子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
上 下
75 / 120
2

16

しおりを挟む
あの辱めがあってからイディとアデライトが普段以上にベッタリとくっつく事が多くなった。
授業が終われば直ぐに私の元にきて、あの女が近づかない様に徹底してくれる。

偶に殿下が私の元にやってくるが、それもアデライトが全て拒んでくれるお陰で私の周りは割と平和だ。
ただ私は普段以上に会話をする事がなくなってしまった。

二人に何を話したらいいか分からなくなってしまった。
話しづらさも相まって最近は勉強しかしなくなってしまった。

「ホロこれ美味しいよ?」

イディに差し出されたのは真っ赤な果物を差し出された。
何も言わずに差し出された果物を口に含んだ。

甘い果汁が口いっぱいに広がって、イディの言う通りとても美味しい。

「美味しかった?」

返事として頷けばイディは嬉しそうに笑う。

「これも美味しいよ」

アデライトに差し出されたのは何やら混ざっているパンだった。
一口サイズにちぎってくれた物を私の口元にまで持ってきてくれた物を躊躇なく口に含んだ。

パンの中に混ざっていたのはくるみや、ドライフルーツ等で柔らかさの中にいろんな食感があって楽しい。
味もほのか名甘さがちょうどいい感じだ。

「美味しそうでよかった。ほらこれも食べたらいい」

私の食事を良く見てくれているようで、食べさせてくれるのはずっと私が食べられる物だけだった。
イディは問題ないがアデライトの前にあるご飯は全く減っていない。

「ご飯…」

「私は直ぐに食事を取る事ができるからホロは気にしなくていいんだよ」

差し出されたご飯を食べるそれだけを続けるように言われてしまった。
昼休憩も半分程時間が過ぎたから、ご飯を差し出されても拒否をしてお腹がいっぱいになった事を伝えた。

漸くアデライトが食事をとってくれた。
イディは昨日血を飲んだばかりだから、まだ食事を必要としている感じがない。

アデライトが食事を終わるまではぼんやりする事にした。
イディに抱っこされながらイディの手を使って遊んでいると、遠くからあの女の劈くような叫び声が聞こえてきた。

今度は何をしたんだ。

「向こうが騒がしいね」

騒がしい方を見ればあの女が床に座り込んで泣いていた。
泣いているあの女のすぐ近くに令嬢が狼狽えながら立っている。

気にしても意味がないからイディの手で遊んでいる。
段々劈く声が大きくなって最早うるさいぐらいだ。

聞こえてくる内容は令嬢があの女を転ばせたという内容だった。
いつの間にできたかは知らぬがあの女の周りにいる男達が令嬢を酷く責め立てている。

そもそも令嬢だからこそそんな下らない事を行わないし、行ってしまうと家格が傷ついてしまう。
貴族だからこそわかる事なのに、令嬢を責め立てている男達はきっと貴族のしがらみがない平民なのだろう。

「全部食べ終わったよ。少し騒がしいようだけど遠回りして教室に行こうか」

イディに抱き抱えられた状態で食堂から出た。
未だに泣き叫ぶだけで現状を解決しようとしないあの女。

一瞬視線があった時あの女が嫌な笑みを浮かべた。

「あいつが悪いのね!?」

劈くような声と共に一気に視線が私たちに向けられた。
突拍子もない事を考えているなあの女は。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...