子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

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「お二方の表情から読み取ろうとしたのですが…、さすがと言わざるおえない表情管理ですね」

宰相様に褒められているのに褒められている気が全くしない。

「私たちも歴とした貴族子息ですから、表情管理ぐらいできて当たり前です」

「もう少し本来の子息ぐらいであれば微笑ましかったのですが…。逆にその表情が仇になると考えたことはないのですか?」

「何をおっしゃられているか分かりかねます。まるでホロが魔王だと断言されたお言葉に私たちが狼狽えないといけない、とおっしゃっているように聞こえます」

アデライトと宰相様の言葉の応酬が激しくなっていく。
僕がこの言葉の応酬の間に入らなくてよかったと思う。

本当にこういうところでは全く役に立たないのが悔しい。

「それは申し訳ありません。それで、ホロくんは魔王なのか、それとも違うのかお答え頂けますか?」

は魔王ではありません。これが答えになります」

アデライトから紡がれた言葉は否定の言葉だった。

「お答え頂きありがとうございます。ホロくんの情報が少しでもあればよかったのですが、お二人からはほとんど得られませんでしたね」

情報を得ることができなかったのに、宰相様の表情は何故かにこやかだ。
特にこれ以上宰相様からの質問はくる事がなく、ホロが戻ってくるまで僕たちは侍従が入れた紅茶を飲み続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

母上と父上に事情を話して、王宮に来てもらう事になった。
代わりに私に課題が課せられる事になったが。

約束ができたからそれを伝えるために、宰相の書斎まではや歩きで向かった。
問題なく書斎まで辿り着き、扉をノックする前に侍従によって扉が開かれた。

「どうぞお入りください」

書斎に入れば特に会話している様子もなく、三人ともゆっくりと紅茶を飲んでいる。

「ホロくん結果はいかがでしたか?」

「母上と父上二人であればお受けできる、との事です」

「ラグザンド様の過保護は相変わらずですね」

父上の母上への過保護は昔から変わっていなかったのか。

「何時起こしになられますか?」

「宰相様の御都合がよろしい時に伺うというか話しておりました」

「そうでしたか。それでは私の手の者に申し伝えますので、すぐにここにくると思います」

特に宰相が伝えた様子もない。
そうなると私たちの会話を聞いている人がここにいる人以外にいるのだろう。

今回結界をしなかった事がそういうことで、尚且つその言葉を母上と父上にもきっと聞かせているだろう。
先に精霊を通じて聞いておいて正解だった。

先に宰相が魔王である事を疑っている事を、先に伝えておけば宰相の手の者がどのように伝えても母上も父上も動揺はしないだろう。
母上も父上もそんな事では動揺しないことは知っているが、予め知っていた方が少しの感情の動きも出てこないだろうか。

人によっては感情の機微を感じ取りやすい者もいるから用心するに越したことがない。
先手を打ったと考えているだろう宰相を騙せたら良いのだが。
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