子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

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侍従に案内された場所は王城の地下にある牢屋だった。
私が知っている牢屋とは違って、明るく匂いは全然しない。

「この様な場所にお連れしてしまい大変申し訳ございません。まだ内密のお話になるのですが、魅了魔法の使い手を捕獲する事に成功致しました」

一体いつの間に魅了魔法の使い手を捕まえたんだろう。
私の聴力が届く範囲外で行われていたんだろうか。

「捕まったのであれば良い事なのに、何故そのように険しい顔をしているんだ?」

「捕まえたまではよかったのですが、その後に問題が発生してしまったのです。何故か尋問も拷問も全て行えなく、情報を出させる事ができなかったのです」

「どういう事だ?」

「尋問を行おうとすると口が強制的に閉じられ、拷問を行おうとすると道具が全て壊れる。その摩訶不思議な現象が起こってしまったのです」

侍従が話している内容が現実で起きているとは思えなかった。

「そして情報を話すのであれば、ホロ様を連れてこいと言われたのです」

「なんでホロだけなの」

腕を引っ張られイディによって歩くのを静止させられた。

「私たちもわかりかねます。聞こうとすれば口を噤まされ話す事すら叶わないのです。ですが、ホロ様お一人だけで相手と会わせる事は決してありません。必ず騎士と魔法使いが一緒におります」

「僕も一緒はダメなの?」

「申し訳ございませんが、安全の為にホロ様と騎士と魔法使いのみになります」

侍従は全く折れず最終的にイディに相手と会わさせる事を了承させた。
私の事については頑固なイディを折れさせるなんてこの侍従矢張りかなりのやり手だな。

「それでは案内を再開致します。後少しで着きますが、騒がしくなる可能性がございますのでご注意下さい」

最初侍従が言っている事がわからなかったが、少し進めば侍従が騒がしいと言っていた理由が分かった。
まだその場所に辿り着いていないのにあの女の叫び声が聞こえてくる。

魅了魔法の使い手があの女だったなんて…。
ツェーリア伯爵家はお祖父様を除いて女難の相でもあるというのか?

「あたしはヒロインなのよ!こんな所にいていいわけがないじゃない!早くここから出してよ!」

今まで聞いてきた声の中でもダントツでうるさい。
これ捕まってからずっと叫び続けているのだろうか。

「こちらが魅了魔法の使い手の監禁場所でございます」

部屋の前にくれば一段とあの女の声がうるさく聞こえる。

「この中に待機室がございまして、その待機室の中に騎士と魔法使いがおります。そのお二人と一緒に中に入って頂き魅了魔法の使い手から話を聞き出してください」

侍従が扉を開けると話通り騎士と魔法使いが待っていた。
騎士はただの騎士ではなく王宮所属の実力が高い騎士。

魔法使いはこれまた王宮所属の実力が高い魔法使いだった。

「お待ちしておりました。先に私が入りますのでその後にツェーリア伯爵子息様、そして魔法使いが入ります」

「ああ、分かった」

騎士が先に扉を開けると何故かあの女の叫び声が止んだ。

「あたしを助けにきて下さったのですね!?」

「静かにしろ。お前の要望通りに高貴な方を連れきてやった」

騎士の後ろから姿を現すとあの女は驚いた表情をしていた。
私を呼んだのに何故驚いた表情をしているんだ。

あの女の前に用意されている椅子に腰を下ろし足を組んだ。

「それではお前が要望している話とやらを聞いてやろうではないか」

私が話せばあの女の表情は真っ青になった。
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