」
何故か抱き上げられて動けないようにされた。
抱き上げられるのと同時に、やっと指が解放された。
べちょーとしてる感覚はあるけど、舐められていた方の指の怪我は何故か治っていた。
「私のにする」
「はい?」
「え?」
「これ、私の」
3人いるのにかなり長い間静まり返ってしまった。
僕の頭に鼻をつけて匂いを嗅がないで。
「ラグザンドどうにもできない事を言わないでくれ。ネヴィレントには婚約者がいるんだ」
「殺せばいなくなる。それで問題ない」
怖いことをさらっと提案しないで。
「妻に教育を任せていたが…良かったのか悪かったのか…少し妻とも話す必要があるな」
大公殿下推し負けないで!?
僕の貞操観念が崩壊してしまう可能性あるから!
心の叫びが爆発した気がする。
話しかけられて僕はやっと意識を現実に戻せた。
なんでって言われても僕はなんでここにいるか分からない。
「分かんない…」
「分からない訳がないだろ。ここはツェーリア伯爵家が所有している妖精の森だ」
「僕のところ?」
妖精の森がこんなに鬱蒼な森なんて知らなかった。
「ツェーリア伯爵の子息という事は…ネヴィレント・ツェーリア伯爵令息か?」
「うん…。でもなんで僕の事を知ってるの?」
「父上からよくお前の話を聞いていた」
その返事に僕は実際に会ったことがある大人の貴族を考えた。
まずはレムナント侯爵に、大公殿下…数えるまでもなく大人の貴族に会ったのはこの二人だけだ。
考えられるのは大公殿下ぐらいだけど…、大公殿下のご子息なのかな?
「ふむ…父上がこちらに来るようだ。ネヴィレント伯爵令息、父上に会ったことはあるか?」
「えっと…大公殿下でお間違いなければ、お会いしたことはあります」
「そうか父上にお会いしたことがあるのならば問題ない。では父上が来るまでに怪我の手当をしようか」
怪我?
僕怪我した覚えはないんだけど。
大公令息に両手を取られ、やっと僕の指が血だらけになっていることを知った。
怪我をしていると認識してからじわーっと痛くなってきた。
「水流」
大公令息の手から水が出てきて、僕の指についている土を洗い流してくれる。
ピリピリと傷に染みて痛い。
「ふうぇ…」
何時もなら耐えられるのに、精神が削れすぎてて簡単に泣いてしまった。
「泣くな。目が溶けて落ちるぞ」
普通なら歯が浮くほどの言葉なのに、大公令息に言われると何故かしっくりきた。
ぼろぼろと溢れてた涙はひゅんっと引っこんだ。
土を水で流し終わったら、胸ポケットから真っ白なハンカチを出して僕の手を拭いてくれた。
白いハンカチが濡れて、じんわりと赤くなっている部分もできてきた。
しっかりとハンカチで拭き終わってから、僕の指先がじんわりと赤らんできた。
薄皮が捲れている程度だけど、範囲が広すぎたみたいで赤く見える。
ぼうっと指を見ていると、手が持ち上げられて指が大公令息の口の中に入った。
え?食べられ…
「にゃあああああ!?!?」
なんで食べてるの!?
いやあああ!!!なんか舐められてる!?吸われてる!?
ぶんぶんと手を振って解こうとしたけど、力が強くて全く解けない。
「はなっ、離してえええ!!びええええ!!」
予想だにしない事に対応し切れなくて泣くしかできなくなった。
側から見ればカオスな状況が出来上がったけど、僕はもう周りとか気にする余裕がない。
泣いて、指を口から出せるようにするために頑張ってるけど全然出ない。
「びゃっ!?噛んだ!?噛んだよね!?」
ガリって嫌な音したし、痛かったし!!
普段の僕とか知らない!!
痛いし、怖いし!!
最初は紳士的だったのに急にこんな事するなんて聞いてない!!
「何してるんだ…お前らは…」
「殿下あぁぁぁあああ!!!」
「むぐむぐ」
指を口に入れたまま離さないで!
「ラグザンド、ネヴィレントの指を離して上げなさい」
「ひひゃへふ」
嫌じゃなくて離すの!
「みゃっ!??」
何故か抱き上げられて動けないようにされた。
抱き上げられるのと同時に、やっと指が解放された。
べちょーとしてる感覚はあるけど、舐められていた方の指の怪我は何故か治っていた。
「私のにする」
「はい?」
「え?」
「これ、私の」
3人いるのにかなり長い間静まり返ってしまった。
僕の頭に鼻をつけて匂いを嗅がないで。
「ラグザンドどうにもできない事を言わないでくれ。ネヴィレントには婚約者がいるんだ」
「殺せばいなくなる。それで問題ない」
怖いことをさらっと提案しないで。
「妻に教育を任せていたが…良かったのか悪かったのか…少し妻とも話す必要があるな」
大公殿下推し負けないで!?
僕の貞操観念が崩壊してしまう可能性あるから!
心の叫びが爆発した気がする。
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