子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
上 下
104 / 120
2

45

しおりを挟む
「今日はホロの晴れ舞台だよ。今ここで魔王だってバレてしまえばイディだけじゃなく、ツェーリア伯爵子息夫妻も糾弾されてしまう可能性がある。だからどうか家族の為に怒りを抑えて」

アデライトの考えはわかるけど、どうしてもあいつらを許すことができない。
頑張って塞いでいる手を剥がそうと必死になる。

「ホロごめんね」

口を塞がれたままテラス迄連れて行かれた。
漸く塞がれていた口が解放された。

「何故邪魔をした!あいつらはこの世界には必要のない存在だ」

「確かに必要のない存在だと思うよ。でもここで事を起こして仕舞えば、ホロだけじゃないホロの家族も沢山傷つく事になるんだ」

「私が全てを殺して仕舞えば問題ないだろう。アデライトお前は魔王の降臨を願っていたではないか」

「願ってはいたよ、君に出会った当初は。でも今は魔王とか関係なくホロの事だけを愛しているんだ」

少したじろいでしまった。

「ホロが私にもイディにも向き合えていない事もわかっている。でも、私もイディもずっと前からホロの事を愛しているんだ。だからホロが悲しむ結果に繋がる事は起こして欲しくない」

真剣に私の事も、家族の事も気にしてくれている。

「本当はホロの手をこれ以上汚して欲しくもない。でも、君には今後職務もあるからそれをいうのは私の我儘だと知っている。だから私は職務以外で手を汚す姿は見たくないんだ」

「わ、私は…」

アデライトの話に何も返してあげることができない。
どう返してあげるのか正解がわからない。

「困惑させてしまったね。今日のパーティは早めに退出させてもらおう」

「宰相との話が…」

「それは明日でもできるよ。今はその感情を抑えなきゃいけないからね」

私が普段と違って何かおかしい所でもあるのか?
いらない物を殺そうとしただけなのに。

「ホロ今笑っているのに気がついていないの?」

その言葉に私は自分の頬や口元を触った。
アデライトの言葉通り、私の口角は上がっていて笑っている。

ただ貴族の笑い方ではなくて、力を振ると知った時の狂気じみた笑みだ。
私は先ほどの貴族達を殺せる事に喜びを感じていたのか?

「漸く気がつけたようだね。多分魔王としての気質は残ったままだから、人を殺す事に愉悦を感じてしまうんだろうね」

納得せざるを得ない内容だった。
魔王としての存在のままで私はホロとして生まれ落ちた。

だから魔王の気質は残ったままになってしまったのかもしれない。

「感情を落ち着けるのは難しいから、表情がコントロールできるようになってからここから出ようか」

すまない。
そんな言葉を紡ぐ価値は私にあるのだろうか。

ただアデライトはそれ以上話す事もなく、私が落ち着くまでずっと側にいてくれた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息 就職に失敗。 アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。 自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。 あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。 30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。 しかし……待てよ。 悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!? ☆ ※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。 ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。

処理中です...