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「ここで机上の空論を話しても無駄ではあるだろうから、どういう対策をすべきかを考えるのが一番だろうね」

「そうだな…。多分だがあの女は高位貴族を狙っている節があるようだから、その部分で何かしらの対策が必要だと感じる」

殿下のあの反応であれば確実に高位貴族の令息だけを狙って行動をしている。
場合によっては子供だけは解決しない問題が出てくる可能性がある。

そうなると母上や父上、最悪お祖父様やお祖母様のお力を借りなければならなくなるかもしれない。
そんな大事にはしたくないが、この大事にするのは私ではなくあの女なのだから防ぐための手段は大量に用意していた方がいいだろう。

「高位貴族ばかりかぁ…。その中にあいつも含まれているの?」

「間違いなく含まれている。今朝も私とアデライトにぶつかってきたから。謝罪するどころか私に非難を浴びせてきた様な奴だ。何を考えているか全く分からん」

「へぇ、僕のホロにそんな事をしたんだ。しっかりと挨拶はしないといけないね?」

「イディ、あいつに近づかない方が一番だ。あれに近づいた所で得は一切ない」

「損得じゃなくて僕のホロに無体を働いたんだからしっかりと釘を刺しておかないといけないでしょ?」

「だからこそだ。ああいう輩は何を言っても意味をなさないんだ」

昔イディを婚約者とでっちあげたあの公爵令嬢と同じ匂いがする。
ああいうての物は言葉を言葉として理解しないし、自分の都合が良い考えにしか思考できないようになっている。

そんな存在に時間を割く方が無駄というものだ。

「ホロがそういうならば…。でも、ホロにこれからも嫌がらせをするようであれば、それ相応の後悔はしてもらうつもりだからそれは絶対に止めないでよね」

「ああ、好きにしてくれ。私が止めても止まらないだろう?」

「勿論。止めたらその時は…」

顎を掴まれイディの方に無理矢理顔を向けられる。

「僕が居ないと何もできない様にするから」

ゾッとする程深い闇を抱えた瞳。
頷かないと酷い目に遭う事を分からせられてしまった。

だが顎を掴まれていて頷く事ができない。

「あ、ああ…わかったから手を離してくれないか…」

「本当に?ホロの言葉を全部信じてあげたいのに、どうしてか最近はホロの言葉を全部疑ってしまう」

「どうすれば信じてもらえるんだ?」

「ホロの血を飲ませて」

「今日はもうやっただろう」

「違う」

もう片方の手で首元を触れられた。

ここから飲ませて」

「制御できないだろう」

「でも、僕だけ何もホロからの特別がない…。特別がないと安心できない。だから、だから直接吸わせてよ…」

私からの特別が欲しい?
私は誰にも私の大切な何かを渡した覚えはないのだが。

むしろその特別を渡しているのはイディだけだと思う。

「他に特別なんて…」

「アデライトにはホロの婚約者の立場を渡したじゃないか!本当は僕の物だったのにそれをアデライトに渡しちゃったでしょ!」

「そんな不可抗力の事を言われても当時の私にも今の私でもどうにかできる物ではないだろう!」

「分かってるよ!頭では分かってる!でも、僕の僕だけのホロだったのに…」

無表情で涙を流すイディ。

「どうして僕から離れていっちゃうの…」

泣いて縋るイディに私は何もしてあげられない。
そんな無力感が私の心を占めた。
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