子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
上 下
114 / 120
2

55

しおりを挟む
私たちも部屋に戻って各自ソファやベッドなどでくつろぎ始めた。
私は母上が言っていた言葉。

これは多分今回の話が原因で、宰相が何かしらの対策をしてくるのではないのかと考えたのだろうか。
母上から貰ったネックレスの魔石を触り続けた。

小さな魔石なのにかなりの魔法が詰め込まれている。
ただ宰相からの返事を待っている時間は不思議と緊張や不安などは全くなかった。

「お母様がくれた物はなんだったの?」

イディが私の側で触っているネックレスを覗き見に来ていた。

「かなりの魔法が詰め込まれている。ここでどんな内容は話す事はできないが、何かあれば必ず私の元に駆け寄って欲しい」

「わかった。逃げる時はアデライトも一緒だよね?」

「どうだろうか。場合によっては私たちは犯罪者になってしまうから、アデライトを巻き込む訳にはいかないから連れて行けないかもしれない」

「そんな事を言われると悲しいね。私は絶対について行くからね」

アデライトもイディと同じように私の側に来ていた。

「置いて行ったら絶対に許さないからね?」

置いて行けば見つかった時はかなりめんどくさい事になりそうだ。

「逃げるときは私の側にくるんだ。どんな状況になっても納得してもらうからな?」

「勿論だよ。私はホロの側にいる事ができればそれでいいよ」

もし逃げるとなるとどこが良いのだろうか。
本物の聖女がいる帝国は距離が近いから、帝国は逃げ場としては最適ではない。

倭国という独特の文化を築いた国もあるみたいだが、その文化がどのような発展を遂げているか不明である。
一応の候補として入れておこう。

他にいい候補がないかと考えていたら、扉を叩く音がした。

「私です。入っても宜しいでしょうか?」

宰相の声であるのを確認し、精霊を使って本当に宰相なのか確認をしてもらった。
精霊によって宰相であることと、一人で来ている事の確認が取れたから入るように声をかけた。

「失礼致します」

あの万能な侍従を連れずにどうして一人で来たのだろうか。

「急な訪問申し訳なかったです。どうしてもお聞きしたい事がありましてこちらに伺いました」

宰相の聞きたい事、その言葉に体が勝手に身構えた。
同時に体が強張ったのをイディに察知されて、宰相から姿を隠すかのように私の前に立った。

「そんなに警戒なさらないで下さい。とって食おうと考えているわけではありませんから」

宰相はソファに腰を下ろし、私たちの方にしっかりとした視線を向けてきた。

「今回の件ですが、ホロくんの内容は一切伝えず国が保管している聖女の記録を元にハーレライト令嬢の体が乗っ取られたという事になりました。そしてハーレライト子爵の罰はなくなり、領地も子爵に返還される事になりました」

領地が戻るのであればあの面倒くさい貴族達を相手にしなくてもいいという事だな。
それが知ることができて満足だ。

「そしてホロくんと、ネヴィレント・ツェーリアとラグザンド・ツェーリアにも罰は下りません。陛下にも報告済みとの事と、教皇陛下も存じていたというのが大きな点になりました」

私たち家族には何も罰が下らないのはありがたかった。
でも宰相の表情は何故かニコニコと笑っている。

「そして魔王であるホロくんを繋ぎ止める為に、アデライトくんとの婚約期間を終了とし、結婚する事が決まりました」

完全に私への嫌がらせで行動しているだろう!?
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

しば犬ホストとキツネの花屋

ことわ子
BL
【相槌を打たなかったキミへ】のスピンオフ作品になります。上記を読んでいなくても理解できる内容となっています。 とりあえずビッグになるという目標の元、田舎から上京してきた小太郎は源氏名、結城ナナトと名乗り新人ホストをしていた。 ある日、店の先輩ホストであるヒロムが女の人と歩いているのを目撃する。同伴もアフターもしないヒロムが女の人を連れていることが気になり、興味本位で後をつけることにした小太郎だったが──

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息 就職に失敗。 アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。 自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。 あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。 30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。 しかし……待てよ。 悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!? ☆ ※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。 ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

処理中です...